きょういくじん会議
まじめなニュースからやわらかネタまで、教育のことならなんでも取り上げる読者参加型サイト
現役復帰のアームストロング―その強さを支える育成方法
kyoikujin
2009/6/13 掲載
ただマイヨ・ジョーヌのためでなく

 フランスを中心としたヨーロッパ諸国を舞台として来月開催される自転車競技の最高峰「ツール・ド・フランス」に、2005年に現役を退いた、ランス・アームストロング(米国)が選手として復帰することが話題になっている。前人未到の同大会7連覇を達成し、今では世界で最も有名な自転車競技選手であるアームストロングだが、実は、彼は生粋の自転車競技選手ではなかった。

トライアスロン選手から自転車競技選手への転向

 自転車競技がサッカーなどと並び人気スポーツの1つであるヨーロッパでは、トップ選手の多くが10代前半から自転車競技選手としての英才的な専門教育を受けているのに対し、アームストロングは、20歳まではトライアスロンの選手として、水泳、マラソン、自転車の3競技をこなす、マルチアスリートだった。
 彼は、「ツール・ド・フランス」において、特にアルプス山脈でアップダウンを繰り返す山岳ステージで圧倒的な強さを誇るが、この強さを支える強靭な心肺機能や脚力は、トライアスロンを通じて鍛えられたものであるとの指摘もある。

教育的にも評価の高い選手育成方法

 日本では、競技レベルが上がってくる高校や大学などになると、特に野球やサッカーのような積み上げられてきたスキルがものを言う球技等では、複数の競技を掛け持ちしたり、他競技に転向したりするという例はあまり聞かれない。
 しかし、プロスポーツだけでなく、アマチュアスポーツも盛んで、シーズン制が整っている米国では、複数のスポーツを経験して、特定の競技のトップ選手になっている人物が実は意外に多い。
 有名なところでは、元NBAのスター選手だったマイケル・ジョーダンは、高校の途中まで野球選手だった。彼は後にNBAを一時的に引退した際にもMLBに挑戦して話題を呼んだ。
 また、MLBとNFLの両方でオールスターゲームに出場した経験をもつボー・ジャクソンのように、プロ選手になった後にも競技を掛け持ちし続けた例もある。彼は、大学時代には陸上の短距離走の有力選手でもあり、オリンピックの代表候補選手にもなった。
 このようなスポーツ選手の育成方法は、競技に対する柔軟性の向上やけがの慢性化の回避などのスポーツ面の効果だけでなく、一つの競技で挫折しても他の競技での再起が可能なことなど、教育的な側面からも高く評価されている。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの受付は終了しました。