著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
新外国語活動教材“Hi,friends!”はこう指導しよう!
大阪樟蔭女子大学教授菅 正隆
2012/4/6 掲載

菅 正隆かん まさたか

大阪樟蔭女子大学教授
1958年岩手県北上市生まれ。大阪外国語大学卒業後、大阪府立高等学校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て、2009年4月より現職。
編著書に、『成功する小学校英語シリーズ1 授業から評価まで使える! 学級担任のための「英語ノート」指導案70』『同2 効果的な外国語活動につながる! 英語活動・国際理解の授業プラン』『同3 外国語活動をもっと楽しく知的にする! 英語ゲーム&教材アイデア60』『同4 指導要録記入例&通知表文例が満載! 外国語活動評価づくり完全ガイドブック』などがある。

―今年度から「英語ノート」にかわり、新教材“Hi,friends!”が、各学校に配布されました。「英語ノート」と“Hi,friends!”で変わらなかった部分、改訂された部分について教えてください。

 変わらなかった部分としては、単元(Lesson)の内容や取り扱う表現(文)がほぼ同じだということです。5年生で「あいさつ」から始まり、6年生の終わりに「将来の夢を語る」ところまで、流れとしては大きく異なってはいません。しかし、アルファベットの大文字については、「英語ノート」では、「英語ノート2」のLesson1、つまり6年生の初めの単元で扱っていたものが、“Hi,friends!”では、“Hi,friends!1”のLesson6、つまり5年生の2学期に取り扱うことになっています。これには、いくつかの問題点があると思います。
 
 1点目は、現6年生で、昨年度、「英語ノート1」を使い、今年、“Hi,friends!2”を使う児童にとっては、大文字を学ばないまま、小文字の学習が行われることになります。いわゆる移行期と考えれば、指導者が十分なケアをする必要があります。また、大文字と小文字の学習に間隔が空きますので、ここでも、小文字を学習する際には、十分な復習など、配慮が必要になります。

 また、本書でも明記しましたように、「英語ノート」に比べ、“Hi,friends!”はページ数が少なく、活動やリスニング等の絶対数が少ないために、授業を構成する際には、指導者が独自に様々な工夫やアイデアを授業に取り入れていかなければなりません。その意味では、本書(『外国語活動を徹底サポート!“Hi,friends!”指導案&評価作りパーフェクトガイド』)は指導者にとって優しい本となっています。

―本書は“Hi,friends!”の指導や評価方法をわかりやすく紹介したガイドブックになっていますが、文部科学省の指導案との違いはどのようなところでしょうか?

 「英語ノート」の際には、懇切丁寧な「英語ノート・指導資料」が作成され、各学校に配布されました。これは、指導者が指導の際に悩まないよう、細心の注意を払って、誰でもが指導者として自立できるように作成されたものでした。今回の“Hi,friends!”の指導編は、最低限のことに止めており、ネット配信の指導案も、より簡略化されたものが掲載されています。そこで、本書の指導案は、簡略化された部分を補完し、前回の「英語ノート・指導資料」に匹敵するように、指導者の方々に親切なものとなるように作成しました。いわば、「英語ノート・指導資料」に代わる、“Hi,friends!・指導資料”としてお使いいただければと考えています。

―本書にはCD−ROMが付録としてついていますが、これはどのように活用することができますか?

 今後、各学校で授業案等を作成する際に、CD-ROMにある基本的なフォーマットや授業構成の資料等を下敷きとして、各先生方が独自のアイデアを上書きしながら、それぞれの授業案等を作成いただけたらと思っています。また、振り返りカードや評価補助簿も収録していますので、それぞれ、先生方のカラーに染めて活用していただければと思っています。Wordと一太郎の2種類のデータが入っていますので、使いやすい方をお使いいただき、無理なく効率的に、ご活用いただければと思います。

―教える教材が変わったことによって、現場の先生方に求められているのはどのようなことだと思いますか?

 最初にも述べましたが、“Hi,friends!”は「英語ノート」に比べると、量的に少なくなっていますので、指導者が独自に工夫したコミュニケーション活動を取り入れることが必要になってきます。また、到達目標(活動)に至るまでには、何度も音に触れたり、表現に慣れさせたりする必要も出てきます。その際に、様々な活動やリスニングが豊富な「英語ノート」の一部を利用するなどして、到達までのプロセスを、十二分に工夫することが大切になってきます。

―全国で外国語活動を教える先生方に一言メッセージをお願いします!

