きょういくじん会議
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6割の自治体で安全対応基準なし―学童保育実態調査
kyoikujin
2008/3/11 掲載

 多くの学童施設でけがや事故が発生しているのにも関わらず、6割の自治体でけがや事故への安全対応について基準はなく、発生した事故情報などを利用者に提供しているのは3割程度―。
 放課後の子どもたちの生活の場として必要とされている学童保育だが、その安全対策や利用者への情報提供のしくみはまだ不十分である様子が、国民生活センターが先月21日に発表した学童保育の実態と課題に関する調査研究(PDF)で浮き彫りとなった。

 この調査は、利用者の立場から学童保育サービスの実態を探り、トラブルを未然に防止することを目的として昨年夏に行われたもの。市町村や学童保育施設を対象にした調査に加え、契約時の交付書面の調査も実施された。

不十分な安全対策、地域格差も

 この調査が行われた背景には、各地の消費生活センターに「設備・備品でけがをした」「事故への対応が悪い」などといった苦情や相談が寄せられていることがあるという。この調査の結果からも、2006年度の1年間で、けがや事故の報告の延べ件数は1万件近く、また、損害保険等の請求をしたことがある施設は76.4%と、多くの施設でけがや事故が発生している様子がうかがわれた。
 では、安全対策や事故への対応は、どうなっているのだろうか。
 施設を対象に行った調査では、けがや事故時の対応に関してで基準を設けているところは、公立・民営ともに60%台だった。
 一方、自治体調査では、けがや事故への安全対応の基準を設けているのは全体の半分以下(39.7%)という結果に。各学童施設の事故情報を収集分析し、対応策を検討しているところは70.6%、事故情報を自治体内の学童保育に提供しているところは63.7%あるものの、利用者へ情報提供は31.6%にとどまっている。
 自治体の安全対応は地域格差が大きく、例えば、最初に挙げた「けがや事故への安全対応基準の設置」についてみると、東京都区部は90.0%であるのに対し、町村は35.0%だった。

8割以上が契約書なし、利用者に不利な誓約書も

 社会福祉法では契約成立時に書面の交付を義務付けているが、この調査の結果では、ほとんどの施設が入所時に書面を渡している(99.2%)ものの「契約書」を渡しているのはわずか15.9%であることがわかった。中には契約書ではなく、保護者だけに一方的に誓約書や承諾書を提出させている施設もあった。
 また、契約書や誓約書の中には、「保育活動中における『事故』『災害』『事件』等によって被害を受けた場合について事業者の責任を一切問わない」「一旦支払った料金は理由の如何を問わず返金しない」といった利用者に不利な内容の記載があるものもあった。

 ご紹介した安全対策や契約書以外にも、学童保育の抱える様々な問題点が明らかになった今回の調査結果を受け、報告書では以下の提言をまとめている。

  • 施設及び自治体は、消費者に情報提供を十分行うことが必要
  • 契約書の作成と利用者への交付が不可欠
  • 安全対策の強化、事故時の体制の整備、事故予防への取り組みが重要
  • 子どもの生活の場としての環境整備(量・質の拡充、指導員の待遇改善)が肝要
  • 公的サービスとして地域間・施設間の格差是正が必要

 2月28日の記事でもご紹介したように、政府は「新待機児童ゼロ作戦」を発表したところだが、「質より量」などということにはならないように、安全で安心して利用できる施設をめざしてほしいものだ。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2008/3/12 8:57:23
    保育といっても、保育園児とはちがい子どもも大きくなっているし、人数が多いと先生方も大変そうです。
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