文部科学省が30日出した、「小学校での総合的な学習の時間を削減する」という方針に関して、多くの教師は、「やっぱり」という感想を持たれているのではないか。
「ゆとり教育」時代に鳴り物入りで導入された「総合的な学習の時間」、導入から今回の削減に至るまでの状況を、あらためてざっと見てみよう。
●2000年からの移行期間を経て、2002年に完全実施。
●2003年の意識調査では、子どもにも保護者にもかなり好意的に受け入れられている。
文科省が実施した学校教育に関するの意識調査では、「総合」が「好き」「どちらかといえば好き」と答えた生徒は、小学5年生では90%近く、中学2年生では70%後半。また、日本PTA全国協議会の調査では、「総合」を「非常によい」「まあよい」と思っている保護者が45%強(何れも「総合的な学習の時間」に関する調査データ)。
●2004年には、「総合」を教える教師の困難点や問題点がすでに浮上。
中教審の総合的な学習の時間専門部会では、「教員の打ち合わせ時間の確保」や「学校全体の系統性」「校内の指導体制」などを課題としてあげている(総合的な学習の時間専門部会におけるこれまでの主な意見)。
●2005年の調査では、「総合」に対する評価に対して、大人と子どもで格差が生まれている。
文科省の義務教育に関する意識調査の中で、「総合」を「なくした方がよい」と考える教師が、中学校では約57%、小学校では約38%。「教材作成など負担が大きくて大変」というのがその大きな理由である。なお、同調査内では、保護者の約20%、小学生の約60%、中学生の約46%が、「総合」を「好き」と答えている。
現行学習指導要領で導入された「総合」のこれまでの動きをみると、「ゆとり教育」の実施、週5日制による教科書の指導内容削減、2003年に行われたPISAの学習到達度調査、「ゆとり」の反動による学力低下問題等々、近年の教育界の問題に影響されていることが感じられる。
また、「総合」を週1コマ程度減らす一方で、今回新たに導入されるのは、小学校高学年での「英語(外国語)活動」だ。これに関しても、おおよそ「予想通り」との声が聞こえそうである。これまで、「総合」の中で各校が英語活動を行っていたものを、全国一律の実施とすることで、英語能力のバラツキを減らす意図だ。
今回、30年ぶりに小学校の授業時間を増加させ、学力向上を打ち出してはいるが、「総合全廃」の声も上がる中、結局1コマの削減にとどまった。「総合」のよさを残したいという考えももちろんあるだろう。ただ、「『ゆとり教育』の理念を残し、『達成するための手法として授業時間を増やした』」という文科省の説明を如実に表している気もする。
どうせなら全廃してしまえばいいのに。何事も中途半端は良くないです。