 文部科学省から配布されるテキストは変わったとしても、理念や目標は全く変わっていません。あくまでも「コミュニケーション能力の素地を養う」ことに何ら変わりはないのです。“Hi,friends!”は「英語ノート」に比べて新出語彙数が多かったり、本文に英文が表記されていたりもしますが、驚くことはありません。定着ではなく、慣れ親しませることがポイントなのです。あまりテキストに捕らわれることなく、先生方の独創性で、子どもたちが英語に抵抗感を持たないよう、先生方も自ら楽しみながら、指導を志していただければと思います。

(構成:木山)
コメントの一覧
12件あります。
    • 1
    • 佃   繁
    • 2012/4/7 7:39:55
    大学の小学校教員養成学科の学科長をしています。「英語ノート」から「Hi, friends!」に変更され、小学校外国語担当教員と今年度の授業方針について検討しているところです。3月31日に大阪樟蔭女子大学で菅先生が開かれた研修会にも、担当教員2名と参加させていただき、さっそく『“Hi, friends!”指導案&評価作りパーフェクトガイド』を購入いたしました。指導案から評価文例までわかりやすく説明されており、学生たちにもぜひ紹介したいと、担当教員も喜んでおります。どうもありがとうございました。
    • 2
    • 名無しさん
    • 2012/4/20 17:26:30
    「英語ノート」で培った理念と心情で「Hi,friends!」をこなせそうで、一安心しました。学校で購入していただいた「英語ノート」完全準拠の教材や自腹で購入した「成功する小学校英語」シリーズも引き継き使えそうでなによりです。インタビューの最後にもありますように、テキストに縛られることなく志を高く、子どもたちと一緒に学んでいきたいと思います。
    • 3
    • 店長
    • 2012/5/1 22:06:55
    「英語ノート」から、スタートした先生方と「Hi,friends!」からスタートした先生方のギャップを見事に埋めるのが本書の醍醐味だと思います。小学校外国語活動の理念を具現化するためには欠かせないアイテムだと思います。
    • 4
    • 肉うどん
    • 2012/11/8 9:26:59
    "Hi, friends"は「英語ノート」より簡略化されていて、初めて授業をする者にとっては、不親切なテキストです。しかし、本書を参考に授業を行ってみると、子どもたちも上手く乗ってきます。この一冊が、外国語活動の素人の私にはバイブルのように見えてきます。ありがとうございました。
    • 5
    • 名無しさん
    • 2013/1/15 22:37:08
    久しぶりに、菅さんを拝見しました! 元気そうで、何よりです。
    • 6
    • 名無しさん
    • 2013/2/6 18:53:46
    民主党政権下のテキスト"Hi, friends!"は、政権交代によって、やはり廃刊になるのでしょうね。
    • 7
    • マグドじゃなくてマック
    • 2013/2/7 8:17:37
    前のコメント確かかもしれませんね。文部科学省から配布された”Hi,friends!”は、指導内容も少なく、指導書も間違いだらけですから。英語ノートの時はそんなことはなかったのですが。自民党政権下の時の英語ノートに戻ったら、成功する小学校英語シリーズ1の授業から評価まで使える!学級担任のための「英語ノート」指導案70を使います。現に私は、そのシリーズ1とこの5を両方活用しながら授業を作っています。そのおかげで、様々な活動ができています。ありがとうございます。
    • 8
    • [削除]
    • 2013/2/12 10:20:38
    • 9
    • みんな元気です。
    • 2013/2/12 10:26:26
    先日、この本の著者の菅正隆先生の模範授業を、岩手県の大船渡市立盛小学校で拝見しました。震災復興の一環で、県教委の佐々木淳一先生とのティーム・ティーチングでしたが、45分、感動の連続でした。もちろん、授業の素晴らしさもさることながら、5年生の子供たちの変容ぶりに驚かされました。初めは恥ずかしがっていた子供たちも、先生方のリズムと指導で、徐々に子供たちの顔が笑顔に変わり、集中して話を聞き、積極的に英語を活用していました。最後には、教科名や表現を抵抗なく使えるようになっていたのには、驚きを越えて、不思議な感じさえしました。まだまだ、震災の復興が進まない地域ですが、授業からも子供たちを元気にさせられることができることを実感した一日でした。
    • 10
    • 本日は代休。
    • 2013/2/20 9:52:26
    、校内研修研修主任の先生が、成功する小学校英語シリーズを示しながら解説していました。研修が終わってから、主任先生に本のことを尋ねたら、外国語活動を取り入れた調査官の書かれた本だから確かだよ、と言われました。早速購入して読んでみました。これを参考に、子供たちに将来の夢を考えさせて、発表会をしたら、これがいつもの子供たち?と思うほど、素敵な発表会になりました。もっと早く、この本を知っていればと思いました。残り1ヶ月余り。この力が中学校に引き継がれればと思いました。が中学校に引き継がれればと思いました。
    • 11
    • 新任教員です。
    • 2013/4/13 15:28:28
    今年から、教員に採用されました。いきなり、5年の担任です。授業が始まって1週間。国語や算数の指導法は大学で学んだので何とかなっているのですが、外国語活動は全くの初めて。何をどうやっていいのやら、全くわからず、Hi,friends!を渡されただけ。先輩に尋ねたら、この本を紹介されました。1時間目。何とか書かれていることを理解し、やってみました。何とかうまく行きそうです。
    • 12
    • 名無しさん
    • 2013/7/5 12:22:13
    菅先生の著書はほとんど購入させてもらっています。昨日の校内研究会でも菅先生のこの指導案と評価のパターンを使って、先生方全員で学習しました。さすがに明治小学校で培われた指導書だけあって、学ぶべき点が多くありました。研修会後は、私たち独自の指導案や評価の考えを統一しましょうという考えで一致しました。大変勉強になりました。次のシリーズ本が楽しみです。
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