10日の産経新聞の記事や9日の日経新聞の記事によると、文化審議会国語分科会漢字小委員会は、9日の審議において、都道府県名に使用される11の漢字を新常用漢字表に採用するように定めたということです。ですが、このニュースだけでは「新常用漢字表って何?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
常用漢字表とは
1981年の内閣告示により公布されたのが現在の常用漢字です。これは1946年に定められた当用漢字が元になっていますが、当用漢字が連合軍の占領政策の一環として漢字の使用を制限したものであるのに対して、常用漢字は「法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すものである」とされています。
ですが、「誰」「俺」「爪」などの日常で広く用いられている漢字が選ばれていない一方で、「匁(もんめ)」「虞(おそれ)」「朕(ちん)」などの今やほぼ使われることのない漢字が含まれていたり、「私」の訓読みとして「わたくし」のみが掲載され、「わたし」という現在慣用的に使われる読み方がなかったりという問題点も指摘されています。
常用漢字改定へ向けて
国語分科会漢字小委員会の今期の審議について(PDFファイル)には、次の3点から常用漢字表の改定が必要であるとされています。
- 言語内の変化に基づくもの
(「常用漢字表」制定から既に25年が経過)- 言語外の変化に基づくもの
(情報機器の普及による書記環境の劇的変化)- 新聞・放送各社における漢字使用の変化
(使用漢字の増大と各社のばらつき)
単に漢字の入れ替えを行うだけではなく、書けなくても読めるだけでよいとする「準常用漢字(仮称)」の制定も視野に入れながら、平成22年(2010年)2月の答申を目指して審議が続けられています。9日の第20回の審議の情報はまだ文化庁にアップされていませんが、審議を傍聴したフリーライター・小形克宏氏のブログによれば、総字数を増やすのか、制限するのかという方向性が未確定であるなど、まだまだ課題も多く残されているそうです。
学習指導要領との関係
全1945字の常用漢字のうち、1006字は小学校学習指導要領の漢字表に掲載され、俗に「教育漢字」「学習漢字」と呼ばれています。現在の指導要領では、中学校3年生までにこれらの教育漢字を読み・書きし、教育漢字以外の常用漢字についてはその大体を読めるように(※書けなくてもよい)指導することになっています。
常用漢字表の答申には、「学校教育においては、常用漢字表の趣旨、内容を考慮して漢字の教育が適切に行われることが望ましい」「従来の漢字の教育の経緯を踏まえ、かつ、児童生徒の発達段階等に十分配慮した、別途の教育上の適切な措置にゆだねる」とされており、一見強制力はないかのように見えますが、実際には常用漢字表にない漢字や音訓は教えないのが通例となっています。
学習指導要領の改訂にも影響を投げかけると思われる常用漢字表の審議の動向は、今後も教育現場からの注目を集めそうです。
- 常用漢字表(文化庁)
http://www.bunka.go.jp/kokugo/main.asp?fl=list&id=1000003929&clc=1000000068 - 文化審議会国語分科会漢字小委員会審議報告(文化庁)
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/bunkasingi/kanji.html
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- 1
- 名無しさん
- 2008/1/22 14:48:00
この改定はぜひ注目したいですね…。