29日の読売新聞の記事によると、理系高校3年生の数学力が30年前より向上していることが東京理科大学数学教育学研究所の調査で判明したとのこと。昨年12月発表のPISA型の調査では、数学的リテラシーが2位から6位に転落し理数系の学力低下が話題となっているが、この東京理科大の調査はその反証となるだろうか。

　具体的な調査方法としては、1980年に国際教育到達度評価学会（IEA）が理数系の高校生を対象に行った国際数学教育調査（TIMS）と同一の問題を、2005年から3年間かけて現在の理系の学生（1万人）に出題し比較したという。結果について同記事は以下のように伝えている。

今回調査のほうが成績が上だった問題が全体の66.3％もあり、同程度が21.7％だった。80年度より成績が下回った問題は11.9％にとどまった。

　当然ながら注意しなくてはならないのは、15歳が調査対象のPISAと違い、この調査が高校3年生を対象に行っていること。この調査だけでは、昨今話題となっているPISAをめぐる理数系学力の低下の反証とするのは難しそうだ。一つの仮説としては、義務教育レベルでの数学力は落ちているが、理系高校生の数学力は落ちていないということが成立するかもしれない。

　先日は、OECD主催による大学生の学力調査についても報道されたばかり。各種の調査結果がきちんと生かされ、日本の未来を担う児童・生徒・学生に本当に求められる学力が身につくカリキュラムが作られることを期待したい。

• OECDが大学の国際比較実施―日本の大学への影響は？（2008/1/15）
  http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/news/?id=20080022
• PISA数学的リテラシー10位―新指導要領で理数は先行実施も？（2007/12/6）
  http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/news/?id=20070441