作文指導を変える―つまずきの本質から迫る実践法
作文指導はなぜ難しいのか?その理由の本質に迫りながら、本当に必要な「指導の仕方」を考えます。
作文指導を変える(7)
アイデア出しを支援する
京都橘大学教授池田 修
2022/12/15 掲載

 なぜ子どもが書けないのか。その理由は分かりました。 (1)何を書いたらいいのか分からない。(2)何から書き始めていいのか分からない。(3)どんな順番で書き進めたらいいのか分からない。(4)何のために書くのか分からない。この4つでした。
 今回は、このうちの「(1)何を書いたらいいのか分からない」を解決していくことにしましょう。

なぜ何を書いたらいいのか分からないのか?

 体育大会を終えた月曜日。振り返りの作文を書くことは多くありました。*1
「はい、では原稿用紙を配ります。一昨日あった体育大会について書きましょう」
と原稿用紙を配ります。一昨日のことです。すぐ書けると思うわけです。練習だって1ヶ月ぐらいやってきたわけですから。
 ところが、「先生、何を書いたらいいか分かりません」という生徒の声が聞こえてくるのです。本当に信じられませんでした。しかし、これが現実なのです。よく生徒の話を聞いてみると、本当に覚えていない生徒がいるのです。過去は振り返らないタイプです(^^)。
 そんな生徒がいることを知った私は、翌年から少し工夫をしました。体育大会が終わった帰りの学活で、大きめのポストイットを1枚ずつ生徒に渡しました。そして、「体育大会で覚えていることを、単語でいいので3つ書いておきましょう。そして、それを机の中に貼って帰りましょう」と指示を出しました。こうするだけで、月曜日に思い出せる率がグッとアップしました。

イメージの花火

 その次に考えたのが、「イメージの花火」です。今泉浩さんが考案した「マンダラート」を展開したものを、このように名付けて使いました。*2

図4

  1. 中心にキーワード(例えば体育大会)を書いて、そこから思いつく言葉8つをその周りに書きます。
  2. その8つをさらに、外側に飛ばして、その周りに8つ書きます。
  3. 6分で81個書きます。

 こうすることで、体育大会のことをかなり詳細に思い出せます。最初は、6分で81個はなかなか厳しいです。しかし、繰り返すと出てくるようになります。全部埋まらなくても問題ありません。後から、友達と話しながら埋めても問題ありません。
 まずは、作文を書くためのアイディアを出すことが大事です。

〜で、何を書いたらいいか分かりません

 ところが、これでも書けない生徒がいました。(アイデアはあるのに?)と思いましたが、逆でした。
 書きたいことがありすぎて、何を書いたらいいのか分からなくて、書けない。こういう生徒がいたのです。これは盲点でした。
「では、イメージの花火の単語をよく見て、この話なら読み手が楽しんでくれそうだなというものを3つぐらい選んでみましょう」
 このような指示を出して絞らせました。次回以降に後述しますが、 読者を意識して書くことはとても重要です。

*1 体育大会などの行事の後に、作文を書くことの法的根拠は、学習指導要領の特別活動にあります。
「第2 各活動・学校行事の目標及び内容 〔学校行事〕 3 内容の取扱い (1)生徒や学校,地域の実態に応じて,2に示す行事の種類ごとに,行事及びその内容を重点化するとともに,各行事の趣旨を生かした上で,行事間の関連や統合を図るなど精選して実施すること。また,実施に当たっては,自然体験や社会体験などの体験活動を充実するとともに,体験活動を通して気付いたことなどを振り返り,まとめたり,発表し合ったりするなどの事後 の活動を充実すること。」(太字は池田)。
 振り返りは作文に限定するものではないでしょうが、生活綴り方などの影響を受けて伝統的に作文を書くようになったのではないかと考えています。
*2 今泉さんにネーミングと使用許可をお願いすると、快諾してくださいました。改めて感謝します。

今回のポイント

  • すっかり忘れている子どもに書けと言っても、叱っても書けない。
  • 書くためのアイデアを出すサポートをする。イメージの花火は有効。
  • 書きたいことが多すぎて書けない子どもがいる。その際は、アイデアを絞るためのサポートが必要。

池田 修いけだ おさむ

京都橘大学発達教育学部教授。
公立中学校教員を経て現職。「国語科を実技教科にしたい、学級を楽しくしたい」をキーワードに研究・教育を行う。恐怖を刺激する学習ではなく、子どもの興味を刺激し、その結果を構成する学びに着目している。国語科教育法、学級担任論、特別活動論、教育とICTなどの授業を担当している。

(構成:大江)
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