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『SCHOOL SHIFT』刊行特別インタビュー(1)
学校を「シフト」する一人一人の力に
一般社団法人 未来の先生フォーラム 代表理事宮田 純也
2023/7/21 掲載
新刊『SCHOOL SHIFT(スクール・シフト)』の刊行を記念した特別インタビュー。第1回は、編著者である未来の先生フォーラム代表理事 宮田純也氏にお話を伺いました。

宮田 純也みやた なおや

早稲田大学高等学院、早稲田大学教育学部教育学専修卒業、早稲田大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。日本最大級の教育イベント「未来の先生フォーラム」創設や2億7千百万円の奨学金設立など、様々な教育に関する企画や新規事業を実施。株式会社未来の学校教育 代表取締役、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員を務める。編著に『SCHOOL SHIFT』(明治図書出版)、監修に『16歳からのライフ・シフト』(東洋経済新報社)

―いま、『SCHOOL SHIFT』という本を刊行しようと考えられた想いについて教えてください。

 私自身は2017年以来、未来の先生フォーラム(旧:未来の先生展)という学校教育を取り巻く様々な実践や知見、人々が集まり学びあう取り組みを行っています。今に至るまで、その取り組みを通じて学校教育の変化を感じていました。大きな変化の一つとしては、情報通信技術が加速度的に社会へ浸透しており、それに伴って学校教育も変化しているということが挙げられます。情報通信技術は本質的には個人が社会を創り・動かす原動力になり、一人一人の力を高めています。歴史的には、国家という大きな枠組みから企業・個人へ社会の原動力が変化していますので、個人が社会へ与えるインパクトは歴史的に見ても高まってきています。社会や学校は、一人一人の力で変えられる部分もある(ある程度の部分では政策的な制度改正の動きも必要ですが)のではないかと考えており、そのような機運を高めたり、すでに取り組んでいる、取り組んでみたいと思っている人に何らかの形で貢献できればと考えて本書を刊行しました。このため、『SCHOOL SHIFT』という題名になっています。

―本書の構成や見どころについてお伺いします。本書は大きく、「学校DX」「探究学習とPBL」「これからのキャリア教育」「変わる組織、学ぶ組織」「新たなキャリアデザイン」の5つのテーマから構成されていますが、学校教育のシフトを描くうえで、なぜこの5テーマを抽出されたのでしょうか?

 テクノロジーと向き合う現実が訪れている今、テクノロジーと教育に目を向けることは必須であることから、まずは「学校DX」を取り上げました。情報通信技術に限らず、テクノロジーの発展は歴史的に私たちの社会や生活を大きく変えてきています。農業革命によって農産物の供給量が増え、人類の人口増加や定住化による「社会」の発展がもたらされたといわれています。産業革命によって工業製品の大量生産が可能となり、「社会」の効率化が促進されまた。情報革命は新たな社会の到来をもたらします。「人生100年時代」というのも、そのうねりの中で生み出された事象であると考えられます。「社会」に有為な人材の輩出を一つの社会的役割としている近代学校教育にとっては、様々なことを根本的に問わなければなりません。教育方法が変わり、子供たちの自己実現も多様化します。そこには探究学習やキャリア教育が重要な役割を果たすでしょう。そしてそれに伴い、学校組織もその在り方から問い直しが起こります。組織を構成するのは個々人ですから、一人一人のキャリア形成についても考え直す必要が生じます。このように、本書においては社会基盤の変化から教育活動、そして学校組織と個人という大きな5つの領域に焦点を当てることで包括的に”SCHOOL SHIFT”に貢献できるのではないかと考えました。

―編集を終えられた今、本書は、具体的にどのような方に読んでいただき、どのように生かしていただきたいとお考えですか。

 「教育改革」は戦後から絶えず叫ばれていると言われています。しかし、今日のものは情報通信技術がもたらす根本的な社会構造の転換によって起こっているという点が従来とは異なるものでしょう。私たちの生活や社会が大きく変わる中で、私たちが信じていた規範や常識に対しての問いを生み出していると言えるのではないでしょうか。それが学校教育にも派生し、様々な物事への問い直しが起こっている状況だと考えています。これで良いのか、もっと良い学校教育を創れるのではないかという方々への羅針盤の一つになれば大変うれしく思っています。本書は有用な羅針盤となるべく、近代学校教育の成り立ち(過去)から現在、そして未来へと時間軸を長くとることで、現在のみに盲目的になり視野狭窄になることを避ける努力をしました。さらに、理論編と実践編が基本的にセットになることで構成されており、大きな抽象的な絵から具体的な一歩まで示すことができることを特色の1つとしています。本書の理論と実践例をヒントにして自分なりの実践や行動に役立つことができればと願っています。実践や行動は大層なことをしなくても、自分なりに何か少しでも変われば良いと思っています。そうして生まれたそれぞれの1つ1つの実践が、様々な問い直しに対するある種の「回答」となり、最終的に大きな構造変化としてのSCHOOL SHIFTをもたらす一助を本書が担うことになれば光栄です。

―最後に、『SCHOOL SHIFT』の読者に向けて、メッセージをお願いいたします。

 今はVUCA時代と言われて久しいですが、結局のところ、自分の人生や仕事などをより良くする答えは、自分の中にしかありません。本書が一人一人の自分を見つめる鏡のような存在になればありがたいです。本書を一つのきっかけとして、多くの方々に議論・対話(自己・他者問わず)が生まれて、結果として何らかの形で巡り巡って、一人一人のより良い人生や社会の創造に貢献できれば大変ありがたいことだと思っています。気が向いたら、お手に取って読んでみていただけると嬉しいです。

(構成:大江)
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