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今月のメッセージ
これまでも、いまも、これからも貫き通したいこと
指名全国委員 藤 木 祥 史
二二歳になる卒業生からメールが届きました。彼女はいま看護師の国家試験にむけて勉強中だと言いながら、何を思ったのか次のようなことを書いてきました。
「ところで先生、五〇歳を眼前にして(あ、よけい???)何か好きな言葉ってありますか??
『Think Globally Act Localy』とか? もしくは『ONE FOR ALL ALL FOR ONE』。あ、これはクラスのスローガンか……。ちなみに私は、『On Your Mark』(位置について)かな。他にもいい言葉はたくさんあるけど、なんだかんだ言いながらもう七年くらいこの言葉に支えられたり、勇気づけられたりの日々です。でも、いつも胸に刻んでいたい言葉はいつか先生が言ったこと。『真実は常に一番弱い立場の人から語られる』ということ。この言葉、いつも、これからも私の基準です」
いつ、どんなときに、この言葉を彼女に言ったのか、まったく覚えていないのですが、彼女は二年間私のクラスのリーダーとして頑張った生徒でした。そして、彼女が在籍した三年間は、私がH男を三年間担任し、H男の変革を中心課題にすえて取り組んだ三年間でもありました。
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H男は小学校の下学年時代に、トラブルを起こして学年の約半数にあたる生徒がH男に噛まれた経験を持つという生徒でした。少年期を前に地域や保護者から危険な子どもとレッテルを貼られてしまい、遊び友だちも居なくなった彼は、四年生頃から登校しなくなったのです。小学校の先生方も懸命に彼を登校させるために取り組まれたのですが、誘いに行く生徒も学校に入れば自分たちの仲間がいて、H男はいっそう孤立感をため込み、少しのことでキレてしまい、凶暴な子(?)になってしまったのです。
H男は一年生で二、三校時の登校から始業時登校となり、二年生ではクラブにも参加し、一年の時にほとんど参加しなかった行事にも完全に参加しました。もちろん、彼への理解の広がりと仲間ができていったことによるものでした。しかし、九九すら危ういH男にとって授業参加はきわめて困難でした。前述の彼女と同じクラスになった三年生では、クラスをあげて授業づくり、学習の援助をH男のためだけではなく取り組んでいました。
各班に教科ガイドをつくり、二週間ごとに授業総括を行ない、改善に向けて先生への要求と自分たちの取り組みを検討しました。その取り組みは、「ベル着・忘れもの」から「授業ストップ権」「授業中継担当づくり(解説役をつくり、担当は予習を義務づけ、そのかわり教師の指示に従わずに中継する)」など、さまざまな取り組みを実施しました。最後にゆきついたのはクラス全員予習会でした。翌日の授業のなかで二教科にしぼり、ガイドが予習問題をだしたり、予習発問を提示し、班ごとに二〇分の予習をするものです。H男はどんな取り組みや援助も、みんなとちがうことはイヤだったらしく、予習の取り組みがH男にとってみんなと同じように授業に参加できて良かったのでした。
この年のガイド会では、方針を迷ったときいつも戻る視点がありました。「この取り組みはH男や、しんどい立場の仲間にとってためになるのか?」ガイド会はこの視点で方針を検討し続け予習にたどり着いたのです。そして、彼女に私の借りものの言葉がリアルさを感じさせたのでしょう。
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この四月から学校が大きく変わりはじめます。これまでの職場の論議はどのようなものだったでしょうか。たいした論議もなく管理職や教務の準備した教育課程が進行しているところも多いようです。でも、今からでも遅くはない、しばらく試行錯誤するはずです。今回の改訂がこれまでの学校が支えきれなかった発達疎外に苦悩し、悩みもがく子どもたちにとって、どうなのかを問い抜くことが必要なのだと思います。
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