- 特集 「二次的な問題」を防ごう!
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- 提言
- 治療的接近を基本に
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- 事例
- 発達障害がある不登校傾向生徒の進路指導―通級制の特別支援学級における支援―
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- 大きな夢に向かって羽ばたけ―その子の苦手なことを認め,得意な分野を伸ばしていくこと―
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- 二次的な問題 私の出会った生徒達―環境によって子どもは変わることができる―
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- 不登校と特別支援教育
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- 「告知」から「カミングアウト」へ―「僕は自分がしてきた体験に誇りを持ちたい」を支えるために―
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- 非行と発達障害―二次的な問題としての非行を防ぐ―
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- 幼児期における「二次的な問題」の予兆と対応
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- 学校でできることを大事にしよう
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- 事例についての解説とコメント
- 「二次的な問題」を防ごう
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- Essay
- 良い絆を築くことの大切さ
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- 子どものページ
- 「瑞烟生福寿」
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- 親の会ニュース (第23回)
- 発達障害のある本人や保護者は何に困っているのか? (1)保護者編
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- 医療との連携 (第23回)
- 上手な連携を(3)
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- ~医療的診断について~
- 実践の小箱/臨床学校現場から (第22回)
- 附属学校の情緒通級指導教室の取り組みから
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- 情報最前線/行政や海外の動向は (第23回)
- 発達障害のある子どもの早期からの総合的支援システム
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- 特別な教育的ニーズとインクルージョン (第3回)
- インクルージョンと小さな政府論(1)
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- 教室で使えるやさしい行動分析2 (第3回)
- プロンプトによる行動マネージメント
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- 巡回相談員から先生へ (第7回)
- 一緒に育てる
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- 発達障害の子がいる学級経営のコツ (第7回)
- 担任が中心になる学級経営
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- 一度は手にしたい本
- 『小児のメディカル・ケア・シリーズ LD-学習障害 治療教育的アプローチ』/『自閉症とその関連症候群の子どもたち』
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- 編集後記
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特集について
「二次的な問題」を防ごう!
東京学芸大学教授/松村 茂治
「不登校児の中にLDの特徴のある子どもが,かなりの割合でいるようだ」,「ADHDと診断されていた子どもの引き起こす騒ぎがきっかけになって,学級が崩壊していった」,「深刻な事件を起こした子どもが,以前にアスペルガー障害と診断されていた」等の報道に接する機会が多くなってきたように思います。一見すると,LD・ADHD等のいわゆる発達障害と上記のような問題行動が,直接的に結びついているかのような印象を与えますが,これらの問題行動は,発達障害とは直接結びつかない,「二次的問題」と呼ばれます。
二次的問題について,日本LD学会から刊行されている「LD・ADHD等関連用語集」では,以下のように説明しています(用語集では「二次的障害」と表記しています)。
「障害に由来する本来の症状が原因で環境との不適応を起こしたために生じた様々な症状を,二次的障害という。(中略)与えられた環境の中で無理解や誤解を受け,叱責や失敗経験が度重なることで自尊心が低下し,二次的障害を起こす。(中略)これらの二次的障害は,理解のある環境で適切な教育的支援を受けられるようにすれば,予防や改善が可能である(後略)」
「二次的問題」というのは,障害そのものとは,一応分けて考えるべきものです。つまり,「二次的問題」は,ある障害のもたらす心理・行動的な特徴が,適切に対応されなかったり,周囲から誤解されたり,あるいは,環境にうまく適合(フィット)しなかったりすることによって,引き起こされている問題ということができます。
「二次的問題」は,障害そのものとは分けて扱うべきですが,全く関連がないわけではありません。ある障害に特徴的な行動傾向が,ある種の問題行動に発展しやすいということはありうることです。
障害と二次的問題を短絡的に結びつけることが,この特集の目的ではありません。学校教育相談のなかで,今まで発達障害とは別個の,そして相互に無関係なものとして扱われてきた問題を,発達障害といった観点から捉え直すことによって,問題のそれまで見えていなかった新しい側面に気づいたり,問題相互の関連について理解や予測が可能になったり,これまでとは異なったアプローチ・支援を提供できたりするのではないかと考えたのです。発達障害に深く関わってきた方たちから,学校教育相談への新しい視点・切り口を提供していただこうと考え,この特集を組んでみました。
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