- 1人1台端末の授業づくり
- 授業全般
「ローマは一日にして成らず」
という言葉があります。みなさんも聞いたことがあることでしょう。
この言葉は、「大事業は長年の努力なしに成し遂げることはできないというたとえ」*のことです。
GIGAスクール構想により、学級にタブレット端末がやってきて数ヶ月が経ちます。
みなさんいかがでしょうか。
1人1台タブレット端末実践は長年の努力が必要だ……
と思われている方も多いのではないでしょうか。
「1人1台タブレット端末実践は一日にして成らず」です。
そして、1人1台タブレット端末実践を行うということは、「大事業」です。その感覚は間違っていません。
その一方で、
タブレット端末実践に手軽に取り組むことができる!
と思われている方もいることでしょう。
なぜ、このような矛盾した関係が起こるのか。そんな話を今回からしていきたいと考えています。
1 長年の努力は必要
1人1台タブレット端末実践は、長年の努力なしに成し遂げることはできません。
私は1人1台タブレット端末実践をスムーズに行えるようになるまでに、「3年」かかりました。
「努力……」「3年も……」と思われたかもしれません。何事にも努力は必要です。
もちろん努力はしんどいことです。努力なしで行うことができるようになればいいのですが、そんな都合の良い話はありません。第一歩を踏み出さなければ、何も始まりません。
「私は、こういったタブレット端末が苦手なのですが……」といったお悩みをよく聞きます。少し厳しい言い方になりますが、
「悩む暇があったら、実際に操作してみる。悩む時間が勿体ない」
と思っています。「私は、こういったタブレット端末が苦手なのですが……」と言われる方に限って、全然操作していないことが多いように思います。経験を積めば、ある程度は操作することができるようになります。
ちなみに、私は操作に「3年」かかったということではありません。操作は最初こそ苦労するものの、「慣れ」てきます。
現在、苦手と言われている方もWordやExcelは使っていることでしょう。WordやExcelの機能をフル活用していなかったとしても、職員会議の資料作成や授業のプリントづくりなどを行うことができていると思います。でも、Wordを使い始めた頃は苦労しませんでしたか。タブレット端末の場合もそれと一緒です。
今、本稿を書いているとき、「NOTION」を使い始めています。機能も操作もチンプンカンプンです。でも、「NOTION」に【大きな可能性】を感じているため、操作にもたつきながらも使用しています。きっと慣れてくるのだと思います。大きな可能性を感じているから、続けることができるのだと思います。1人1台タブレット端末実践にも【大きな可能性】があります。だから、努力をしてください。
また、私自身も「長年の努力」を経験するために、YouTubeを始めることにしました。もしよろしければ、こちらよりチャンネル登録をしてください。
2 手軽に取り組める実践とは(1)
「タブレット端末実践に手軽に取り組むことができる!」と書きました。手軽に取り組む実践とは?ということについて、説明していきます。
1年生の「20までの実践」です。子どもたちに、
「身の周りのものから16を探してこよう」
という課題を出しました。身の回りから「16」を探し、写真に撮り、提出をするという課題です。下の写真はある子どもが提出した写真です。
写真を提出して終わりではなく、
「この写真、16ってみんなわかる?」
「本当に16ある?」
「16ってすぐに数えることができないの?」
などと聞き返し、「10といくつ」といったことを引き出していきました。
普段、10セットごとにまとめて整理をしていることを子どもたちも知っています。そういった既有体験をもとに考えることができていました。「具体と抽象」を行き来するといったことも本時ではねらいとしていました。
本実践を応用すると、2年生の九九の学習で、身の回りのものから九九表を埋めるといった実践も行うことができます。
次のような表を渡しておきます。
身の回りの写真を撮り、その表に当てはめていきます。
このように、写真を入れていき、すべての九九の枠を埋めていこうという流れです。
こういった実践は個人ではなく、グループやクラス全体で行うと一体感も生まれたり、自然と話し合ったり、助け合ったりととても盛り上がります。
こういった実践は「ネタ」といわれるものです。これは、「これまでの授業」でタブレット端末をあまり使っていなかったとしても、その時間で取り組むことができる実践です。
こういった実践が「手軽な」実践と考えています。こういった手軽な実践はタブレット端末を導入する時期、タブレット端末の操作に先生自身が慣れるための時期としては良い実践かもしれません。こういった実践を否定しているわけではありません。ただ、最終的な1人1台タブレット端末実践は、もっと先ということです。
3 手軽に取り組める実践とは(2)
2年生の算数には「三角形と四角形」の単元があります。三角形や四角形、不完全な三角形や四角形を用意しておき、それらの図形をタブレット端末上で分類をするという実践を今年度はよくみかけました。タブレット端末上で行うために三角形や四角形、不完全な三角形や四角形のデータを数種類ずつ用意しておきます。それらのデータを子どもたちに送信し、分類する時間を設けるようにします。これだけで、1人1台タブレット端末実践にはなります。
三角形や四角形、不完全な三角形や四角形を分類して終わりだと、手軽な実践と言わざるを得ません。
・この活動のねらいは何なのか
・この活動が単元の中でどのように位置づいているのか
などのことが考えられていると、「手軽」な実践とは言いません。
上記の活動では
・三角形や四角形が直線に囲まれているということに着目する
・三角形や四角形を分析する
などのことがねらいになります。
こういったねらいを教師が持っておかないと、
「三角形や四角形、不完全な三角形や四角形を分類して、終わり」といったように「ねらい」のない活動に終わってしまいます。私はこういった状況を「シンキングツール映え」問題と言っています。
タブレット端末実践を行い始めた初期はこのような授業を行ってしまい、授業者自身がこの実践のマイナスなことに気づくといったことも、ある意味必要であるとも考えています。タブレット端末は「目的ではなく手段だ!」と主張しておきながら、完全に「目的」になっていた時期もありました。
今、タブレット端末実践の書籍が続々出てきています。もう飽和状態と言ってもいいことでしょう。実践事例は揃いつつあります。こういった書籍をパラパラ読んで、
「こういったタブレット端末の使い方があるのか〜、よし真似をしよう」
「明日の授業で使えるタブレット端末はないかな〜」
というネタ探しをするのではなく、
・タブレット端末の使い方のねらいは何か
・単元の中でどのように位置づいているか
などのことをしっかりと確認した上で、実践の追試をしてほしいと願っています。追試をすること、ネタ探しをすることを否定しているわけではありません。
4 キーワードは「長期」
では、手軽な実践ではない、1人1台タブレット端末実践を行うためにはどうしたらいいのか。そのキーワードが「長期」「長年」です。だから、「ローマは一日にして成らず」という言葉を用いたのです。
長年というと、何十年といったイメージがありますが、学校で考えると、何十年という単位ではありません。
学校で考えると、6年間、1年間、半年間、数ヶ月間といったところから、
1ヶ月間、1週間といったところまであたります。つまり、1時間単位の授業ではないということです。
1時間の授業だけでなく、
・1つの単元で
・単元間で
・教科と教科で
といったことも長年にあたります。
1人1台タブレット端末実践は1時間単位で考えていくのではなく、「1つの単元」「単元間」「教科と教科」から始まり、数年単位で考えていく必要があります。
そのために、下のような「単元表」を子どもたちに渡しています。
単元の実践などは次回紹介していきます。
*引用元:故事ことわざ辞典http://kotowaza-allguide.com/ro/romewaichinichi.html