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- 教育「改革」一年目の総括を!
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- 90年代の実践はどのような地平を開いたか
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今月のメッセージ
教育「改革」一年目の総括を!
指名全国委員 木 村 勝 明
数年前に、二ヶ月間の手術・入院を経験した。クラスや学校のことが気になって仕方がなかったが、なにせ足が動かないのでどうしようもなかった。
入院してみると、病院の中というのは、実にゆっくりと時間が流れていくのがわかった。これまで、エレベーターに乗ると、すぐに「閉」のボタンを押して、目的の階に移動する私であったが、病院では「開」を押したまま、エレベーターの外を見回し、乗ろうとして近づいてくる人はいないかと、常に注意するようになった。
入院当初は、すでに病室にいた人たちが私にいろいろと声をかけてくれた。どれもが共感的な言葉ばかりだった。やがて、私も病室の先住民となり、あとから入院してくる人たちに同じことをしようと努めた。
「モウレツ社員」として、これまで生きてきたという人が私に語った。「入院当初は、あせった。こんなところでこんなことをしていていいのかと。でも、今は、これが普通なんだ。いや、この病院の中にこそ人間らしさがあるのだ」と。私も同感だった。私たち教師も、多忙化政策の中で、大切なものを見失ってはいけないと思った。
私の診察や検査には、病院の整形外科医全員が立ち会ってくれた。そして、手術の方針を検討してくれた。ガラス越しに、医師たちが討論している様子も見て取れた。初めて手術を経験する私にとって、とても心強いことだった。そしてこのことは、事件が起こったとき、その処理だけで終わらせるのではなく、「なぜ、そういう事件を起こしたのか。この子の背後に何があるのか」を討論してきた私たちと共通するものがあると思った。
看護士の方々にもお世話になった。それぞれの方が、それぞれの持ち味を生かして、私たち患者に接してくれていた。また、看護士の方々は、患者の病状によって、明らかにその対応を変えていた。私の場合でも、手術直後は懇切丁寧に、やがて、自分でできることは自分でさせるようにし、さらに、病室内で、より症状の重い患者の手助けをさせるようにとしむけていった。見事な集団づくりだと感じたことを、今でも覚えている。
ところで、新指導要領と五日制が実施され、「超」がつくほど忙しかった二〇〇二年度もまもなく終わろうとしている。私のまわりでも、この一年間、いろいろな声が聞こえてきた。
「もともと五日半でやっていた仕事を、五日でやるわけだから、忙しくなるのは当たり前。さらに、必修教科・選択教科・総合的な学習の時間の教材づくり。通勤車両の校内乗り入れ禁止で通勤時間は長くなり、教室には冷房設備もない。もう息も絶え絶え」「それに加えて、週三〇時間の授業をやれという教育委員会の指示で、毎日六時間授業している市も出てきている。そんなところで、子どもたちとの対話、クラブ活動、職員会議などの各種会議での現状分析をふまえた方針討議など、勤務時間内でできるわけがない。ばかげている」「総合的な学習の時間を中心としたゆとりなどといいながら、学力低下のキャンペーンをはり、一〇〇マス計算がもてはやされる。こんなことに振り回されることなく、この地域・この学校・目の前の子どもをもとにした学力像を考え、カリキュラムをくんでいくことが重要だ」
「忙」という字は、「心を亡ぼす」と書く。教師も子どもも心を亡ぼされないようにしたいものである。年度末総括にあたって、どのことなら合意を得られそうなのか、どのことなら改革できそうなのか、職場の「一員」としてではなく、「形成者」として、じっくりと論議していこう。
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