4日、PISA2006調査の結果が公表され、翌朝新聞各紙はこぞって1面で取り上げた。前回調査で国語教育界を揺るがした「読解力」は15位と前回よりまた順位を下げた。今回の結果は次期教育課程の改訂にどんな影響を与えるだろうか。
「読解力」調査結果の概要(調査問題は非公表)
OECD平均を500点とした場合の日本の得点は前回と同じ498点だった。今回の調査問題は公表されておらず、精細な分析は難しいが、相変わらず無答率は高く約14%(平均は約10%)。中には4割を超える無答率を示した問題もあったという。
また前回調査と同一の問題は28題だが、そのうち前回よりも大きく正答率が下がった(5ポイント以上)問題は5題。逆に大きく上がったのは1題だけだった。
面白いのは、全ての国で男子よりも女子の方が読解力得点が高いという点だ。ちなみに日本では女子の平均が513点、男子は483点と実に30点もの差がついているわけだが、これでも他国に比べて差は少ないという。
なお、学習の背景に関する調査で、理科、国語、数学の正規の授業を受けている時間が長い(「週に4時間以上」の)生徒は、科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの得点水準が高い傾向が見られる、というのは次期改訂に向けて大きな影響を与えそうだ。
こんな力意識してました?
時事通信の記事によると、OECDのアンヘル・グリア事務総長はこのように言っている。「単なる知識の記憶では、労働市場で必要な能力を身に付けられない」 。
PISAで高得点をあげようとするならば、「社会にとって必要かどうか」という視点が不可欠だ。4月に行われた「全国学力・学習状況調査」でも国語B問題では同傾向の問題が出されていたが、PISAに比べて「文章などから根拠・理由を明確にして論じさせる問題」がない、などその不足も指摘された。数学や科学でも記述式の問題で力を試す。国語科が担う役割は大きい。
次期教育課程は…
翻って、先日公表された中教審教育課程部会の「審議のまとめ」を見てみると、「文章や資料の解釈、熟考・評価や論述形式の設問に課題がある」とPISAの読解プロセスを意識した記述がなされている。しかし国語科の「改善の具体的事項」には「読解力」「言語力」といった文言は使われていない。課題ではあるけれども、具体的な改善にははっきり示さないという姿勢は本答申で変わるだろうか。
PISA調査に長年携わっている国立教育政策研究所の有元秀文氏
は以前こう述べていた。「日本でもPISAに対応した授業をしていけば、読解力がメインになる2009年調査時には必ず上位になるはずだ」。日本の教育力そのものにはまだまだ力がある。方向性と方法さえ間違わなければ世界トップクラスになることは間違いないという力強い提言に、真摯に耳を傾けるべき時なのかもしれない。
- PISA2006結果―日本全ての分野で順位を下げる(きょういくじん会議)
http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/news/?id=20070436 - 全教科で言語力育成―指導要領改訂の方針固まる?(きょういくじん会議)
http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/news/?id=20070210 - 全国学力テスト―国語の調査結果をどう捉えるか(きょういくじん会議)
http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/kaigi/?id=20070356
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日本では「理屈屋」とされて却って世渡りが難しくなる面もあると思う。
PISA型読解力が伸びないのは、社会がそれを求めていないから、
という面もあるのではないだろうか。
それは言い方一つの問題で、対人関係のリテラシーも必要なんだと思いますが。
理路整然とした自分の論理に酔ってたり、理屈で言い負かそうとするような人は、そりゃ組織では浮きますね。