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事例いつも特定の子が発表する授業と話し合いが活発になる授業
国語の物語文の授業場面、先生が発問しました。そのあとの指示です。
「では、ABCどれかを選んで、それを選んだ理由を書いてみましょう。時間は10分です」
子どもたちは各自ノートに書きます。10分間たちました。
ここから、2つのパターンをご紹介します。
■パターン1
(各自ノートに書く活動を10分間行った後…)
「書けましたか。では発表してください。発表できる人は手を挙げてください」
いつも決まった子たちが手を上げます。発表が好きな子、国語が好きな子、頭の回転が速い子です。30人中6、7人でしょうか。
それ以外の子は手を挙げず、書き続けていたり、考えていたり、ぼーっとしていたりします。手を挙げている子たちの一人を指名します。その子が発表します。
「他は? 意見ありますか?」
他の子を指名します。次の子が発表します。
「あとは? 同じかな? あ、違う。どうぞ」
さらに次の子が発表します。3人の発表が終わりました。そのころになると、教室はどよーんとした雰囲気になっています。けだるいような、重たい、知性的な活気のない、なんともいえない静かな時間が流れます。時計をチラチラ見る子。手いたずらをする子。窓の方をずーっと眺めている子。
先生もどうしたらいいのかわからず困ってしまいました。
■パターン2
(各自ノートに書く活動を10分間行った後…)
「では、書けたらAの人はこちらに集まってください。Bの人はそちらへ。Cの人はあちらに行って、ノートを見せ合って同じグループ同士で話し合ってください。そのあと、全体で発表します。時間は3分間です」
子どもたちは席を立って自由に交流し始めます。選択した理由を話し合っています。
「そうだよね、そうだよね」とか、「あぁなるほど、だからか」などいろいろな声が飛び交います。3分経ちました。全体発表に移ります。
「発表できる人?」
挙手する子が15人ほどに増えています。先ほどの2倍以上です。
そのあとの話し合いは活気がありました。意見がぶつかり合って、結論が出なかったため宿題でさらに意見を書いてくることになりました。
翌日、意見を発表する子が増え、話合いはとても深まりました。
解説
停滞する授業の原因その1:発問がよくない
発問には、子どもの思考を活性化させるものとそうでないものがあります。今回はくわしく触れませんが、よい発問は授業を知性的に盛り上げます。
停滞する授業の原因その2:いつも決まった子だけが発表する
今回はこの点をくわしく述べます。
パターン1が、まさにそうでした。発表に不安のある子、国語が得意でない子、ゆっくり考えたい子にとっては、一部の子たちだけが活躍するのでおもしろくありません。自信を付けたり、成長したり、ワクワクしたりする機会がないので当然です。
そこで、授業ではどの子も参加でき、どの子も成長できる、どの子も発表できるような仕組みが必要なのです。
どの子にも発言の機会を与える。
では、どんな仕組みがあるのでしょうか。
パターン1では、意見を書かせた後、すぐに全体発表(挙手した子を先生が指名し、他の子が聞く場面)に移っていきました。
しかし、「意見を書く」と「全体発表」の間にワンクッションほしいのです。
パターン2では、ワンクッションありました。それが、グループ別にノートを見せ合う「小さな話合い」です。
この活動を挟むことで、どの子にも発言の機会が与えられます。全体では話せなくとも、小規模グループなら話せる子がいます。グループで話し合ったことで自信が付き、全体で話せるようになる子もいます。話すことを通して、思考を深めることができます。
いつも聴いてばかりでは、なかなか思考は深まりません。アウトプットの機会を設けることで、一人一人が生き生きと授業に参加できます。

ワンクッションのバリエーション
今回の事例では、ノートを持って自由に交流というワンクッションを入れましたが、実はそれ以外にもバリエーションがあります。
授業のねらいに応じて使い分けてみてください。
- ペアトーク(隣か前後で話合う)
- グループトーク(班の4人)
- 自由交流(今回の事例のように、ノートや教科書をもって立ち歩き複数名で話し合う)
- ブース方式(教室の四隅に発表が向かい、聴きたい人は自由に移動)
- 黒板前に集合(黒板前に集まり発表を聞く)
- 黒板やミニホワイトボード(黒板やホワイトボードに式、考え、図などを書いて説明し合う)
- ギャラリーウォーク(机の上にノートを開き、自由に見に行く)
ここがポイント!
- 「意見を書く」と「全体で発表」の間にワンクッションを!今月の「言葉のワザ」
- ねらいに応じてワンクッションを取捨選択
- 全員に発言の機会を与えることで、みんなが伸びて、みんながうれしい