著者インタビュー
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ただ忙しいだけのリーダーにならない、“攻め”の時間術
岐阜聖徳学園大学教授玉置 崇
2016/8/19 掲載
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  • 教師力・仕事術

玉置 崇たまおき たかし

1956年生まれ。公立小中学校教諭、国立大学附属中学校教官、中学校教頭、校長、県教育委員会主査、教育事務所長などを経て、2012年度から3年間、愛知県小牧市立小牧中学校長。2015年度より岐阜聖徳学園大学教授。
文部科学省「教育の情報化に関する手引作成検討会」構成員、「学校教育の情報化に関する懇談会」委員、中央教育審議会専門委員を歴任。

―本書の冒頭で、玉置先生は「時短術だけが時間術ではない」と述べられていますが、時間術をどのようにとらえているのでしょうか。

 「時間術」というと、仕事を短い時間でテキパキ片づける術だと思う方がほとんどだと思いますが、私は「限りある時間を有効に活用する術」だととらえています。このように考え、これまで時間を意識して仕事をしてきました。
 本書では、この時間術を3つに分けてとらえています。
 1つめは、「時間を短縮する術」、つまりいわゆる時短術です。これは、仕事を効率的に行ったり、問題を長引かせず早期に片づけたりするための時間術です。
 2つめは、「時間を有意義にする術」です。その時間を他人に喜ばれるものにしたり、自分にとって意味のあるものにしたりするための時間術です。
 3つめは、「時間をかける術」です。仕事の「量」よりも「質」を高めたり、ミスややり直しを防いだりするために、あえてひと手間をかけるという時間術です。

―スクールリーダーの仕事には、絶えずスピードが求められます。特に、スピード感をもって組織を動かすためには、どんなことを意識するとよいのでしょうか。

 理想は、すべてのメンバーの合意を得て仕事を進めることですが、それではタイミングを逸してしまうことがあります。ですから、仕事によっては自らの責任において決断して進めることが大切です。決断ができるからこそリーダーなのです。
 そのためには、日頃から確かな決断をし、チームが進むべき方向をしっかり示しておくことです。こうした積み重ねがあれば、事後報告であっても、だれもが納得することでしょう。むしろスピード感を大切にして仕事を進めたことに感謝されると思います。

―スクールリーダーにとって、会議の進行は腕の見せどころの1つです。手際よく、スムースに進行するためのコツを教えてください。

 職員会議で時間がかかった経験はありません。職員会議のはじめに、審議事項ごとに費やす時間を示し、合意を得ていたからです。予定の時間を過ぎた場合は、再検討する内容を明確にして、各学年の意見を運営委員会で集約して決定することにしました。
 提案者には、「書いてあることをダラダラ読まない。これまでと違う点を説明すればよい」と指示し、時間短縮を図りました。話し合いでは、説明があった点、つまり新たな提案部分のみを審議しました。

―玉置先生は、教育委員会での勤務経験も豊富ですが、その経験から気づいた、スクールリーダーが知っておくと役に立つ時間術があれば教えてください。

 教育事務所から提出された書類を点検する仕事がかなりありました。愛知県の場合、提出文書は、学校から市町村教育委員会、そこから教育事務所を通って県教育委員会に届きます。2つのチェック機関を通過しているので、間違いはないように思うのですが、それが意外とあるのです。
 そして、同じようなミスが繰り返されることが多く、「またこの学校か…」とつぶやくことが何度もありました。これは、一度犯した間違いをきちんと記録していないことが原因になっているのだと思います。例えば、任用書類であれば、それぞれの項目のところにミスを記録しておくとよいでしょう。「…の場合は、ここに○」などと書いておくのです。
 1つのミスで多くの人の時間を奪ってしまうことを意識すべきです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 時間術に関する本は世の中にたくさん出ていますが、本書のように、スクールリーダーに特化した本は、これまでなかったと思います。目次を見てください。

 第1章 玉置流 スクールリーダーの時間術の原理原則
 第2章 繁忙期を難なく乗り切る時間術
 第3章 ピンチを素早く切り抜ける時間術
 第4章 日常生活のタイムロスをなくす時間術
 第5章 役職別 毎日の業務がみるみる片づく時間術
 第6章 リーダーとしての資質を高めるための時間術

 目次を見て、まさに「これを知りたかった!」と思われることがないでしょうか。長年の経験を基に、「仕事に押し潰されず、スマートに学校を動かす!」時間術を示しました。多くの皆さんが本書を手元に置いてくださることを願っています。

(構成:矢口)
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