教師のON/OFF仕事術

教師のON/OFF仕事術

好評3刷

インタビュー掲載中

子どもと自分のため、本当に「やるべき」こと/「やらない」こと

学校には、ビジネス書ではわからない“先生ならでは”の働き方の答えがあります。本書は、教師の本質を見失わずに、多岐にわたる日々の仕事をON(やるべきこと)とOFF(やらないこと)に区別する10の発想と、場面に応じた50の判断基準・具体策を提案します。


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ISBN:
978-4-18-300221-1
ジャンル:
教師力・仕事術
刊行:
3刷
対象:
小・中
仕様:
四六判 256頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年11月22日
[見出し

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もくじ

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まえがき
第1章 仕事のON/OFFを決める10の発想
1 生産性と時短術のワナを知る
2 「個性」を出すことのワナを知る
3 「違い」ではなく「得意」を出す
4 敵をつくらず味方をつくる
5 安心と安全を最優先にする
6 must should wantに分ける
7 mustな仕事はルーティン化する
8 shouldな仕事はつなげて合理化する
9 wantな仕事は「そうぞう」する
10 指導技術と仕事術をつなげる
第2章 場面別ON/OFF仕事術
学級経営
1 新年度準備
[ON]「安心と安全づくり」を最優先する
[OFF]「出会いの後でもできること」に時間を割かない
2 学級開き
[ON]「安心」を生み、学級の「芯」を表明する
[OFF]エネルギーを浪費しない
3 教室環境
[ON]教室環境は子どもとともにつくる
[OFF]風化するだけの掲示物は飾らない
4 学級目標
[ON]学校・学級・子どもをつなぐスローガンをつくる
[OFF]「決めて終わり」の目標ならいらない
5 朝の会・帰りの会
[ON]毎日の活動は短く焦点化する
[OFF]「見ればわかる連絡」はしない
6 当番活動と係活動
[ON]係と当番の働き方改革をする
[OFF]子どもの時間と判断力を奪う活動はしない
7 学級会
[ON]教師のいらない学級会にする
[OFF]議論と進行に口を挟まない
8 席替え
[ON]柔軟な座席配置にする
[OFF]人間関係の固定化につながる発想を捨てる
9 ほめること・叱ること
[ON]ほめる時も叱る時も具体的にする
[OFF]なんでもかんでもほめたり叱ったりしない
10 学級じまい
[ON]学級担任がかけた「魔法」を解く
[OFF]最後に「呪い」をかけない
授業づくり
11 授業準備の原則とICT活用
[ON]単元の大きな枠組みで準備する
[OFF]時間に追われた教材研究をしない
12 ワークシートづくり
[ON]「流れ」を可視化する
[OFF]思考を奪うワークシートをつくらない
13 補助資料の準備
[ON]資料で思考を支える
[OFF]学習目標から遠い内容は載せない
14 学習評価
[ON]納得と自信のために評価する
[OFF]不満と不安を招く評価はしない
15 ノート指導
[ON]表現の場としてのノートにする
[OFF]コピーとしてのノートにしない
16 ペア・グループ活動への支援
[ON]対話的な活動の大枠としての条件とコツを示す
[OFF]対話的な活動の型を強制しない
17 テスト
[ON]「王道」のテストにする
[OFF]「〜すぎる」ペーパーテストを作らない
18 宿題
[ON]子どものshouldやwantを刺激する
[OFF]一律の宿題は一切出さない
学校行事
19 学校行事への取組の原則
[ON]特活としてのねらいを共有する
[OFF]「心を一つに」を強要しない
20 運動会・体育大会
[ON]運動に親しむための準備と練習をする
[OFF]勝つための練習を強制しない
21 合唱コンクール
[ON]感動をプレゼントするための仕掛けをする
[OFF]歌が苦手な子の自尊心を奪わない
22 修学旅行・宿泊研修
[ON]関係づくりと楽しむことを重視する
[OFF]些末なルールの指導や細かな事務的作業は省く
23 行事の準備と教師の心構え
[ON]行事の達人の力を借りる
[OFF]行事のために時間を浪費しない
保護者対応
24 学級通信
[ON]担任だからできる発信をする
[OFF]誰でもできる発信はしない
25 電話対応
[ON]電話の目的を明確にする
[OFF]電話で自分と相手の時間を奪わない
26 個人懇談
[ON]双方向性を意識して協議する
[OFF]学校としての責任を放棄しない
27 授業参観・学級懇談
[ON]普段の良さを見せて困り感を共有する
[OFF]担任と保護者のハードルを上げない
28 時間外の対応
[ON]子どもの安全に関わる内容は急いで連絡する
[OFF]安全に関わらないことは急がない
担任業務
29 教室での事務的作業
[ON]コミュニケーションのきっかけになる作業をする
[OFF]後で仕事が増えるような作業をしない
30 職員室での事務的作業
[ON]自分に指示をして制限時間内に作業する
[OFF]時間の読めない作業を先にしない
31 道徳の評価、総合の評価
[ON]子どもがニヤリとする評価をする
[OFF]評価をコピペしない
32 所見
[ON]にこりとさせる所見にする
[OFF]所見で指導しようとしない
33 文書・ワークシート作成
[ON]希望する活動をテンプレート化する
[OFF]必要な文書を一から作らない
34 指導要録
[ON]担任としての一年間の指導を要約する
[OFF]事務的な仕事として書かない
分掌業務
35 校務分掌の業務の原則
[ON]授業力と学級経営力を分掌業務に生かす
[OFF]孤軍奮闘しない
36 職員との人付き合い
[ON]職域と立場を尊重して協働する
[OFF]同僚の時間を無駄に奪わない
37 報告・連絡・相談
[ON]報連相をしやすい雰囲気づくりをする
[OFF]自己満足の報連相をしない
38 各種部会(参加者として)
[ON]やり方とあり方の両方にこだわる
[OFF]一方通行の会議にしない
39 各種部会(主任として)
[ON]グループ活動型・学級会型の部会にする
[OFF]ミニ職員会議にしない
40 職員会議への提案
[ON]提案を一つだけ変える
[OFF]非生産的な提案や話し合いをしない
41 担当業務の実施の前後
[ON]主体的な学びの視点を取り入れて業務を進める
[OFF]受け身な姿勢の業務はしない
42 管理職への提出文書
[ON]過去の遺産を有効活用する
[OFF]管理職の状況や役割を考えずに書類を出さない
部活動
43 部活の原則
[ON]部員と学校にとって持続可能な部活動にする
[OFF]負担を強いる活動はしない
44 練習量
[ON]引き算と逆算の発想で練習をする
[OFF]練習の足し算はしない
45 技術指導
[ON]問うことを通して指導する
[OFF]顧問一人で一方的に教える指導はしない
研究・研修
46 個人研究の原則
[ON]「なぜ」と「どのように」を往還する
[OFF]子ども不在の研究をしない
47 教材研究
[ON]「好き」を研究に生かす
[OFF]調べ学習の悪い例のような研究をしない
48 生徒指導
[ON]ケーススタディをシミュレーションする
[OFF]テクニックに走らない
49 校内研修
[ON]ゴールイメージを共有する
[OFF]負担を増す研修を積極的に提案しない
50 オンライン研修
[ON]主体的に参加できる研修に申し込む
[OFF]受け身の姿勢での情報収集はしない
あとがき

