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手工芸品を見つめなおそう―「アーツ&クラフツ展」開催
kyoikujin
2009/1/19 掲載
柳宗悦の世界 (別冊太陽)

 柳宗悦という人物をご存知でしょうか?  「バタフライ・スツール」などで有名なプロダクト・デザイナーの柳宗理の父で、大正時代の日本において民芸運動を繰り広げた人物です。1月24日より東京都美術館で開催されるアーツ&クラフツ展では、彼とその周りに集まった国内の職人や芸術家、そしてアーツ&クラフツ運動発祥地イギリスをはじめとした海外の手工芸品を楽しむことができます。

アーツ&クラフツ運動とは

 アーツ&クラフツ運動は、19世紀にイギリスの詩人・思想家のウイリアム・モリスが主導した芸術運動です。18世紀末の産業革命以降、大量に工業生産される粗悪な食器や家具などの日用品を批判し、かつての職人的な手工芸へ復古すべきだと提唱したのがはじまりです。このアーツ&クラフツ運動が単なる回帰運動にとどまらなかったのは、日用品を現代の意味で「デザイン」したという点です。また、独特の装飾曲線の美しさが特徴のアール・ヌーヴォーや、手工業の職人(マイスター)制度を模範としたバウハウスなどの芸術学校の創立などにも影響を及ぼしました。

柳宗悦と「民芸」

 日本で同じように職人による手工芸品に光を当てた人物がいました。それが冒頭で述べた柳宗悦です。柳は元来民衆が日常的に使ってきた無名の職人による手工芸品を「民芸」として芸術的価値を見出した最初の人物でした。それは多くの人が気付く事のなかった手工芸品が本来もつ「美」の発見でした。そんな彼のもとには、共鳴する河井寛次郎、黒田辰秋など若者が集まり、民芸を再評価する運動が繰り広げられました。

見どころは再現された三国荘

 今回のアーツ&クラフツ展は、ロンドンにあるヴィクトリア&アルバート美術館との共同企画ということで、同館の収集した工芸品が約280点展示されるとのこと。また見所は大礼記念国産振興東京博覧会にて出品されたパビリオン、三国荘の再現展示です。この三国荘の建物のなかには、柳宗悦らが収集した民芸品がおかれ、民芸品との生活を提案する場ともなりました。

指導要領での美術鑑賞

 美術の新指導要領のなかでも2・3年生の鑑賞の項目では、

日本の美術や伝統と文化に対する理解と愛情を深めるとともに、諸外国の美術や文化との相違と共通性に気付き、それぞれのよさや美しさなどを味わい、美術を通した国際理解を深め、美術文化の継承と創造への関心を高めること

と、美術の鑑賞を通じた日本と外国の国々への理解が求められています。
 職人の手によってつくられた工芸品や、民芸品には国々の文化や風俗が詰まっています。だからこそ、国際理解を促すために活用するのにうってつけの教材となり得そうです。これを機会に手工芸、民芸品に触れてみませんか?

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2009/1/22 12:36:26
    原研哉氏の本を読むとデザイナーって感性よりも論理を非常に大切にしているのが窺えます。芸術家というよりは哲学者という印象を受けました。
    • 2
    • 名無しさん
    • 2009/2/3 23:20:26
    おっしゃるように、確かにデザイナーの哲学的な部分って感じます。すぐに浮かんだのが、服飾デザイナーの方だったのですが、本当に哲学者じゃないかと思ってしまいます。

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