- 〈対話〉をキーワードにした国語科授業の改革
- はじめに
- 〈対話〉をキーワードとする意義
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- T〈対話〉とは何か
- 教室における学びと対話
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- 「対話」の質が学びの質を決める
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- 国語科教育と〈対話〉
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- 〈対話〉における「他者」
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- 〈対話〉をキーワードにした授業改革の視点
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- U〈対話〉をキーワードにした国語科授業
- 「話すこと・聞くこと」と〈対話〉
- 理論/「話すこと・聞くこと」と対話
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- 実践/「話すこと・聞くこと」における取り立て指導の価値*1年「きいてください、わたしの○○」
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- 実践/よく知らない人と話すって楽しいな*1年「しつもん名人になろう 二年生になったら」
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- 実践/〈対話〉を通して練り上げる、人を引きつける話し方*3年「『どっちのBOOKショー』をしよう」
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- 実践/一人ひとりのこだわりを生かして取り組む表現の指導*小学複式3・4年「おらが村のお祭りだ」
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- 解説・新視点/話し合う力を培う単元開発の視点
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- 「書くこと」と〈対話〉
- 理論/「書くこと」と〈対話〉〜協働〈コラボレーション〉で書く〜
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- 実践/〈対話〉によって書く内容を明確にし、書くことで交流する*1年「お手がみ まきものを つくろう」
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- 実践/書きたい、伝えたい魅力的なテーマと展開を*3年「分かりやすく伝えよう『昔の遊びせつめい書』」
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- 実践/作文学習に仲間との〈対話〉を*6年「効果を確かめながら『保護者向け《六の二運動会通信》を書こう』」
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- 実践/〈対話〉を生み出す「詩」の創作*中学3年「詩をつくりましょう」他
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- 解説・新視点/「書くこと」と〈対話〉
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- 「読むこと」と〈対話〉(文学的文章)
- 理論/「読むこと」と対話
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- 実践/書くことで読みをつくり対話へつなぐ*4年「つぶやき集をつくろう『ごんぎつね』」
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- 実践/つぶやきの選択と一貫した話題で*3年「メッセージノートを作ろう『ちいちゃんのかげおくり』」
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- 実践/「批評読み」で〈対話〉を活性化させる*5年「私の読んだ『猟師物語』の猟師を紹介しよう!」
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- 実践/学習材別グループで読み、〈対話〉の深化を*3年「ライオンの物語を読もう『ガオーッ』他」
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- 解説・新視点/文学における対話学習のバリエーション
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- 「読むこと」と〈対話〉(説明的文章)
- 理論/説明的文章における〈対話〉の基点〜〈説得的表現〉への反応力育成〜
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- 実践/複数の視点でテーマについて話し合う*6年「外国人と理解し合うためには『異文化の中の日本人』他」
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- 実践/複数の視点で〈対話〉の場面を仕組み、読みの活性化を*4年「『体を守る仕組み紙芝居』を作ろう!」
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- 実践/筆者との〈対話〉から、学習者相互の〈対話〉へ*5年「納得しながら読もう『なぜ、おばけは夜に出る』」
