
- マスターしたい指導技術集
- 教師力・仕事術
「経験の少ない教師の元で、なぜか、しっかりとした子どもが育っている。」
現場では、時にこのような状態が見られます。これはいったいなぜなのでしょうか。
教師は、学級のリーダーです。ですから、リーダーシップを発揮して子どもたちを導かなくてはなりません。強力なリーダーの元では、子どもたちは生活しやすく感じることでしょう。学級の問題も、ほとんどなくなるはずです。多くの場合、これは立派な学級経営です。
ですが、ここから、さらに学級を進化させ、子どもを伸ばそうと思えば、別の指導が必要になってきます。
それが、コーチングの手法です。
子どもたちの思いや願いを引き出し、動きたいと思えるように導き、その動きを支援していく形に移行していかなくてはならないのです。学級経営を時系列に見ていくと、この考え方を理解しやすくなります。
最初は集団としてまとまって生活できるシステムをつくらなくてはなりません。そこで、教師がリーダーシップを発揮して、学級のルールやシステムをつくっていくことになります。子ども同士のトラブルが起きれば、教師が前面に出て解決します。また、楽しいイベントなどを、提案することもあるでしょう。
しかし、だんだんと子どもの内面から、「このような学級をつくりたい」、「問題が起きたら自分たちで解決しよう」、「みんなのためになることを、やってみよう」といった思いをわき起こし、それを具現化する方向にもっていく指導に移行していきます。
1学期は、教師が全部あれこれと先回りして子どもが困らないようなシステムをつくることに力を注いでいました。
ですが、だんだんと、子ども主体の動きを引き出し、子どもに企画や解決をさせるよう促していくようにするのです。
例えば、何らかのイベントを子どもがやりたいと言い出したとします。
子どもに任せるのは不安ですが、2学期からは、あえて、任せるようにします。
時には、「どう考えても、この係のイベントは失敗するだろうな」と思えることもあるでしょう。子どもは「教師が足りないところを指摘してくれるだろう」ぐらいの期待をしているものです。ちょっと不備があるだろうな、と教師が思いながらも、子どもに任せてしまいます。あえて、やらせてみるのです。
その結果、司会は誰がやるのかとか、物は誰が用意するのか、得点の判断は誰がするのか、景品はどうするのか…、といった具合に、いろいろ不備が見つかります。たとえ失敗しても、「とりあえず自分たちでおもしろいイベントをやろうとしたことはすばらしいと先生は思いました。」と、ほめて終わります。
子どもにとってみれば、「失敗したけど、やる気をほめられた」という状況になります。すると、「じゃあ次は失敗しないようにもう少し真剣にやろうか」という気持ちが生まれます。やがて、教師があれこれ言う必要はなくなり、子どもだけで楽しいイベントをつくれるようになっていきます。
教育の難しいところは、最初は教師のリーダーシップが必要な場面が多々あるのですが、それだけだと子どもが受け身になってしまう点です。
受け身にならないよう、だんだんと、子どもに任せるところは任せ、考えさせるところは考えさせなくてはならないのです。子どもの思いや願いに耳を傾け、子どもの主体的な動きが表れてくるのを辛抱強く援助するようにならないといけないのです。
つまり、「待ち」の姿勢が教師に求められるようになるのです。
時に、リーダーシップを発揮できない「若い教師」の元で、子ども自身が主体となって動ける場合があります。これは、子どもたちが、「教師は頼りにならないから,自分たちがしっかりしなくてはならない」と判断し、自分から進んで動くようになったからです。
教師からしてみれば、思いがけない結果が生まれたことになります。ですが、本来は、これを意図的にやれなくてはならないのです。
特に、荒れた学級を受けもった教師は、荒れを何とか押さえなくてはいけませんから、特効薬的手法で、とりあえず荒れを押さえようとします。
これはこれで正しい処方なのですが、荒れが一時的に収まったら、今度は、「子どもの内から頑張りたいと思えるよう導く指導」に変わっていかないといけないのです。