- 堀江式 国語授業のワザ
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【年間を通してつけた力を見取る】
新年度を迎えるにあたり、一つ一つの単元だけでなく、年間を通して身につけた力を振り返らせるためのワザを教えてください。
ココがポイント!
【絶対評価】的、【年間を通した評価】であり、さらに【相互評価と自己評価】を重視した評価を実現する工夫を
「平成20年版小学校学習指導要領解説総則編」の「11 指導の評価と改善 第1章第4の2(11)」には、「児童のよい点や進歩の状況などを積極的に評価するとともに、指導の過程や成果を評価し、指導の改善を行い学習意欲の向上に生かすようにすること」として、次のような観点から評価するよう求めています。
- 他者との比較ではなく児童一人一人の持つよい点や可能性などの多様な側面、進歩の様子などを把握すること
- 学年や学期にわたって児童がどれだけ成長したかという視点を大切にすること
- 児童による相互評価や自己評価などを工夫することも大切
「他者との比較ではなく児童一人一人の持つよい点や可能性などの多様な側面、進歩の様子などを把握すること」というのは、いわゆる【絶対評価】的な評価を求めているということです。
また、「学年や学期にわたって児童がどれだけ成長したかという視点を大切にすること」は、【年間を通した評価】の重要性を述べています。
さらに、「児童による相互評価や自己評価などを工夫することも大切」と、【相互評価と自己評価】が重要であることを論じています。
こうした【絶対評価】的であり、【年間を通した評価】でもあり、さらに【相互評価と自己評価】を重視した評価を実現する工夫の一つとして、今回は「成長新聞」を取り上げます。
効果抜群! 堀江式 大ワザ&小ワザ
ワザ1 国語科での学びの中で生み出された新聞づくりのワザを生かす
最初の画像は4年生の「学びを見取る成長新聞」の表紙です。塩江理栄子先生(兵庫県赤穂市立原小学校)の実践です。毎月一枚の「成長新聞」を書いていきます。毎月一枚ですので、それほど負担にはなりませんが、それを12回(塩江実践では最後は2・3月号になったので11回)積み重ねることにより、子ども一人一人の成長を【絶対評価】的に「目に見える形に」することができます。
そしてこの「学びを見取る成長新聞」を支えているのが、国語科での学びの中で生み出された新聞作りのコツ(ワザ)です。
塩江学級の「新聞作りのコツ」表を下に示しましょう。「新聞作りのコツ」表に、「原小学校四年生 六月版」と書いてあるように、この「新聞作りのコツ」表は版を重ねて進化していきます。
「三年生までのコツにプロから学んだことをつけ加えたもの」という言葉が添えられているのは、地元の新聞記者に新聞記事の作り方について話をしてもらったからです。そのときに記者から教わったことを、「新聞作りのコツ」として取り入れたため、「字数は八〜十一文字」「白地黒ベタ…大変なこと・しんこくなこと」など、高度なコツも含まれています。
このように、国語科での学びの中で生み出された新聞作りのワザを生かすことを大切にしたいものです。「成長新聞」を書くことだけが目的ではなく、「成長新聞」を作ることが「言葉の力」を身につける機会にもなるようにすることが重要なのです。
新聞作りのコツ 原小学校四年生 六月版
―三年生までのコツにプロから学んだことをつけ加えたもの―
【見出しで読み手の心をつかむ】
1.記事の内容が見出しで分かる
2.字数は八〜十一文字…長すぎず短すぎず
3.見出しで読み手を引きつける
4.白地黒ベタ…大変なこと・しんこくなこと
5.見出しの大小
6.たて書き・横書き・ななめ・幕
【記事は分かりやすく】
7.わり付け…トップ・肩・へそ
8.組み立ては逆三角形に…大切なことから書いていく
9.5W1H(事実)いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どのように
10.中心となる記事にはリード文(記事のあらすじ)
11.一番伝えたいことをくわしく書く
12.記事に合った絵・図・地図を入れる
13.絵と字のバランス
14.写真にはキャプションを付ける
