きょういくじん会議
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一人の子どもに一つのラップトップ―変わる100ドルパソコン
kyoikujin
2008/5/26 掲載

 最近5万〜6万円の安価なノートパソコンが相次いで登場しているとはいえ、日本では20万円程度が主流であるパソコン。開発途上国の子どもたちにとっては自分専用のパソコンはもっと夢のようなものかもしれません。しかし、米国では教育の機会均等のため、もっと安価なパソコンが開発されています。「一人の子どもに一つのノートパソコンを…。」そんな目標で立ち上げられたプロジェクトが、OLPCです。

OLPCとは

 OLPCとは「One Laptop Per Child」の略で、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの創立者であるニコラス・ネグロポンテを中心に活動しているNPOのプロジェクトです。世界中の、特に開発途上国の子どもたちに100ドルという低価格のパソコンと教育を普及することを目的としています。開発途上国の子どもたちにノートパソコンが必要な理由については、OLPC Wikiに「ノートパソコンは、世界に開かれた窓であり、考えるための道具です。これらは、自由な交流と探索を通じて、子供たちが学ぶことを学ぶためのすばらしい方法です。」と述べられています。

OLPCの「100ドルパソコン」XO

 OLPCが開発したパソコンのラップトップを「XO」といいます。 XOは、安いだけでなく、電気や通信インフラなどが整備されていない地域でも使えるように、外付けの人力発電機など、多くの工夫がなされています。さらに、ワープロソフトや描画ソフト、ウェブブラウザなどがはじめからインストールされています。
 しかし、「100ドルパソコン」として知られるXOですが、実は現在はその目標額を達成できておらず、原価は188ドルです。OLPCプロジェクトがパソコンを届けうる子どもたちの数を、ネグロポンテは10億以上と見積もっていますが、現在の受注台数は約60万台なので、なかなか普及がうまくいっているとはいえないでしょう。

変わるXO−Windowsを搭載、75ドルパソコンもできるか?

 今までXOはLinuxというオープン・ソース・オペレーティングシステムによって動いていましたが、Windowsを求める声もあったようです。16日のCNETのニュースによると、今月米国時間の15日にWindows版の提供が発表され、8〜9月には提供が開始されるとのことで、これによって受注台数が増えるであろうという見方もあります。
 また、21日のIT Proのニュースによると、米国時間の20日に、OPLCが教育向け低価格パソコンの第2世代モデルとなる「XO-2」の開発を進めていることを発表したとのこと。この新モデル、コストを削減してなんと目標75ドルという設定です。しかも2枚のタッチパネルを備えるなど、充実した機能が構想されています。

XOは世界の子どもたちに届くか

 本当にXOの価格が100ドル以下にすることが成功すれば、子どもたちがパソコンを手にして学ぶ機会は増えるでしょう。一方で、本当にパソコンというツールがそこまで教育に必要とされているのか、その前に携帯電話のほうが必要とされているのではないかという声もあります。子どもたちにパソコンが普及すればいずれ日本のようなインターネットの有害サイトの問題が大きくなることなども考えられ、問題は少なくなさそうです。
 XO購入のしくみは、個人単位で購入するのではなく、政府がOLPCから買い上げ、子どもに無償で支給することになっています。XOが普及するかどうかには、各国が教育や経済のために今何を求めているかにも大きく依存するといえそうですが、世界中の子どもたちがパソコンを手にする日は、いつか訪れるのでしょうか。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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