昨年度の10月のこと。機会を得て「反転授業」を試みた。「反転授業」という言葉はそれまでも聞きかじっていた。これまでの普通教室での一斉授業を見直し、子どもたちにさらに分かる楽しさを味わわせることができる授業法ではないかと気になっていた。
「反転授業」とは
説明型の講義をオンライン教材化して宿題にし、従来宿題であった応用課題を教室で対話的に学ぶ授業(教育とICT Online、山内祐平、講義が宿題になる――「反転授業」より)
のことである。つまり、協働的な学習の前提となる知識をICTを使って予習させ、学校の授業ではそれを前提として、応用問題に取り組んだりグループで課題解決したりする授業スタイルである。アメリカでは数年前から小中高で始められ、大学の講義のオンライン化も進んでいるようである。こうした動きは日本の大学でも進められており、最近では東京大学が大規模公開オンライン講座(Massive Open Online Course =MOOC、ムーク)に参加すると表明した。東京大学は、この取り組みを、反転授業のための実証実験と位置づけている。
日本の公立小学校でもICT機器やデジタル教科書の導入が進んでいる。筆者はこれまでもコンピュータやインターネットを活用した授業実践を重ねてきた。平成18年度からは電子黒板の活用を始め、最近ではICT活用をきっかけとした教師の授業力量向上について考えていた。特にインストラクショナルデザインの考えをもとに、ガニェの9教授事象を意識した授業設計を推進し、校内研究に取り組んできた。主に算数科で、学力的にも成果が出たし、教師にも好評だった。
この中で、一つのジレンマが生じていた。「40名近い子どもたちの学習の前提を整え、少人数グループで協働的に課題解決させ、7つや8つのグループが発表し、検討してまとめ、適用問題に取り組ませるには、45分では足りない」ということである。子どもたちが「ああ、そうか! 分かった!」となるまでの時間が十分に確保できないのである。
こうした経緯から、私の中で反転授業への興味と挑戦への意欲が高まっていった。
具体的な実践内容は、平成24年12月1日に行われた教育の情報化実践セミナー「未来の教室がやってくる in 仙台」で発表させていただいた。(教育家庭新聞に掲載)。小学校6年、算数科「比例(9時間扱い)」の学習である。
教科書の大問題を解説するVTRを7本(1本は5分程度)、事前準備した。収録は研究協力を得ている大学の教室をお借りした。電子黒板にデジタル教科書を拡大提示し、書き込みながら解説している様子をビデオで撮影する方法をとった。子どもたちには一人1台のWindowsタブレットを用意した。必要に応じて家庭に持ち帰ることができることとした。オンラインでのVTR視聴は家庭の通信環境に依存するため、今回は全てのタブレットにコピーする方法をとった。子どもたちは予習としてVTRを1本視聴し、分かったことや分からなかったこと、大切だと思ったことなどをノート見開き1ページ程度にまとめてくることを宿題とした。教室での授業は、VTRの内容の確認を3分から5分ほど行ったあと、本時の課題を提示し、自力解決→グループで検討→発表→全体で検討、まとめ→適用問題と進めた。
事後のアンケートでは、子どもたちから以下のような意見が寄せられた。
- 家で予習してきたことを使って授業で話すので、自分の考えを見直せる。
- 家で明日の勉強ができ、次の日は必ず分かるので楽だった。
- みんなが自分の考えを持って意見を出し合うので、まとめるのに達成感があった。
- 家で何度も見て理解でき、話し合いについていけるので良かった。
保護者からは以下のような意見が寄せられた。
- 子どもたちの順応性、好奇心に合致した取り組みだ。
- 分からないところを何度も見直すことができるので、復習にも活用できた。
- 予習の手段として直接先生の解説を聞けるため有効だ。
- 先生の授業が保護者も見られて役立った。
反面、保護者からは
- 学校では、PCを使用することで、下を向いてばかりの授業にならないようにして欲しい。
- 目新しいので興味を持って取り組んでいるが、慣れてきたらどうなるか心配。
といった声が聞かれた。
「パソコンを使った授業」というと「モニターとにらめっこしながら無言でタイピングする」というイメージが先行する。学習参観日で、子どもたちがタブレットを活用する姿をご覧いただき、互いに学び合ったり考えを交換したりする授業のために使うことをご理解いただいたが、そうした取り組みは必須であろう。
スマートフォンやタブレットが普及している今でも、小学生にとっては目新しい機器だし、反転授業自体が新鮮な取り組みである。全ての単元を反転授業にするというのは、VTRやコンテンツの準備の面、教科や単元の内容・目標との兼ね合いの面から現実的でないと考えられる。必要に応じて適切な単元で反転授業を取り入れ、その中で子どもたち自身が真に「わかる。楽しい。またやりたい」と思える授業をつくる、教師の授業設計力・実践力が問われる。
でも、この学習方法って 昔からありましたよね! タブレットを使用するところが変化しただけで、今も昔?も賛否両論はあるでしょうね。
私は 子育ては できるだけアナログで行う方が、色々メリットもあって良い、という考えを持っていますが、この反転授業 大賛成です。 先の読める頭の良い人が現場で仕切ってほしいです。頭の硬い先生 多いですよ。
どこか実践してないのかな。
私たちは以前から、『この道具がいい』とか 『この方法がいい』とか話題になると、そればっかり見えてしまう傾向にあるような気がします。
小学生でも 毎日きちんと自分で教科書や参考書を読んで予習が出来る子は 今までのように全員同じ宿題が与えられて、それがある子供にとっては時間の無駄と思われるような事から もしかしたらここで言われる反転授業の実践で講義が宿題になれば、早送りも出来るし、何回も聞く事もできるし、今までより効率的、無駄の少ない、一人一人にあった学校教育が可能になるような気がします。
9才の壁‥という大切なキーワードがあるように 小学生までは目に見えない学力も含めた人間的成長期ですから、母親の立場から、
色々 教育がどのように変わろうとも、まずは耳を傾け、よく考えて、無理せず、
出来る事を 子どもにとって良いと思う事はどんどん挑戦して 家庭でも工夫して生かしていきたいと思います。(私はもう子育てはほぼ終わってしまいましたが‥(^_^)
反転授業‥ 本当に面白そうです!!
逆に不公平でなく、将来授業の質の標準化もはかれるかもしれないツールになるかもしれないのですから…