きょういくじん会議
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私たちに何ができるか―児童虐待の悲劇を前に
kyoikujin
2010/8/25 掲載

 いったいどうすれば悲惨な事件がなくなるのか。

 7月末に発覚し、今月10日に殺人容疑で再逮捕された大阪での事件。1歳の長男と3歳の長女をマンションに置き去りにしたまま衰弱死させた。その事件の詳細がつづられた22日の朝日新聞の記事では、改めてその悲劇に身が震える思いがした方も少なくないだろう。

児童虐待のいま

 過去の記事等でも何度かお伝えしてきたように、平成12年に成立したいわゆる「児童虐待防止法」以降、着実に虐待の認知件数は増え、虐待事件の検挙件数も増えている。一方、虐待がもとで亡くなる子どもの数は毎年60人前後とほとんど変わっていないそうだ。

 これらのことから、社会的な認知が広がり対策は拡充してきているけれども、虐待そのものは決して減っていないとうことが推測される。

 7月にまとめられた「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第6次報告)」によると、心中事例以外の虐待では、ネグレクトによるものが全体の21.4%。反対に、身体的な虐待は78.6%に上り、前年に比べてネグレクトの割合は減少傾向のようだ。

今回の事件の兆候と悲劇性

 そんな中でも今回の事件は際立った特徴がある。幼い子どもが「2人同時に」「集合住宅の一室で」「一部ミイラ化した状態で」発見されたのだ。

 上述の朝日新聞の22日の記事によると、近所の住民も以前から兆候に気付いていたという。
 「ほとんど毎日子どもが泣いている」
 「インターホンで長時間、『ママーママー』と叫んでいる」
 通報が入った大阪市こども相談センターは5回訪問調査しながら何も分からず調査断念。
 数ヵ月後に、幼い2人は全裸のまま寄り添うようにして亡くなっているところを発見された。

虐待防止にむけた対応

 大阪での事件を受け、厚生労働省は8月18日付で「児童の安全確認の対応について」という報道発表をし、「48時間以内」の所定時間内において、子どもを直接目視することを確実に実施する方針を掲げた。

 虐待の発生予防、早期発見・早期対応から、虐待を受けた子どもの自立や虐待を行った保護者に対する支援に至るまで、切れ目のない総合的な支援が必要とされている。
 厚生労働省によるオレンジリボン・キャンペーンなどの啓発事業等のほか、以下のような対策が論じられることも多い。

  • 義務教育段階で親になるための教育が必要だ
  • シングルマザーに対する社会の理解と制度を充実させるべきだ
  • 児童相談所の対応力を増強すべきだ

 今回の容疑者は「子育てに悩み、すべてから逃げ出したかった」と供述しているという。もし間に合うのなら、そのまま放っておいたり暴力をふるってしまったりする自分に気付いた時に、せめて児童相談所などの福祉施設に相談して子どもを預けるなりしてほしい、と願うのは無理があるだろうか。

 通常の精神状態ではなかったということは想像できる。だが、「逃げ出したい」「でも、人を頼れない」となると、あまりにも自分勝手で理不尽な結果を招きかねない。
 私たち自身も、福祉施設を頼ることを、積極的に認めていく風潮を築いていく必要があるのかもしれない。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • Mom
    • 2010/9/14 22:29:30
    今回の事件に対し、近所やこども相談センターは、
    このような事態に至ることは理解できただろうと感じる。
    近所の方は自分の家庭、仕事、生活を支えるだけで精一杯で、
    事件に至るまで通報以上のことは出来なかったのだと思う。

    今や死亡まで至らなくても同じような状況化に追い込まれている子供が多いのではないか。
    『子は親を選べない』
    親も一人の人格(性格)を持っていて、その中で様々な親の形がある。
    自分の描く理想の子にさせようと個人の性格までも強要する利己主義型、
    自分の生活が犠牲になっていると感じ子を放任する放任主義型、
    または、義務教育などさせず監禁状態にする所有物型、
    その中で親は子に対し身体的や精神的な虐待が起こりえる。

    そもそも児童福祉法では、
    『児童が健康に出生して幸福で安全に育つようにその福祉を保障することを目的とする。』
    ・・・としているが、この児童福祉法を全ての親は知っているのでしょうか。

    子は親から与えられた環境や状況が虐待にあたるとしても分からないし、他人に言えない事が多い。
    他人はそのような子供が身近にいても、通報などある程度は出来てもそれ以上のことは出来ない。
    そんな子供達を救うためには ☆親への教育が必要だと思う。
    学校の家庭訪問では、その時だけ演じる親も居るので、
    お年寄りを訪問するように、ある程度の年齢(小学生)まで、
    国、自治体が定期的に家庭に訪問し、
    親の状況を把握し、児童福祉法に背くものは罰するなどの制度を作った方が良いのではないか。
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