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子どもの中には、自分で考えて、進んで行動できる子がいます。
一方で、なかなか動けず、指示を待っている子がいます。
中には、「先生が決めて」、「先生どうすればいいの?」と、教師に自分の行動を決めるよう言ってくる子もいます。
どうして、このような違いが出るのでしょうか。
一言で言えば、子どもの自律的な行動を促していたかどうかの違いが出てきているのです。
子どもの意思を尊重する教育は、子どもの自律的な行動を促す教育です。
まずは、教師が、子どもの思いや願いを確認します
その上で、子どもに行動を決めるよう促します。
すると、子どもは、自分の意思で行動する姿勢が育ってきます。
ただ、子どもの自律的な行動を促すといっても、教室には様々な子がいます。 自分から進んで動く子と、自分からは進んで動かない子です。
進んで動く子には、その子の意思を尊重し、自律を促すことがいとも簡単にできるでしょう。
しかし、自分から進んで動かない子は、教師の指示を待っています。「何がやりたいのかな?」、「その場合、どうしたらよいかな?」と考えさせても、なかなか答えを出せません。教師は仕方なく、この子には指示を出します。
つまり、外から、「◯◯をしなさい」という指示だけを与えるようになっていくのです。
一年後には、どうなっているかというと、指示を与えられていた子は、ますます誰かに依存する姿勢が身に付いてしまっています。
自律的な行動を支援した子は、ますます自律的に望ましい行動ができるようになります。
結果として、自律的な行動ができる子と、そうではない子の差がますます広がってしまうというわけです。
では、どうすればよかったのでしょうか。
進んで動けない子には、一学期の段階では、「自分で決めることが大切だよ。例えば、こういう形になっていくといいね。」、「こういうときは、このようにやってみるといいよ。」と、「望ましい行動の例」を示すことが有効なのです。
しかし、二学期からは、だんだんと、「自分はどうしたいと思う?」、「この場合は、どうしようか?」と、一学期に示した例を参考に、自分で考えるよう促すことが必要なのです。
時間はかかりますが、やはり、少しずつでも、自分で考えさせ、やらせてみせることが必要なのです。
一方で、規律が身に付いていない子にも、自律的な行動を促そうとして、失敗するケースもあります。
これは、若い先生の悩みにおいて、トップクラスにくるケースです。
ルールやマナーが守れない子に、「自分で自由に決めてごらん」と言っても、望ましい行動をとることができません。それどころか、ルールやマナーから逸脱した行動を、自分の「意思」で、行ってしまうことでしょう。これが一番、ダメな状態です。
この場合は、まずはルールやマナーを教えて、守らせることから始めなくてはなりません。自律的な行動に導いていくのは、その後の話です。
つまり、他者から望ましい行動を示される「他律」の段階から、だんだんと、自分でできるようになる「半自律」→「自律」の状態に育てていくようにするのです。
最終的には、全員に対して、自律的な行動を促す指導に向かわなくてはなりません。
教師があれこれ言わなくても、ご褒美を用意しなくても、子どもが自分の意思で望ましい行動をとることができるようにしなくてはならないのです。