- 特集 ADHDの特性に応じた支援を考える
- 特集について
- /
- 提言
- 生涯発達の視点に立った支援を
- /
- 概論
- 学校におけるADHDの特徴
- /
- 二次障害と薬物治療
- /
- 衝動性が高い子どもへのアンガーマネージメントの進め方
- /
- ペアレントトレーニング―本人理解と成長のために―
- /
- 事例
- 通常の学級における指導
- 反抗挑戦性障害を伴ったAD/HD児に対する支援
- /
- 通級における指導
- 福知山市通級指導教室担当者連携により見えてきたそれぞれの発達段階に必要な通級指導とその役割
- /・・・
- 特別支援学級(情緒)における指導
- 攻撃行動を示す児童に対するチーム支援
- /
- 特別支援学校(高等養護学校)における指導
- 高等養護学校が抱える課題と自己コントロール力を養う取り組み
- /
- 【特別寄稿】ノースカロライナにおける自閉症幼児の教育
- /
- Essay
- 教員のキャリアアップと資格の取得
- /
- 子どものページ
- 「海辺に集まる鳥たち」
- /
- 親の会ニュース (第26回)
- 福島AD/HDの会「とーます!」/きなっせ!九州
- /
- 医療との連携 (第26回)
- 真の連携を目指して(2)
- /
- 〜関わりの連続性,守秘義務〜
- 実践の小箱/臨床学校現場から (第25回)
- 子ども自身の伸びる力を信じて
- /
- 情報最前線/行政や海外の動向は (第26回)
- 情緒障害特別支援学級の現状と課題
- /
- 〜小・中学校における自閉症・情緒障害等の児童生徒の実態把握と教育的支援に関する研究から〜
- 特別な教育的ニーズとインクルージョン (第6回)
- 通級による指導の歩みと学校現場での新たな取り組み
- /
- 子ども・親・教師を取り巻く精神衛生 (第2回)
- 子どものうつ病
- /
- アメリカのIEP事情 (第2回)
- 子どもの現状把握
- /
- 「学習につまずきのある子」を引きつける教科指導のコツ (第2回)
- 6年生の歴史の授業展開
- /・
- 一度は手にしたい本
- 『個別の指導計画作成ハンドブック―LD等,学習のつまずきへのハイクオリティーな支援―』/『読み書き障害(ディスレクシア)のすべて』
- /
- 編集後記
- /
特集について
ADHDの特性に応じた支援を考える
(独)国立特別支援教育総合研究所総括研究員/笹森 洋樹
注意欠陥多動性障害(以下ADHD)について,文部科学省では,平成15年3月の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」において,「ADHDとは,年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力,及び/又は衝動性,多動性を特徴とする行動の障害で,社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また,7歳以前に現れ,その状態が継続し,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。」と定義している。
ADHDの症状は,LD(学習障害)やアスペルガー障害,軽度の知的障害などと合併することがあり,また被虐待の二次障害として現れることもある。ADHDの子どもの特性は,能力的な遅れや偏りが起因するものなのか,特別な支援が必要なのかどうかを判断することがとても難しい面がある。「わがまま」や「自分勝手」「乱暴」「集中力がない」等と受け止められがちで,適切な対応がなされないままにつまずきや困難さが積み重なっていくと,不全感から自信や意欲はなくなり,自己評価も低くなり,二次障害としての不適応行動につながってしまう場合がとても多い。
ADHDといってもその状態像は一人一人異なっている。子どもの状態をADHDの定義や診断基準にあてはめて捉えるのではなく,個々の支援ニーズをきちんと把握することが大切である。基本的な特徴を理解した上で,子どもの実態をどう捉え,具体的にどう支援していくかについて考えていく必要がある。障害特性のみに注目することの危険性もある。子どもは,置かれている環境や周りのかかわりの影響を常に受けている。ADHDの子どもは特にその影響を受けやすい。つまずきや困難さの原因や背景には,障害特性だけでなく,環境やかかわりの影響も大きいということを忘れないようにしたい。
そこで,今回の特集は「ADHDの特性に応じた支援を考える」とした。ADHDへの支援は,本人にセルフコントロールの力をつけていく指導とともに,周りのかかわりも含めて本人が安心して生活できる環境調整をしていくことがとても重要であるといわれている。ADHDはLDとともに,平成18年度から新たに通級による指導の対象にもなり,全国で専門的な指導の実践が始まっている。本号では,改めてADHDの子どもの特性を整理するとともに,特性に応じた支援をどう工夫していけばよいのか考えてみたい。
-
- 明治図書