18日に配布された教育課程部会の審議の概要が文部科学省のホームページでアップされた。それによると、国語科の改善の基本方針として、「言語文化と国語の特質に関する事項」が新設されることになったようだ。
これまでの「言語事項」の内容のうち、三領域(話す・聞く、書く、読む)に関連深いものはそれぞれの領域内容として位置づける。今回の新「事項」によって、我が国の言語文化・伝統・特質などを重視していく方針を打ち出したと言えそうだ。
○注目は――
この新「事項」。大きく分けると「言語文化」と「国語の特質」ということになるが、今回注目したいのは「言語文化」だ。
「言語文化」というと、同方針が示すように、古典・敬語・漢字・読書などのほか、伝統芸能や日本人的な価値観などが考えられるだろう。いずれにしても、教育基本法改正の影響であることは間違いないと言えそうだ。
○課題は――
漢字や読書などはこれまでも小学校から指導が行われてきた。しかし、古典や敬語というと必ずしも十分に行われてこなかったのではないだろうか。
同資料によると、小学校の「改善の具体的事項」として、
易しい古文や漢詩・漢文について音読や暗唱を重視する
とある。これまでの審議過程を見ると、古典は低・中学年からの導入が濃厚だ。低・中学年担任が多い先生にとっては、なじみの少ない指導ということで負担感があるかもしれない。
古典回帰ともいえる国語科の改善方向だが、一部で言われるような戦前の教科書に逆戻りだ(だから戦争への道につながる)というような批判はあたらないだろう。戦前の教科書は国定で文語調・音読を重視したものだった。しかし教材の吟味が許され、情報化が進んでいる現代は、戦前・戦中のように国威発揚のための教材が多くなった状況とは明らかに異なる。
むしろ、PISA調査の結果など、世界を意識した世論形成が多数を占めていた中で、かえって日本独自の伝統や文化を再評価する声が高まっているという点に光をあてるべきではないだろうか。
現実的な課題としては、時間数の確保と授業内容だろう。これまでのように大半を文学や説明文の詳細な読解に費やしているようでは目標倒れということになる。文科省には現場の理解を得る努力を、現場には有効な授業開発が求められる。
○古典に親しませる指導?
古典の音読や暗唱も、ただ文字だけを追うのでは面白くない。教科書での扱いにもよるだろうが、小学校の先生方も古典の背景や歴史的な位置づけについて理解しておくことが必要になってくるだろう。
中学・高校でも古典学習が嫌いという生徒は多い。小学生のうちからやらせれば古典に親しめるというものでもない、との意見もありそうだ。先行事例として、中学・高校での実践はもとより、NHKの人気番組「にほんごであそぼ」や、きょういく人会議、新教科「日本語」―東京都世田谷区でスタートでも取り上げた取り組みなどはおさえておいた方がよいかもしれない。
古典を題材にした現代訳を教材にするならわかりますが、古典そのままだとするとかなりハードルが高いですね。