15.よびかけの言葉を入れる
16.文章の長さに気を付ける 一文は短く
17.前と比べる
18.感想・ふり返り・分かったことを書く
【強調工夫】
19.デザインを工夫する(わくの色・文字の色・文字の大きさ)
20.「―」や「?」や「…」などのマークを入れて注目のポイントを示す
【楽しませ工夫】
21.クイズ・ダジヤレ・ギャグ・4コマまんが
22.オリジナルキャラクターを作る
ワザ2 多くの他者の眼をくぐらせ、自分の成長を見つめさせる
カラフルなものが「成長新聞・4月から学ぶ」です。〔この本好き〕という見出しのもと、〔私が、この本好き!!と思うと、目が…。〕→〔図書館でかりて〜。〕→〔一日の間に読む!!〕→〔つぎの本へ。〕と目に訴えるように工夫されています。〔ごみ多いな〕の見出しの後、〔1.リユース、2.リデュース、3.リサイクル〕という社会見学において学んだことをまとめています。
モノクロの画像は、この「成長新聞」に対する【自己評価】および【他者(相互)評価】プリントです。
まず、〔★今月号で自分が取り入れた新聞づくりのコツは…〕という【自己評価】欄が用意されています。この学習者は〔これから、自分がどうするか。などを取り入れた。〕と書いています。これは「新聞作りのコツ」の「17.前と比べる」を活用したという意味でしょう。
次に、〔あなたのすばらしいところはね…〕という【他者(相互)評価】欄が2枠用意されています。同級生たちが、よいところを見つけて書き入れます。〔トップきじの小みだしを、大きくしているから、めいんな所がわかるね。色ペンでかいている所は、つたえたい所だとわかるね。〕などと、他者はある特定のところに焦点を当ててほめてくれます。
そして、〔★友だちからのメッセージを見て自分の新聞のいいところは…〕という欄では、【他者(相互)評価】を受けて再度【自己評価】を行い、〔小み出しがわかりやすくつたえたいと思う所。〕というように、同級生の【他者(相互)評価】によって自分のよさを再認識できています。
加えて、〔家の方から・先生メッセージ〕の欄も設けられています。
家の人からは、〔見出しの文字の中に色をつけて、すっきりとしましたね。文字の大きさで見出し記事に、何が大事かが伝わります。/小さな文字のところは、特に下段が、わくに合わせてていねいですね。イラストや、4コマまんがも楽しいね。〕という【他者評価】をいただきました。
こうした工夫を凝らすことにより、「説明責任(アカウンタビリティ)」を果たすことができます。「説明責任」を一番最初に果たすべき相手は学習者です。学習者同士をつなぎ、身につけた力をくっきりと浮かびあがらせるという形で「説明責任」を果たしています。さらに、保護者にも「説明責任」を果たします。我が子がどんな学びを行い、どのような力を身につけているかを具体的に知らせることができます。
最後は、先生からのメッセージです。〔色のつかい方が、四月号に比べてすごくいいです。何のために色を使うのか考えたのでしょうね。読書好きの〇〇ちゃんがもっともっと進化していることがよく伝わります。社会科見学を通して、ごみ問題についても考えられたね。〕と、新聞作りの面、読書好きという面、社会見学での学びと、担任らしく多様な観点から【他者評価】を行っています。
「成長新聞」の最終号は、「四〜三月を比べる」、つまり「1年間の振り返り」特集です。
〔自分でする・自分で考える〕という小見出しのもと、〔四年生になって、私は目標ができた。それは、「自分でする・自分で考える」だ。そのために私は、いろいろなことをしたと思う。例えば、……〕と一年間の自分の成長を【自己評価】しています。
次の〔伝え合い自分のアイディアが分かる〕という見出しのもと、伝え合いによる【他者(相互)評価】の大切さについてもまとめています。
〔四〜三月そう合成長ランキング結果〕として、5.自分の力を発きする力、4.写す力、3.予想をする力、2.考える力、1.まとめる力という、身につけた力を示しているところに注目したいですね。
4月から新年度を迎えるにあたり、年間を通して、身につけた力を振り返らせるためのワザとして「成長新聞」の例を示しました。
