「黒船」にも例えられるPISA。日本は全ての分野で順位を落とす結果となったが、そもそも、どのような問題なのだろうか。意外にご覧になったことのない方も多いかもしれない。PISAは本当に「黒船」なのか、実際の中身に触れることで少しは明らかになってくるだろう。ここでは、公表された科学的リテラシーの問題を1問ご紹介する。
課題文として、「温室効果―事実かフィクションか」という文章が提示された後に、以下のような問題文が続く。
―PISA2006 調査問題例より―
太郎さんが、地球の平均気温と二酸化炭素排出量との間にどのような関係があるのか興味をもち、図書館で次のような二つのグラフを見つけました。
太郎さんは、この二つのグラフから、地球の平均気温が上昇したのは二酸化炭素排出量が増加したためであるという結論を出しました。
- 温室効果に関する問1
- 太郎さんの結論は、グラフのどのようなことを根拠にしていますか。
- 温室効果に関する問2
- 花子さんという別の生徒は、太郎さんの結論に反対しています。花子さんは、二つのグラフを比べて、グラフの一部に太郎さんの結論に反する部分があると言っています。グラフの中で太郎さんの結論に反する部分を一つ示し、それについて説明してください。
- 温室効果に関する問3
- (省略)
どうだろうか。「意外に簡単」「結構、難しい」等、様々な感想があるだろう。一つ言えるのは、日本の高校入試問題とは傾向が明らかに違うことだ。PISAでは与えられた資料を読み込み分析する力があれば、知識をあまり必要としない問題が多い。
出題形式に着目してみると、PISAでは上記のような記述式の他に記号選択式も出題されるが、学校での学習内容とは直接関係のない「日焼け止め」「予防接種」などが題材となっている。それに対して、日本の高校入試問題では、そもそも用語を答える問題が多く、記号選択式も含めて教科書で学習した内容が大半を占めるのが実状。記述式もオーソドックスな解答例があるものが多い。
高校入試のような問題に慣れている日本の15歳の生徒が、PISAの問題に少々面食らうのも無理はないかもしれない。とはいえ、入試問題の状況は以前からそれほど変わっていない訳で、2006年の15歳たちは、PISA型の問題への対応力が落ちているということになる。
教育というのは、まさに未来をつくる営みで、どのような学力を児童・生徒に身につけてもらうかは、大げさではなく国の存亡にかかわる問題だろう。PISAへの対応もたしかに大事だが、これからの日本を支えていく児童・生徒たちにいかなる学力を身につけてもらうのが良いのか、国民的な議論が高まることを期待したい。
- OECD生徒の学習到達度調査2006年調査問題例(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/071205/002.pdf - OECD Programme For International Student Assessment(PISA)
http://www.pisa.oecd.org/pages/0,2987,en_32252351_32235731_1_1_1_1_1,00.html - 科学的リテラシーが2位から6位に転落―PISA2006結果(きょういくじん会議)
http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/news/?id=20070427
粘りがなくなってきているのでしょうか。