1.子どもたちの「願い」
「ただうまく授業を流すことにとどまらず、すべての子どもが目標に向かって目を輝かせ、仲間と共に高まり合い、学び合う授業を創造していかなければなりません」と先月述べました。しかし、学級にはいろいろな子どもが存在します。運動が好きな子、きらいな子。得意な子、苦手な子。やんちゃな子、内気な子…… すべての子どもたちが、このような姿で授業へ向かうにはどうしたらいいのでしょうか。
私は、子どもの「願い」を中核に据えた授業を行うことが大切だと考えています。「願い」は、一番のモチベーションです。その「願い」を考える際、まず一番に考えることは、「子どもたちは、この運動や教具や場に出会ったときに、どんなことを最初に行うだろうか。なにを楽しいと思うだろうか」ということです。
たとえば、ネット型バレーボールを元にしたゲーム、ネットとボールに出会った子どもたちは「ネットの向こうにボールを投げたい」「アタックをしてみたい」と思うでしょう。
とび箱と出会ったならば、「高い段をとびこしたい」「かっこよくとびたい」。
リレー、大きなコース、バトンと出会ったならば、「思いきり走ってみたい」「上手にバトンを渡したい」。
このような「願い」をもつのではないでしょうか。
子どもたちのもつ「願い」から出発することで、授業への熱が高まります。集団の勢いが生まれます。我々は、目の前の子どもたちの「願い」を十分に把握しなければなりません。
2.子どもたちの「願い」≠教師の「願い」?
とは言っても、教師にも「願い」があります。子どもたちがいくら楽しそうだとしても、やりたいと言っているとしても、やりたいことだけをさせてばかりというわけにはいきません。授業を通じて、子どもたちにつけたい力があります。
ネット型なら、「(アタックばかりでなく)チームで連係して(3段攻撃など)攻防してほしい」。とび箱なら、「(高さばかり追い求めるのはなく)身体の動かし方を理解して、効率的な身体の使い方をして跳び越してほしい」。リレーなら、「(勝ち負けのみにこだわらず)バトンの渡し方、カーブの走り方などの工夫により、記録に挑戦してほしい」などが教師の「願い」です。
子どもの「願い」、教師の「願い」。ここで、往々にして「ずれ」が生じます。能力的な「ずれ」(できる−できない わかる−わからない 容易−困難)から、心情的な「ずれ」(楽しい−つまらない やってみたい−やりたくない)まで様々です。
有名な教材や「いいな」と思った教材をそのままやってみても、うまくいかなかったという経験はないでしょうか。「もっとみんなができるようになるはずだったのに」「もっと盛り上がるはずだったのに」「もっと深い学びがうまれるはずだったのに」……。「はずだったのに」、まさにこれが「ずれ」です。
この「ずれ」を想定できていないと、いつまでもこの「はずだったのに」から抜け出すことはできません。まずは、「ずれ」に気づき、授業準備をすることが授業成功への第一歩です。そして、子どもの「願い」と教師の「願い」をつなぐ授業を創りあげていきます。
今月の授業ゴール型ゲームで「願い」を叶える工夫をしよう!
「ずれ」を埋め、「願い」をつないでいく具体的な方法を、ゴール型ゲームを例にいくつか紹介します。
バスケットやサッカーなどのゲームでは、子どもたちは、「シュートを決めたい」とまず願うでしょう。しかし教師は、シュートやパスの技術の獲得のみならず、仲間と協力したり、空間をうまく利用したりして、ゴールに結びつけてほしいと願います。ここに「ずれ」が生まれます。
しかし、既存のスポーツのバスケットやサッカーを(人数やルールを)そのまま行ったのでは、どちらの「願い」も叶えることが難しいことは容易に想像できます。子どもの側から、「8時間の単元で1回もシュートを決めてない」「どうやって動いていいのかわからないから突っ立てた」なんてこともあり得るでしょう。また教師の側から「パスを学ばせたかったのに上手な子どもばっかり活躍するゲームになってしまった」「つながりのないロングシュートや闇雲シュートばっかりのゲームだった」なんてこともよくある話です。そんなことにならないために、「ずれ」が解消できる手段をできる限り準備しておきます。場・用具・ルール・技術の保証の4つの視点でみてみましょう。
魅力的な場
子ども:「ゴールを決めてみたいな!」「なんか決められそうだな!」
教師:「空間の使い方を理解させたい!」「全員にゴールの喜びを味わわせたい!」
例:ゴールの工夫
頑張ればゴールできそうな形状。身近なものですぐに準備できるとよりいいですね。
![写真1](/db/eduzine/ptmg/20150564_1.png)
![写真2](/db/eduzine/ptmg/20150564_2.png)
例:コートの工夫
シュートがたくさん生まれる場。シュートする場所がわかりやすい場。みんながシュートしたいと思える場。そんな「願い」をかなえる場を準備しましょう!
