きょういくじん会議
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著作権法改正へ? ネットユーザーの代弁者「MIAU」始動
kyoikujin oec
2007/10/21 掲載

「お父さん、ぼく、ネットでこんなに調べ物したで」
「ぎょうさん資料集めたんやな…あかんわ、この文章もこの画像も、著作権フリー表記のないページからの引用やないか。違法ダウンロード罪になってしまうかもなぁ」
「えー、勉強になる思ってやってるだけやのに、なんでぇ?」

 …この会話は現時点ではフィクションですが、近い将来ノンフィクションになるかもしれません。

 もちろん、学校教育での著作物利用は、著作権法第35条第1項にあるように、ある程度の範囲で認められています。そのため、現在もインターネットを活用した調べ学習を指導なさっている先生も多いことでしょう。学校教育における利用が制限されることは、まず考えられないと言ってもよいかもしれません。
 ですが現在、著作権法の改正について、次のような議論が起こっていることはご存知でしょうか。

インターネットが不自由になる日?

 文化庁の文化審議会著作権分科会は、12日のInternet Watchの記事などで紹介されているように、「違法サイトからの(音楽や映像の)ダウンロードの違法化」などに関する中間報告をまとめました。現在は、著作権侵害をしてダウンロード可能にした配信側のみが違法とされますが、そのようなサイトから音楽などを「情を知って(違法だと知った上で)」ダウンロードしたユーザーの罪も問うようになる、という方向性です。しかし、どこまでを「情を知って」いたと判別するのかなど、課題も多く残されています。

 IT・音楽ジャーナリストの津田大介さんは、この件について5日のITmediaNewsの記事で、「音楽だけではなくテキストや画像の著作権権利団体についてもこの動きが広まる可能性がある」と指摘しています。記事を少し引用しましょう。

 録音録画だけなら、音楽やテレビなどに興味がない人には関係ないのですが、テキストや写真になるとすごく範囲が大きくなり、ユーザーの情報入手を極端に制限する――ということにもなりかねません。

 適用範囲が広がれば「写真を気に入ったから右クリックで保存」という、ネットを普通に利用している人にありがちな行為も違法とされたり、ブログにコピペされた新聞記事の内容を、印刷したりダウンロードしたりする行為が違法とされる可能性もあります。

 Web2.0時代を迎え、ユーザー同士の活発なコミュニケーションによる新しい情報社会が始まっています。その中で、権利者団体を中心に著作権侵害を厳密に取り締まろうという動きが起こっています。これによって、著作権侵害をしているわけではない一般のユーザーも不自由を被る可能性が出てきました。
 それなのに、今まで著作権法改正論議では権利者の意見が強く、ユーザーの声は、あまり反映されてきませんでした。このバランスを回復しようという動きがあります。

「MIAU(みゃう)」とは

 18日、白田秀彰法学博士を始めとしたメンバーによる「MIAU」 設立発表会が開催されました。
 MIAUとは「Movements for Internet Active Users」の頭文字で、日本語名は「インターネット先進ユーザーの会」。MIAUの公式サイトから、その設立の目的を一部引用します。

私どもMIAUは、「情報技術を応用することで、現在よりも自由で幸福な社会を作れる」と考える人々の声をまとめ、既存の法や制度に依拠する人々に対して、新たな技術による自由がもたらす利益と幸福について説明するために設立されます。

 当面の活動は、ダウンロード違法化に対するインターネットユーザーの意見表明の支援などを行うそうです。

子どもたちとネットの未来

 マイクロソフトの「子供と親のインターネット利用意識調査」からも、子どもは親が認識している以上にインターネットを使用していることが分かっています。学校現場以外でもネットを使っている子どもたちはたくさんいます。インターネットを通じて新しいコミュニケーションを築き、成長していく子どもたちもますます多くなっていくでしょう。
 インターネット上で、著作権者の権利を守りつつ、私たちがより情報的に豊かに生きるためにどうすればいいのか。
 IT時代の著作権問題は今、岐路に立っています。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
4件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2007/10/22 12:04:16
    先日テレビで、文化祭で演劇を上演する許可を取るのが大変になってきたと報道してました。
    著作権は大事とは思いますが、営利目的でもないのに、ちょっと権利の主張が行き過ぎな気が。
    • 2
    • 名無しさん
    • 2007/10/23 18:24:02
    これはこわい。文化庁が文化を破壊するかもしれない。
    とりあえずパブリックコメント投稿から始めたく思います。しかし政府はぜんぜん宣伝してませんね、パブリックコメント募集してること…。きなくさいなあ。
    • 3
    • ぷりん
    • 2007/10/24 4:38:16
    「miau」というサイトでパブリックコメントの書き方を教えてもらえます。映像がアウトになれば、自動的に文章もアウトになります(ITmedia記事内で、文章関係業界も権利を主張すると明言)。そうなれば、迷惑メールの中に小説の一節があっただけで、それを受信した時点で犯罪になります。ネット検索も携帯メールもできなくなります(業界に訴えられたら、“故意ではないこと”を事実上証明できないので圧倒的不利)。一番大事なのは、“ネット以外の人にもこのことを知ってもらう”こと。パブコメ終了したあとも周りに広める、そうして、日本中で反対がいっぱいになれば、さすがに法律を作れなくなります。権利ばかり主張する人たちに、わたしたちが「普通にネットをする権利」を侵害する権利はありません。
    • 4
    • 通りすがり
    • 2007/10/24 17:26:20
    >ぷりんさん
    重箱の隅をつつく発言お許しください。
    私もITMEDIAの記事(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/05/news066_3.html)を読みましたが,ぷりんさんのおっしゃるような「自動的に文章もアウトと明言」とまで断定的ではないのではと思いました。あくまで津田氏が非公式に、確認を取った範囲では、「音楽がそうなれば我々もそう動かざるを得なくなる」という反応が多かった、ということなので。
    ですが、今後音楽以外の著作権者団体にこの動きが波及する危険度が高く、危機感を持たねばいけないことは確かですね。
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