まえがき

教師だからできる仕事術を模索する

 本書は「教師だからできる仕事術」を紹介するものです。「教師でもできる仕事術」や「教師もした方がよい仕事術」ではありません。

 昨今、教員の働き方に関する本が毎月のように出版されています。大型書店の教育書コーナーに行くと、教師の仕事術に関する本が数多く並んでいます。また、SNSでは教員系のアカウントで「生産性をアップして定時退勤」といったテーマで発信されている方を目にします。ビジネスの世界の仕事術のノウハウを学校に生かすという姿勢がうかがえます。仕事の効率化や生産性の向上は大切ですが、ビジネスのノウハウを生かすという点については、私の考えとは少し違います。

 私は、教師の働き方のヒントは教室の中にあると考えます。教育技術を仕事術に生かすという発想です。教師として子どもに向けて発揮する理念と技術を、教員としての自分自身の働き方に応用します。本書の内容がテクニックの紹介だけに終わらないように、仕事観を含んだ仕事術として、仕事に対する私の考え方を示すようにしました。

 仕事術を磨くことで、自分の働き方をマネジメントできるようになります。マネジメントというと、管理・統制という印象を受けるかもしれません。しかし、マネジメントには集団として成果を上げるための方法を開発するという意味があります。手持ちの「武器」を使って、最大限の効果を生むために知恵を働かせて工夫することがマネジメントです。

 また、マネジメントはビジネス用語ですが、学校教育でもカリキュラム・マネジメントが重視されています。私たち教員は、普段は学級経営や教科経営というマネジメントを行っています。学級経営や教科経営を行うように、自分の仕事をマネジメントできるようにすることが大切だと考えます。


学校の働き方にも働き方改革にも課題がある

 仕事術に教育技術を生かすという考えの根底には、学校の働き方における私の問題意識があります。現状の働き方はもちろん、いわゆる「働き方改革」の名の下で進められる変化に関する問題意識も含みます。それは、問いの形で表すと次のようになります。


