- 作文指導を変える
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これまでは、体験作文の書き方について、指導の方法を考えてきました。ここまでの指導で、子どもたちは体験作文が書けるようになってきたのではないかと思います。また、もっと書きたいと思うようになってきているとも思います。作文は、当たり前ですが、書かないと上達しません。様々な機会を見つけて、書かせることが大切です。
今回は、書き込み回覧作文についての補足と、体験作文の他に子どもたちが書きたくなるような作文のアイディアを2つご紹介いたしましょう。アイディアは、「このタイトルなら読んでみたいコンテスト」と「キャプション作文」です。この2つに共通しているのは、句会形式により学習集団からのフィードバックがあることです。
書き込み回覧作文で分かったように、作文指導には、学習仲間からのフィードバックがとても重要なのです。
書き込み回覧作文への補足
前回ご紹介した「書き込み回覧作文」では、「共感的な言葉、肯定的な言葉」だけをコメントに残すこと、と説明しました。ところが、これを繰り返していくうちに
「もっと、ここはこうした方がいいという指摘も欲しい」
という声が子どもから出てきます。つまり、いーねいーねだけでは不満ということなのです。実に面白いものです。ただし、だからといって、
「そうか。それじゃあ、批判的なコメントも良しにしよう」
と一斉に解禁にするのは、やめた方がいいでしょう。クラスの子どもは多様です。批判的な意見には耐えられないという子どももいます。私がやったのは、簡単な工夫でした。
「では、批判的な意見が欲しいという人は、原稿用紙の右上に星印をつけてください」
と指示を出したのです。この選択は学習者自身が行います。どちらを選んだら良いということはありません。大事なのは、自分で決めて選ぶことです。学習者が自分の状況に応じて自分に最適なものを選ぶ。ここに強制や無理があると、せっかく書こうという気持ちが育ってきている子どもが、また潰れてしまいます。
繰り返します。
色々な観点から、書こうという気持ちを育て続けることが大切です。それによって、書くためのスキルが生きてきます。これがなければ、どれだけ書くためのスキルを知っていたとしても、書き続けることはできないでしょう。
「このタイトルなら読んでみたいコンテスト」
次の本のタイトルを見て、(あ、この本は読んでみたい)と思うものはありますでしょうか?
『君の膵臓をたべたい』住野よる
『蹴りたい背中』綿矢りさ
『嫌われる勇気』岸見一郎・古賀史健
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』岩崎夏海
『限りなく透明に近いブルー』村上龍
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹
『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午
『号泣する準備はできていた』江國香織
これは「本のタイトルが面白い!思わず読みたくなるタイトル集めました」というテーマで集められた本から抜粋したものです。確かに、読みたくなるタイトルばかりです。
連載の第9回目で、タイトルの付け方についてお話をしました。
タイトルは重要です。体験作文のタイトルは、ちょっと読んだだけではわからないけど、なんだか読んでみたいものをつけることが重要です。「楽しかった運動会」はダメなわけです。
と述べましたが、まさにこれなのです。とはいえ、訓練もせずにこのようなタイトルを考えるのは難しいものです。では、訓練しましょう(^^)。
句会形式を活用する
やり方です。同じテーマで作文を書くことが前提です。例えば、体育大会。
- あなたが、これなら読んでみたいと思う作文のタイトルを書いてみましょう。
- そのタイトルは、名前を消して句会形式で選び合います。
- 上位3人は、名乗ることができます。
たったこれだけです。これによって、自分が付けたタイトルが読者からどのような評価を受けるのかが、瞬時にわかります。下の表は、中3最後の体育大会が終わってから、この「このタイトルなら読んでみたいコンテスト」で、正選句と逆選句の方式で選びあったものの一部です。ここにはありませんが、冗談で書いたと思われる生徒は、集中砲火を浴びてしまいました(^^)。
番号 | タイトル | 正選句 | 逆選句 | 得点 |
---|---|---|---|---|
1 | 走れ!若者達! | 12 | 0 | 12 |
2 | 最後の体育大会 | 1 | 2 | -1 |
3 | 一学期の祭り | 4 | 0 | 4 |
4 | 最後から2番目の青春 | 3 | 0 | 3 |
5 | 宇宙最大の祭典 | 4 | 0 | 4 |
6 | ケセラセラ | 0 | 2 | -2 |
7 | 最後の体育大会… | 0 | 0 | 0 |
8 | 限界です。(涙マーク) | 6 | 0 | 6 |
9 | 夏一番の青春 | 4 | 0 | 4 |
10 | ○○するまで、とれるまで | 3 | 1 | 2 |
もちろん(え? なんでこんなのがいいの?)と思う作品も選ばれます。しかし、それはそれでいいのです。句会は、その句会に参加している集団に合わせて、作品が評価されます。教師が知らないこともあるでしょうし、子どもならではの感性もあるわけですから。
ただ、逆に(なんで、こんないい作品が選ばれないのかなあ)という場合もあります。そういう時は、私は「審査員特別賞」をあげていました。大人の判断では、こういうのがいいんだということを示していました。
「キャプション作文」
簡単に言うと、「写真で一言ボケて」*1です。私はこの遊びがインターネット上で人気になる前から、子どもたちとやっていました。こんなにブレイクするとは思いもしませんでした。(こんなんで商売になるんだ)と思ったものです(^^)。
それはさておき、キャプション作文は面白いです。やり方は簡単です。
- 人物や動物の写真を用意する。
- その人物がつぶやきそうな一言を考える。
- その一言を句会方式*2で、良いものを選び合う。
これだけです。
お題にする写真は、学習者自身に探させるといいでしょう。教師も時々はやりますが、基本的には学習者にさせるといいでしょう。探してきた本人が考えてきたキャプションと、他の学習者が考えてきたものとの違いを考えさせるためには、いいことですし、教師の負担も減ります。
また、このキャプション作文は、長い文章を書くのが苦手な生徒にとって活躍の場になることがあります。キャプションには、長い文章は必要ありません。ほとんど一文ですみます。色々指導しても、クラスに長い文章を書くのはあまり好きではないという生徒がいた場合、このキャプション作文をやってみるというのはアリかもしれません。
*1 「写真で一言ボケて」 https://bokete.jp/
*2 句会方式は、本当に便利です。作者と作品を切り離すことで、作品だけを評価できます。また、ネガティブな評価を受けたとしても、誰の作品かは本人が名乗らない限り分かりませんので、ダメージは少なくてすみます。
今回のポイント
- コメントのあり方も学習者主体で、学習者に選択させる。
- タイトルだけ切り離して、タイトルの付け方のレッスンをする。
- 短い一言でも楽しめる「キャプション作文」もいい。