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- 実践/〈対話〉で増える読みの視点*4年「筆者の工夫をとらえよう『何を覚えているか』」
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- 解説・新視点/学習者のことばと生活を拓く〈対話〉
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- 対話能力を育てる実践的方略
- 理論/「基調提案―検討方式」による「語り合い」としての「話し合い活動」
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- 実践/足もとを見つめて対話能力を育てる*3年「説得してみよう『○○が欲しい、○○が必要です』」
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- 実践/〈対話〉能力の育つ場づくり*5年「想像物語を書こう『(ベンチの一日)より』」
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- 解説・新視点/優れた実践的方略としての二つの実践
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- V 文献解題
- 〈対話〉研究への招待
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- おわりに
- 国語教育探究の会・中国支部のこれから
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- 執筆者紹介
はじめに〈対話〉をキーワードとする意義
長崎伸仁(ながさき・のぶひと)
山口大学教育学部
二十一世紀初頭、国連は、「文明間の対話の国際年」と定めた。「対話」を通してしか文明間の平和の実現はありえない、という確固たる信念がここにある。
しかし、二〇〇一年九月のアメリカに対するテロ攻撃以来、その対話は功を奏したとはいえず、アフガン戦争、イラク戦争等と、平和への道は険しい。
対話は、「通じ合い」を旨とするが、時として、決裂、混濁、妥協等を余儀なくされる。アフガン、イラク戦争は、対話の決裂がもたらしたものであろうが、だからといって、対話は決して無力ではない。
対話は難しい。だから、会話ではないといえる。本音と本音とのぶつかり合いだから、お互いの利害がからみ、人格や人間性によって大きく左右されることになる。
対話によって、「こと」を平和裏に収めようとすれば、当然のことながら、それなりの根回しがいる。その三要素といえるのが、目的意識(何のための対話なのか)、相手意識(だれと対話するのか)、事意識(何の事についての対話なのか)であろう。
理想は、お互いが「納得」するための対話である。しかし、現実は厳しい。現実的には、「歩み寄り」が理想に近い姿であろうか。「歩み寄り」は決して「妥協」ではない。「妥協」は、ことばの響きとしてはネガティブな「打算」的という印象が強いが、「歩み寄り」は、ポジティブな「受容」の精神が働いていると私はみる。
日本的にも国際的にも、今、「対話」はキーワードである。将来の日本を担い、世界を担う子どもたちである。その子どもたちに「対話力」をつけさせることが、私たち国語教師の願いである。
今回、本のタイトルを『〈対話〉をキーワードにした国語科授業の改革』としたのは、以上のような理由からである。
教育は、意図的、計画的なものである。「対話」をキーワードにした国語科の授業に取り組む以上、全員の実践を貫く対話を活性化する視点が必要である。その視点がない限り、書名に付した「改革」の二文字は、絵に描いた餅に等しいことになる。
そこで、本書の編集責任者の一人である桂聖氏に、「対話活性化の視点」を提案していただいた。国語教育探究の会・中国支部では、桂氏の提案を編集会議で論議し、それぞれの実践の核として位置づけていったのである。
詳細は、桂氏の論文を参照していただくとして、ここでは、「対話」活性化の視点のみを記す。
@ 〈対話〉の共同性……対話目的の共有
A 〈対話〉の異質性……異質な他者の受容・吟味
B 〈対話〉の準備性……既有知識や対話方略などのレディネス
本書は、以下の通り三部構成とした。
T 〈対話〉とは何か(理論編)
U 〈対話〉をキーワードにした国語科授業(理論・実践編)
V 〈対話〉研究への招待―文献解題―
第T部では、「対話とは何か」について、国語教育探究の会代表の中洌正堯氏と視点提案者の桂聖氏のほかに、佐藤学氏、奈須正裕氏、そして森美智代氏に、対話の本質に迫っていただいた。
また、第U部では、学習指導要領の国語領域ごとに対話についての理論と実践を掲載した。理論を執筆していただいたのは、それぞれの領域での第一人者の先生方である。
「話すこと・聞くこと」では山元悦子氏、「書くこと」では牧戸章氏、「読むこと」の文学的文章では山元隆春氏、そして説明的文章では植山俊宏氏の方々である。
第U部の最後に、「対話能力を育てる実践的方略」としての理論を藤井千春氏に執筆していただいた。
以上のように本書では、国語教育探究の会以外の先生方にも執筆をお願いした。いずれの先生方も私どもの主旨をおふくみいただき快く執筆に応じてくださった。心より感謝申し上げる次第である。
第V部の文献解題及び文献一覧は、対話研究を進める上での一助になればとの思いで掲載したものである。
最後に、今回の私たちの企画を快くお受け頂いた明治図書の間瀬季夫編集長と松本幸子氏に心からお礼を申し上げる次第である。
二〇〇三年一〇月
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- 明治図書