![写真3](/db/eduzine/ptmg/20150564_3.png)
魅力的な用具
子ども:「さわってみたいな!」「怖くないな!」「おもしろそうだな!」「やってみたいな!」
教師:「操作が簡単なものがいい!」「安全なものがいい!」「学ばせたい動きがたくさん生まれるものがいい!」
例:ボールの工夫
安全で見た目が楽しそう。経験させたい動きがたくさん起こる。ボールひとつで、子どもの意識も動きも変わります!
![写真4](/db/eduzine/ptmg/20150564_4.png)
既存のものの空気の量を変えることで、堅さや跳ね具合を調整できます。ねらいに応じて、調整しましょう!
![写真5](/db/eduzine/ptmg/20150564_5.png)
魅力的なルール
子ども:「自分も活躍できそうだ!」「はやくゲームをしてみたいな!」
教師:「動きをしっかり理解させたい!」「協力が必然となるゲームにしたい!」
例:ゲームの工夫
ゴールの喜びが味わえるゲーム。個人プレーでは、前に進めないゲーム。そんなルールにすることですべての子どもが意欲的に授業に参加できます!
![写真6](/db/eduzine/ptmg/20150564_6.png)
![写真7](/db/eduzine/ptmg/20150564_7.png)
魅力的な技術
子ども:「できそう!」「うまくなりそう!」「シュート、アタックしたい!」
教師:「効率よく動きを習得させたい!」「みんなをできるようにしたい!」
例:練習の工夫
そのゲームで、一番魅力的で必要性の高い技術を全員が習得できる学習過程を示します。口伴奏などのリズムをつけて、わかりやすく、確実に習得できるようにしましょう!
![写真8](/db/eduzine/ptmg/20150564_8.png)
ここでは、授業前の準備を中心に紹介しました。しかし、どんなに準備して授業にのぞんでも、「ずれ」は必ず生じます。うまくいくこと、いかないこともあるでしょう。「ずれそうなこと」を予測できたり、予想外の「ずれてしまったこと」に気づき、何らかの手立てを講じたりできるようになれば、次へのステップです。
Aさんの悩み、Bさんのつまづき、Cさんと仲間との関係…… 子どもたちの顔を思い浮かべながら次の授業のことを考える。そんな営みが教師としての楽しみであり、喜びです。
絶対成功のポイント
- 子どもたちの「願い」から出発する!
- 子どもと教師の「ずれ」を想定せよ!
- 子どもの「願い」と教師の「願い」をつなげ!
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そんな中、一番大切なのは体を動かすことが楽しいと思ってもらえることにまず勤めました。上手にできない子にいかに楽しませながら、できるようにさせるか、出来る子には出来る子にも楽しく飽きさせずもっと伸ばせるようにさせるかと思いながらやってきました。体操教室でもオリンピックを目指してるわけではない教室なので、学校の体育が楽しく出来るようにをモットーにやってきたので、本当にその内容には共感できます。
沢山工夫して、どんどん素敵な授業が展開されることを願ってます。身体を動かす楽しさを知るだけでなんだか内気だった子が変わったり自信がなかった子が自信を持てたりと身体を動かすことが上手にできるようになればなるほど、変わったことも肌で感じたので、たくさんの子どもたちが身体を動かすことの楽しさを知ってもらえれば嬉しく思います。そして、そうなっていくように願いたいです。