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活動を始めても、一生懸命やってくれない。
何となく子どものやる気が感じられない。
教師の「熱意」と、子どもの「やる気」が異なっていることはよくあることです。せっかく価値ある活動を用意したのに、子どもはなかなかやる気になってくれないわけです。
こういうとき、一体どうすればよいのでしょうか。
大切なのは、「納得」です。
子どもが自分で、この活動は価値があることだと納得できていたら、やる気を出してくれるものなのです。
子どもを納得させるには、教師の「語り」が大切になります。
大切な活動をしているのなら、この活動がいかに大切なのかを、最初に説明しておくとよいのです。
失敗例として、ある年、こんなことがありました。
6年生が地域や学校に貢献する、ボランティア学習をしているときのことです。
お世話になった学校に貢献する目的で、運動場の壁にペイントをすることになりました。運動場の壁が、真っ黒に汚れていたので、ペンキできれいな色をつけようというのです。
100名を超える6年生は、一生懸命、汚くなっている壁をきれいに磨きました。下地処理が終わってから、慎重に、丁寧に、ペンキを塗っていきました。
ところが、全部終わるという頃になって、騒ぎが起きました。
一部の集団がふざけて、落書きをしてしまったことが分かったのです。
それを見つけた子どもも、教師も、ガックリきてしまいました。
せっかく、お世話になった学校への恩返しの意味で、貢献活動を行っているのに、落書きが残ってしまったのです。
落書きをした子は、ばつの悪そうな顔をしています。
このとき、学年全員に次のような話をしました。
「この活動は、お世話になった学校に恩返しの意味で行っているはずです。それが、ふざけて、落書きを残してしまうようでいいのでしょうか。しかも、みんなは、高学年に上がってから、前向きに頑張るようになってきました。お家の人も、みんなは変わってきた。頑張るようになってきた、とほめてくれていたところだったのです。先生は残念です。みんなが、実は、ふざけた気持ちで活動をしていたということに。」
運動場に集まった全員が、声一つ立てず、シーンと静まり返りました。
実は、この学年は入学してから荒れが続いていました。ですが、高学年になってから、前向きに頑張るようになっていたのです。
活動が終わり、それぞれの学級で、「活動の意味をもう一度考え直してみよう」という話が、各担任からなされました。
この出来事があってから、もう一度、子どもたちは活動の意味を考えました。
それぞれの子どもが、活動の意味を自分なりに考え、その目的を共有しました。そして、その後の貢献活動では、ふざける子はいなくなり、一生懸命心を込めてやるようになったというわけです。
教師の思いや願いが子どもと違っている場合は、どうしてこの活動が大切なのか、どういう意味があってこの活動をしているかを、語らなくてはなりません。
そして、その語りは、できれば「活動の前」にしなくてはならないのです。
それも、教師の熱意を移すつもりで、心を込めて語るのです。
前もって、活動の意味を語り、教師の熱を移していれば、子どもは頑張るものなのです。
反対に、子ども自身が活動に納得できていないと、せっかくの活動が台無しになってしまうこともあるのです。