
- 作文指導を変える
- 国語
連載の第8回で、「社会に出れば、人は読まねばならぬ文章は読むが、読みたくない文章は読まないのだ。コメントなんてものもない。とりあえず書けば、先生が読んでくれる学校とは違う。だから、君たちは、読者が読みたくなるような文章を書かねばならないのだ」と書きました。この、「読みたくなる文章」というのは、どのようにして書かれるのでしょうか。今回は、この部分について考えてみましょう。
読者意識を持たせる
第7回で
「では、イメージの花火の単語をよく見て、この話なら読み手が楽しんでくれそうだなというものを3つぐらい選んでみましょう」
このような指示を出して絞らせました。次回以降に後述しますが、 読者を意識して書くことはとても重要です。
と書きました。
ところで、今書こうとしている作文は、伝えるための文章です。さて、この時、伝える相手は誰なのでしょうか? 学生たちに作文の書き方指導をするとき、「行事のあとの作文を書くとき、読み手は誰を想定していましたか?」とアンケートを取ってみますと、以下のような結果になりました。*1
また、続けて「想定していた読み手は、誰が決めましたか?」と聞いたところ、以下のようになりました。
この2つのアンケート結果から言えるのは、作文の書き手は、読者を自分で勝手に先生と決めて書いているということです。先生が読者であれば、間違えてはならないと緊張して、なかなか書けないのではないでしょうか。
私の提案は、この読者をクラスの仲間にするというものです。これでかなり書きやすくなります。
目的意識の設定
作文が書けない理由の最後は、「なんのために書くのか分からないので書けない」というものです。これは至極まともな意見です。伝えるためには、伝える目的が必要です。それが明らかになっていなければ、書きにくいのは当然です。
ここでは、書き手の子どもに目的を決めさせます。
読者は、このクラスの仲間です。その仲間に向けて、笑わすためでも、泣かせるためでもいいので、自分で作文を書く目的を設定してください。
と指示を出します。
しかし、これだけでは、その目的が達成できたかどうかが確認できません。その確認のシステムが、以下に示す「書き込み回覧作文」です。
相互評価の「書き込み回覧作文」
一言で言えば、回覧しながら相互評価を行うシステムです。料理で言えば、作った料理を食べてもらい、感想をもらうことです。前回ご紹介した「作文は料理に似ている!?」対応表では、12と13に相当します。
これを実践することで、書き手の生徒が設定した目的が達成されたかどうかが、一目でわかります。笑わせようとしたところに「(笑)」とコメントがあれば成功です。子どもたちは、この書き込み回覧作文が大好きです。仲間からのフィードバックがすぐに得られるわけですから。たくさんの書き込みがされた原稿用紙が戻ってきた時、子どもたちは「読みなさい」と一言も言わないのに、じっと読んでいます。それもニマニマ笑いながら。この時間はとてもいい時間です。
念の為、プリントにもありますが、重要なことを確認しておきます。それは、この書き込みは「共感的なコメント」と「肯定的なコメント」のみでするということです。これが極めて重要です。*2
作文を書かせるための最高の指示とは?
私の作文指導では、この書き込み回覧作文までがセットです。つまり、「前提、準備、制作、鑑賞、評価」の全てが揃うことが大事だと考えています。
連載の第1回目で、「テーマは、【夏休み】です。時間は45分です。しっかり書いてください。では、どうぞ」という指示はダメな指示だと説明しました。しかしこれは、実は最高の指示でもあるのです。
それは、これまで見てきたように、子どもたちの書けない理由に寄り添い、書き方を指導して身に付けさせた時の端的な指示なのです。書けるようになっている子どもにとっては、一見最低に見える指示であっても、十分に書けるのです。
繰り返します。
書き方を指導していなければ、最低の指示です。指導してあれば、最高の指示です。
「先生、作文って楽しいね」
「次は、いつ書くの?」
「いやあ、〜さんの文章おもしろかったなあ」
私は、子どもたちからこのような言葉をたくさんもらいました。
皆さんのクラスでも、こんな幸せな作文の時間が生み出されますように。
次回は、作文指導のバリエーションについて考えてみます。
*1 京都橘大学2020年度、教科教育法(国語)aでのアンケートより。2つとも同じ。
*2 5回ぐらい実施すると、「もっとアドバイスが欲しい」という声が出てくることがあります。その場合は「私ならこうする」のような建設的なコメントをしても良いというようにします。また、明らかな漢字間違いには、薄く丸をつけるということもします。これで教師に提出する前に、書き手は間違いを修正できますし、教師も指導しなくて済みます。
今回のポイント
- 読者意識と目的意識を確認する。読者は、クラスの仲間。目的は書き手が設定する。
- 書き込み回覧作文で、相互評価をする。
- 書かせる時の最低の指示は、書き方を教えてあれば、最高の指示になる。