- 特集 「通級指導教室」で子どものニーズに応える指導
- 特集について
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- 提言
- 「通級による指導」のスタンダーズと評価システムの構築がそろそろ必要になってきた
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- 事例
- 取り出し指導
- 「繋ぐ」「繋がる」通級指導
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- 保護者,担任,通級担任の連携と契約の大切さ
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- 中学校卒業後のことを考慮した通級指導教室のあり方について
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- 心のよりどころとしての通級指導教室
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- 必要なときに必要な支援を受けられる場として
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- 入り込み指導
- 通級担当が通常学級の担任と協働した指導事例
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- 巡回型指導
- 町民が心を合わせる特別支援教育の創造
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- 【特別寄稿】学習を科学的に理解し教育に活かす
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- 共に学ぶ教育
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- 子どものページ
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- 親の会ニュース (第31回)
- LD親の会「けやき」/大阪LD・軽度発達障害親の会「翼」
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- 医療との連携 (第31回)
- こども病院だより(3)
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- 〜注意欠陥/多動性障害への医療的支援〜
- 実践の小箱/臨床学校現場から (第30回)
- School for All
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- 〜みんなが資源,みんなで支援〜
- 情報最前線/行政や海外の動向は (第31回)
- ICF(国際生活機能分類)について
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- 学校カウンセラーから見た発達障害の子どもたち (第3回)
- 暴力を抑えることができなかった中学生への対応
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- 医療から見た発達障害の子どもたち (第3回)
- 心身症外来の子どもたち
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- 〜伸びゆく子どものかがやくことば〜
- わたしの教え方・自慢の教材 (第3回)
- 授業参加を支える教具を目指して
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- 〜自己解決の手立てのある教具〜
- 新しいアセスメントの動き (第3回)
- 初期アセスメントとして利用しやすいPVT-R絵画語い発達検査
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- 一度は手にしたい本
- 『図解 自分の気持ちをきちんと<伝える>技術』(平木典子著)/『発達障害当事者研究』(綾屋紗月・熊谷晋一郎著)
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- 編集後記
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特集について
「通級指導教室」で子どものニーズに応える指導
東京学芸大学名誉教授・日本LD学会理事長/上野 一彦
LDやADHDの児童生徒が「通級による指導」(一般的には通級指導教室と呼ばれている)の正式対象となって4年目を迎えた。高機能自閉症やアスペルガー症候群だけでなく,広汎性発達障害(PDD)の診断名をもつ子どもやADHDなど,行動上の困難を抱えた子どもたちが目立ってきている。こうした子どもたちは,その子なりの学びの遅れや困難を抱えやすく,いわゆる「発達障害」には,学力面での指導課題が共通してあるということができる。
教育統計的には,年々,通級指導教室数も通う子どもの数も確実に増えてきてはいるが,利用しにくい,教室の数が足りない,専任の先生が少ない,いろいろな子どもがいて指導効果があがっていないなどの意見も各地から寄せられている。「通級による指導」における軽度の知的障害のある子どもの扱い,「発達障害」の特徴はないが学習面で困難を示す「スローラーナー(学習遅進児)」,さらには言語環境の問題から十分な学習成果が上がりにくい外国籍の子どもたちへの支援なども常に話題になる。
保護者の意識も大きく変わってきている。小学校低学年からの相談件数が増えているが,「特別支援をぜひ受けたいが,通常学級の中で目立たないようにお願いしたい」という声も多い。一方「支援は必要だと思うが,子どもが行きたがらない」などの声もある。
もちろん早い気づきと早期の対応は,「通級による指導」の鍵を握るが,指導形態をみれば,他校への通級が未だ過半数を占めるなか,通常学級からの「取り出し指導」だけでなく,通常学級における「配慮指導」や「入り込み指導」もある。米国では,専門教員の「入り込み指導」はコラボレーティブ・ティーム・ティーチング(CTT)と呼ばれ,保護者からもっとも支持されていると聞く。通常学級でのこうした子どもたちへの指導で大切なことは,「支援の必要な児童生徒を意識した通常学級での配慮指導は,クラス全員のわかりやすい授業につながる」ということであろう。
本号では,拡充しつつある「通級による指導」のなかで,これらさまざまな指導形態の効用と限界,通常学級と「通級指導教室」の連携,(特別支援教育)支援員による学習支援の在り方など,今後の魅力的な「通級による指導」の大きな前進のために,各地の進みつつある実践例を特集することにした。
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