板書王のとっておき算数授業
これまで数々の授業・板書記録を残し続けてきた板書王が教える、子どもたちが授業に食いつく、とっておきの板書・授業ポイントが満載!
板書王のとっておき算数授業(3)
パチンナンバーゲームを通して公倍数を学ぼう!
5年「倍数と約数」(2/11時間)
新潟県新潟市立浜浦小学校二瓶 亮
2020/8/15 掲載

本時のねらい

 パチンナンバーゲームを通して、倍数や公倍数、最小公倍数の意味と見つけ方を理解する。

板書

図1

板書のとっておきポイント

  • 図を描くという必要性を子どもが感じたときに、図を描けるよう板書を構想する。
  • 子どもが図を広げていけるように、スペースを考えて板書を位置付けた。黒板を横にワイドに使ってきまりが見えやすくなるようにした。

授業の流れ

1ゲームから問いを見出し、全体の問いへ変える(10分)

 第1時では、奇数と偶数について学習しており、本時は倍数や公倍数、最小公倍数について学ぶ1時間目となる。

パチンナンバーゲーム

(例)パチンナンバー「2」のとき
ドン・パチン・ドン・パチン…というように、1・2・1・2の「2」のときに手を叩く(ドンのところは机を叩く)。
(例)パチンナンバー「3」のとき
ドン・ドン・パチン・ドン・ドン・パチン…というように、1・2・3・1・2・3の「3」のときに手を叩く(ドンのところは机を叩く)。

パチンナンバーゲームをしよう。まずは、練習としてパチンナンバー2を全員でやってみよう。

ドン・パチン・ドン・パチン…

簡単だね。みんな揃っていた。

では、次は少し難しくするよ。(教室を半分に分け)窓側の人はパチンナンバー3。廊下側の人はパチンナンバー4。せーの。

あれ、きれいに揃わないなあ。

 人数が多く、リズムにズレが生じてしまい、パチンが揃うことに気付かなかった。

人数が多いと難しいね。代表の人にやってもらおうかな。

ドン・ドン・パチン・ドン・ドン・パチン・ドン・ドン・パチン・ドン・ドン・パチン・ドン

ドン・ドン・ドン・パチン・ドン・ドン・ドン・パチン・ドン・ドン・ドン・パチン・ドン

あっ。「パチン」が重なるところがある。

たまたまでしょ?

いや、絶対に揃うはずだよ。だって…。

ちょっとストップ。絶対に揃うはずだと言っている人がいるんだけど、気持ち分かる?

ちょっと分からない。どういうこと?

気持ち分かるよ。説明したい。

 ゲームから入り、きまりが見え始めたところで、少数派の気付き(問い)を全体の問いへと変えていく。分かるという子と分からないという子の間のズレを埋めていくためにも、問いを共有していくことは大切。

2気付きを図で表現させる(15分)

 最初のうちは口で説明していたが、うまく伝えられずにいた。

先生、黒板に図を描いてもいいですか?

図2

※赤枠部分まで書かせて、続きを全員に考えさせた。

(×と○の意味を確認した上で)この図でどんな説明をしようとしているのかな?この図の続きをノートに描いてみよう。

12番目で重なるってことだね。

おもしろい。かけ算になっているよ。

本当だ。パチンナンバーと12までの○の数をかけると、どちらも12になる。

どういうこと?

12番目を見ると、パチンナンバー3は3×4=12で、パチンナンバー4は4×3=12になっている。

 図で表すように指示をしなくても、図の必要性を感じた(言葉だけでは伝わり切らない)ときに、子どもは図を用いて説明し始める。今回は○と×で表現したが、「パ」と「ド」で表現していた子もいた。

3見つけたきまりを広げて考えさせる(12分)

図3

 12番目で重なることが見えた子どもたち。中には、その先に目を向け始める子が現れる。

だったら、次は24だね。

次は24…気持ちが分かるかな?

12の2倍が24だからじゃない?

12番目までと同じことがくり返されるんだよ。

ここまでの話を一旦ペアで話して整理します。ペアで確認ができたら、それぞれがここまでの話をノートに書いて整理しましょう。

 大切にしたい部分では、話させたことをノートに整理する時間を取ることもある。全員を立たせて、お互いに理解ができたペアから座ってノートに整理させる。

4学んだことを価値付け、自ら試す時間を取る(8分)

 最後に、子どもの気付きと結び付けながら倍数や公倍数、最小公倍数という用語の意味を教えた。

3と4の最小公倍数は12の倍数とも言えるね。

12は3と4をかけた数だもんね。

最小公倍数は2つの数がかけられているんだ。

図4

今日の学びを他の数でも試してみよう。自分でパチンナンバーを2つ選んでノートに書いてみましょう。

「2と5」でやったら、最小公倍数は2×5=10だった。同じだね。

「4と7」も4×7=28が最小公倍数になったよ。やっぱりかけ算で出せるね。

あれ?「2と8」でやったら最小公倍数は2×8=16だと思ったのに、8だった…。

おもしろい疑問だね。次回は最小公倍数の秘密について考えてみようか。

 最後に出た疑問については次時に扱うこととした。今回のように、本時の学びを他の数(場合)でも試してみるということで、新たな問いが生まれることがある。そういったサイクルを大切にして授業づくりを行うことを心掛けている。

授業のとっておきポイント

 ゲームを通して子どもたちはゲームの中にあるきまりへと目を向けていく。「ゲームの中で見つけたきまり」を「学び」へとつなげていくことを意識した。そのためには、一部の子どもの気付きを全体に広げてさらに考えさせたり、考えたことや発見したことを価値付けたりしていくことが大切になる。
 ゲームを教材として扱う際には、子どもが他の場合(数値)でも考えたり、発展させて考えたりできる教材かどうかということもポイントとなるだろう。他の場合でも試してみたいとか自学で発展させて考えてこようと子どもたちに感じさせたいものである。

二瓶 亮にへい りょう

1989年新潟県生まれ。新潟市立浜浦小学校教諭。教員9年目。
子どもの思考に寄り添うことを大切にした算数授業を目指して日々研鑽中。
「フォレスタネット」(授業準備のための指導案・実践例共有サイト)に、板書写真を中心に、実践を多数投稿。「フォレスタグランプリ」の2018年11月大会にて「板書王」、2019年2月大会にて「ベストナイン(算数)」、2019年7月大会にて「月間MVP」を受賞。
共著に「フォレスタネットSelection Vol.3・Vol.4・Vol.5」((株)スプリックス)がある。

(構成:中野)
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