  ・自分の幸せにつながるような働き方か

  ・自分だけではなく、家族、学校の子どもたちや同僚が幸せになるような働き方か

  ・教育書やSNSで発信される内容を理想だと思い込んで鵜呑みにしていないか

  ・自分の仕事の優先順位は、学校で同意を得られているか

  ・未来の自分も納得できるような働き方をしているか


 働き方改革の方向性を間違えないためにはこれらの問いの答えを考えることが大切です。読者の方々は、これらの問いに対してどのように考えるでしょうか。

 学校現場の働き方改革が声高に叫ばれる状況の中ですが、教員の仕事を続けることに不安や悩みを抱えている先生も、少なくないかもしれません。しかし、多忙な学校現場では、仕事術について学ぶ機会が限られます。先輩の技を盗む余裕はないでしょう。

 そのせいか、教員の仕事術に関わってはビジネス書で紹介されるようなテクニックを使う例がよくみられます。しかし、ビジネス書のノウハウが正解とは限りません。学校は、良くも悪くも特殊です。学校に合った仕事術の概念や方法について考えるべきです。


みんなが幸せになる仕事術を探究する

 本書で紹介する仕事術は、指導や支援などの教師としての技術を、教員としての業務全般に応用するという考えに基づいています。具体的なポイントは、五点あります。

 一点目が、自分なりの基準で仕事を振り分けることです。仕事を「しなければいけないこと(必須)」「すべきこと(推奨)」「したいこと(希望)」の三つに分けて考えます。

 二点目に、学校の仕事には削減(OFF)できることがたくさんあります。もし、OFFすべき仕事を削減できないのであれば、取り組み方を変えましょう。仕事を素早くこなしたり、最低限度の出来で抑えたりするのも一つの手です。

 三点目に、OFFすべき仕事がある一方で、教師として譲れない仕事があります。教師としての本質的な仕事や、個人としてこだわりたい仕事などです。信念をもって貫くべきことには、心のスイッチをONにして全力で取り組みましょう。

 四点目に、本書ではONとOFFの判断基準を提案します。「なぜONする仕事と考えるのか」について説明することで、時短術のようなテクニックを紹介するだけで終わらないように心がけました。教科における「見方・考え方」のように、仕事に対する見方・考え方(仕事について考える時の視点や方法)を磨くことができるようにします。

 最後の五点目は、子ども不在の仕事術にしないことです。「子どものために」を魔法の言葉にして仕事を増やすことには反対です。しかし、学校は子どもの幸せのために存在します。そこで、私は「先生のためにも子どものためにもなること」を大切にすべきだと考えます。教員としての充実感を高めつつ、子どもたちの満足感も損なわないような働き方があるはずです。幸せの形は人それぞれ違いますが、みんなが幸せになるような仕事のあり方とやり方を一緒に探究しましょう。


個別最適で協働的な働き方を実現する

 本書を読む際に留意してほしいことがあります。本書の内容を鵜呑みにしないでください。なぜなら、私が接する子どもたちと、読者の方が接する子どもたちは違うからです。また、得意とする教育技術は人によって異なるからです。本書の内容から「面白い」と感じる部分を選び、職場や目の前の子どもに合わせることを勧めます。あるいは、「自分はそう思わない」という内容を見つけて批判的に活用することも期待しています。

 学級経営では、子どもたちの実態に合わせて方針や方法を修正します。教科指導では、同じ教材でも学級の実態によって展開を変えます。同様に、仕事もアレンジが大切です。

 私は、本書の内容が先生方の仕事術のスタンダード(標準)になるのではなく、仕事術のベース(基準)になることを願っています。例えば、学習評価の一つにルーブリックがありますが、ルーブリックの基準は複数の教員で相談しながら決めるのが一般的です。客観性が増すからです。仕事のONとOFFの基準についても、本書をたたき台としてアレンジを加えたり職場の同僚と相談したりすることで、納得できる仕事が増えるはずです。

 二〇二一年一月の中教審答申「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して」では、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させることが示されました。学校には個別最適な学びに加えて、「個別最適な働き方」が必要です。そして、一人一人が最適な働き方をすることでチームとしてのパフォーマンスが高まり、「協働的な働き方」ができるようになるはずです。先生方が最適な働き方を模索する上で、本書で紹介するON/OFFの仕事術が役に立ち、学校に関わる人たちすべての幸せにつながることを願っています。


  二〇二一年十一月   /川端 裕介

著者紹介

川端 裕介(かわばた ゆうすけ)著書を検索»

現在、北海道函館市立亀田中学校に主幹教諭として勤務。

1981年札幌市生まれ。北海道教育大学札幌校大学院教育学研究科修了(教育学修士)。函館市中学校社会科教育研究会研究部長。NIEアドバイザー。マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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