- 1人1台端末の授業づくり
- 授業全般
今回は、今から数年前のタブレット端末実践での失敗例を紹介していきます。
学年でクラス分のタブレット端末を使い回していた年でした。
できる限り多くの時間、タブレット端末を使用していました。
私自身が本格的に1人1台端末実践をスタートした時期でした。
この頃はあまりタブレット端末実践はありませんでした。
そのため、自分自身でどのようなことに使っていくのか、どのようなことが有効なのか、同僚の実践をみながら考えていく日々でした。
(余談ですが、GIGA関係の書籍がバンバン発売されていますが、タイムラグが生じています。本の執筆、販売までの過程で最低半年近くかかります。つまり、教育書に載っている実践は半年以上の前のものになります。半年も経つと実践がアップデートされている可能性が高いです。そのため教育書を参考にする一方で、自分たちでタブレット端末実践に挑戦をしていくということも求められます。)
この年は、数え切れないくらいの「失敗」をしました。
この失敗が今の実践につながっていきます。
では、失敗事例について紹介していきます。授業を終えたとき、いや授業途中から、失敗した…と思っていました。どこが失敗なのかと思いながら読み進めてください。
1 どこが失敗でしょうか
4年生複合図形の学習です。
まず、子どもたちに次の図形を提示しました。
辺の数値は意図的に隠しています。
そして、どのように面積を求めるのかを考える時間を設けました。
子どもたちの中には、辺の数値設定がないため、面積を求めることができないと言っている子もいました。実際に面積の数値を求めるのではなく、考え方を表現していこうと伝えました。
子どもたちにはタブレット端末でこの図形に書き込みをしたりできるように、配信をしています。子どもたちは線をかいたり、文字をかいたり、式をかいたりしながら考えています。
全体でどのように面積を求めたのかを話しあっていく前に、書き込みが入っている画像を提出箱に提出しました。これで、全員の考えをみることができます。
友達がどのような考えをしているのかをみる時間を設けました。
そして、全体でどのように考えたのかを、前のモニターに映し出しながら発表をしていきました。発表を聞いている私は、下の写真のように黒板でまとめていきました。このとき、それぞれの考えに名称をつけていくようにしました。
紙を使って私はまとめていきましたが、一目でどのような考え方があるのかということに気づいてもらいたいという思いから、このような板書をしました。
子どもたちからは
1. 1cm2がいくつ分
2. 正方形(上) + 長方形(下)
3. 全体の長方形 − 右上の長方形
4. 左の長方形 + 右の長方形
5. 正方形2つ + 右の長方形
といった5種類の考えが出てきました。
このうち1.はこの大きさを1cm2と仮定すると、14個分になるから…という考え方です。考え方としては理解できるけど、そもそもその大きさが1cm2かどうかわからないということになりました。また、5.もわざわざ左の部分を正方形2つにするのは面倒ではないかという考えになったため、子どもたちと共有した考えは、2.3.4.になりました。
この途中でこの辺は(1)、この辺は(2)…といったように全ての辺に(1)〜(6)*の数字をふり、(1)×(3)といったように立式をしていきました。
(*上の画像では丸付き数字1〜6)
そして、授業の最後には2.3.4.の考え方で共通していることは何かについて考える時間を設けました。
- 4つの情報で面積を求めることができる
- 既習の面積の求め方を使っている
といったことを共有し、授業を終えました。数値を本実践で隠したのは、この「4つの情報で面積を求めることができる」「既習の面積の求め方を使っている」ということに気がつきやすいのではないかという思いがあったから、このように仕掛けたのです。
さて、どこが失敗していたのでしょうか。
2 私が考える失敗
授業を振り返ったとき、私が失敗だと思ったところは、
全体でどのように考えたのかを、前のモニターに映し出しながら発表をしていく場面でした。
授業をしながらも、子どもたちの集中力がどんどん下がっていくのがわかりました。
なぜ、集中力が下がっていったのか、2つの理由を考えました。
1つ目の理由が、
同じことを繰り返している・二度手間になっている
ということです。全体で発表をしていく前に、他の子どもたちがどのような考え方をしているのかをみる時間を設けました。そこで、他の子どもたちの考えを知った子たちは全体で発表する場が同じことの繰り返しになったのです。つまり、二度手間になったのです。子どもたちは同じことの繰り返しを嫌がる傾向があります。
もちろん、タブレット端末上で他の子どもたちがどのような考え方をしているのかをみるだけでは、全ての考えを理解することができたかどうかはわかりません。だからといって、全体で共有する場でも全員が全ての考えを理解したかどうかはわかりません。
全体で話し合う場ではそれぞれの考え方の名称もつけていきました。しかし、このときの子どもたちは考え方に名称をつけることに必要感を感じていませんでした。私が次時の学習で使いたいがために、名称をつけるようにしていたのです。このような
活動の意味がわからないことを嫌がる
ということは、タブレット端末あり・なしにかかわらず子どもの集中力を下げることになります。
2つ目の理由が、
デジタル→アナログという流れになった
ということです。これでは誤解が生まれそうなので、もう少し書いておきます。これまでの連載でも書いてきたように、これからの授業は場面に応じてデジタルとアナログを使い分けていくというハイブリッドの形が求められています。だから、デジタル→アナログがダメというわけではありません。この場面では、デジタルで子どもたちが説明をしたものを、教師が黒板に紙で書いていくということが、子どもたちにとっては上記のように
同じことを繰り返している・二度手間になっている
になっているということです。このようなことにならないのであれば、デジタル→アナログという流れでも大丈夫なのです。
3 現在だとどのような授業をするか
現在だと、友達がどのような考えをしているのかをみる時間を充実させます。
- 何通りの考え方があるのか探してごらん
- 自分には思いつかなかった考え方はあるかな
- 何か引っ掛かる考え方はないかな
- 良いなと思った考え方はないかな
などと言ってから、友達がどのような考えをしているのかをみる時間をとることで、子どもたちは
視点をもって友達の考えをみる
ことができます。また、それだけで終わるのではなく、「どういうところが引っ掛かったのか」「どこが良いのか」とさらに聞くことで、大切なことを子どもたちに気づかせることができる可能性もあります。
そして、デジタル→アナログの流れはやめ、全てタブレット端末上で行い、タブレット端末をみせながら、
◯◯さんの考えを3人に説明しよう
といったどの子も人に説明をするという活動を取り入れたことでしょう。子どもたちには、「人に説明することができると、わかっているということになる」と言っています。
また、全ての辺に(1)〜(6)の数字をふることはもっと授業の前半で行っていたことでしょう。
その上で、最後の「2.3.4.の考え方で共通していることは何かについて考える時間」をたっぷりと設けるようにします。実際の授業では、あまりここに時間をとることができませんでした。この場面こそが…。
この続きは次回に!!