学習指導要領が求める【絶対評価】的であり、【年間を通した評価】でもあり、さらに【相互評価と自己評価】を重視することを実現することができ、そして、だれでも取り組むことができるワザとして活用していただければ幸いです。
※年度末の「身につけた力の振り返り」については、次のWeb連載をご覧ください。
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- 1
- 蛙
- 2014/3/5 22:21:35
まず、新聞を作らせる前に地元の新聞記者から話を聞かれていることがすばらしいと思いました。子どもたちの新聞作りへの意欲が、何も聞かずに始める場合と比べて何倍も高まったことと思います。また、毎回、友だちや保護者との相互評価をされることは、子どもたちの学習意欲を高めることに加え、新聞作りの観点(ワザ)を増やすことにつながると思います。一年間を通じて一つの活動に取り組むためには、子どもたちが「楽しい」「もっとやりたい」と思い続けることが必要ですが、なかなか難しいと感じています。提案いただいた方法であれば、毎回多角的な評価を受けられるうえ、自らの新聞作りの観点も毎回増えていきます。このことは、子どもたち自身の学びの意欲を毎回引き上げ、モチベーションを高め続けているのではないかと思いました。これを年間通じて行えば、「新聞作りのコツ」も積み重ねられるうえ、一年間に身に付けた自分の力を、きちんと目に見える形で振り返ることができると思いました。堀江先生がおっしゃっていますように、毎月一枚であれば、自分にもできそうです。来年度が始まるのが待ち遠しくなりました。ありがとうございました。 -
- 2
- 国語ラボラトリー
- 2014/3/8 3:46:39
評価は、学習が終わってからなされるものではなく、学習をはじめたときから、つねに学習とともにあるものなのでしょうね。 -
- 3
- はらっこ
- 2014/3/8 8:00:40
4年生の教科書に「新聞を作ろう」という小単元があります。一年間このように年間を通した言語活動として続けることで、自分の成長を可視化することができますね。堀江先生がどの「堀江式 国語授業のワザ」でも書かれているように、学習者・保護者への「説明責任」を果たすことができるでしょう。子どもにとっても、保護者にとっても、宝物になることまちがいなしです。こういうことをする学年が、6年間のうち1年あってもいいと思います。ただ、指導者として気をつけなければいけないことは、ただ書かせるのではなく、どこかで新聞の技を見直して内容を高めていったり、振り返りの仕方を工夫したりしながら、学習者の意欲を高め続けることが大切だと感じました。是非、取り組んでみたくなりました。 -
- 4
- nekoneko
- 2014/3/22 10:55:09
新聞作りというと、何か行事の時につくるようなイメージがあったのですが、このように毎月作るというアイデアに驚きました。新聞作りのコツを使いながら、自分の考えをまとめるという表現力を培ったり、いろいろな出来事の中からどれをとりあげるかという判断力を身につけたりできるのだなあと思いました。毎月作り続けることで、1年間を通して自分の学んできたことを振り返ることができるのもすばらしいと思います。保護者にとっても、自分の子どもの成長が目に見える形でとらえることができて、ありがたいと思います。新聞作りはこういう形でするもの、という固定観念をもたずにいろいろな形で工夫をすることが必要なのですね。 -
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- がま
- 2015/2/5 18:35:05
成長新聞作りは、月1回のペースで行っておられ、無理がなく、子どもたちが楽しんで取り組めるものになっていて、言葉の力をつけるための良い実践例であると感じました。しかも、「新聞づくりをするワザ」が子どもたちで作られ、活用されているので、新聞を作る際に困ったときに使えるものになっています。おそらく、4月号や5月号と2月号や3月号とを比べると、成長新聞の出来栄えは随分と良くなっているものと考えます。中身は、指導者の裁量に任せられますが、その時々の学習したことに関するネタで、特に縛りはなくていいのかなと思います。ぜひマネして実践したい1つです。