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【単元を貫く言語活動の展開】
「単元を貫く言語活動」という言葉を最近よく耳にします。実際にはどのように展開すればよいのか、具体的な授業例をもとに教えてください。
「単元を貫く核となる言語活動」と呼ぶことを提唱
国語科における学習活動はすべて「言語活動」と言うことができます。たくさんある言語活動の中でも〈核となる〉言語活動によって単元全体を貫いていくことが重要です。したがって、「単元を貫く核となる言語活動」と呼ぶことを提唱します。
ココがポイント!
年間指導計画的な観点(単元つなぎ・学期つなぎ・学年つなぎ)を重視する
塩江理栄子先生(赤穂市立原小学校)の「ごんぎつね」(4年)の授業実践をとおして、「単元を貫く核となる言語活動」のポイントを整理してみます。
塩江先生は、「〈ブックトーク異学年交流活動〉を年間を通して行うことによって、読みを深め、つながろう」という【年間を貫く目あて】のもと、次のような年間指導計画を設定しました。
このくらいの「粗め」の年間指導計画なら頭の中に納めておき、必要なときにはいつでも書き出すことができますね。
「ブックトーク」という言語活動が年間全体を貫いています。「単元を貫く核となる言語活動」の理想的な姿は「複数の単元を貫く核となる言語活動によって年間を貫く」ということではないでしょうか。
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ワザ1 核となる言語活動を決めるために、これまで身につけた力の振り返りとこの単元において身につけたい力の見通しを子どもとともに行う
「言語活動先にありき」ではありません。学習指導要領に示された言語活動も、教科書の手引きに示された言語活動も、「例」にすぎません。
その単元の学習にふさわしい言語活動を決めるためには、まず、子どもたちの現状把握が必要です。それが「これまで身につけた力の振り返りとこの単元において身につけたい力の見通しを子どもとともに行う」ということです。
塩江先生は、第1時間目に次のようなステップを踏んで学習活動を展開しました。板書をもとに考察を行います。
★ステップ1 昨年度の学びとつなぐ
この子どもたちは音楽劇「ごんぎつね」を3年生のときに行いました。すでに「ごんぎつね」に触れているということです。そのときの学習活動についての振り返りをしました。「昨年」と書いてあるのはそのためです。
あくまで「音楽劇」であり、「ごんぎつね」テキストをしっかり読んでいるわけではないことに注意が必要です。
★ステップ2 「1学期の物語教材の学習においてどのような力をつけたか。そして(この単元において)どんな力をつけたいか。」を子どもと一緒に考える
「読んで考えたことを話し合う」という単元の目あて(大目標)は教科書に示されたものであり、「仮の目標」です。
本時の目あては「どんな力をつけたいか(を考えよう)」です。
まず、1学期に学習した物語教材である「白いぼうし」において、どのような力を身につけたかを振り返ります。「あらすじが(を)短く(書く力)」「主人公(の心情を読み取る力)」「ブックトーク(をする力)」「引用(をする力)」などが出てきました。
次に、「一つの花」の学習においては、「四場面がいるか(を考える力)」「テーマを見つける力」「ブックトーク(として)つながりのある本(を見つける力)」「理由(を示す力)」「(表現の)工夫(をする力)」などが出されました。
そして、いよいよ、「ごんぎつね」の学習において身につけたい力を子どもたちに考えさせます。「登場人物の行動や気持ちの変化をとらえる力」「(それを)線で表す(力)」「自分と重ねる力」などが、子どもたちから提案されました。
1学期の「白いぼうし」「一つの花」の学習においても、同様のことを行ってきているため、子どもたちは常に「身につけたい力」を意識して学習に取り組みます。
★ステップ3 教材を読んで、不思議だなあと思ったこと、みんなと勉強したいことを、子どもから引き出す
これは従来の授業でも行われてきたことです。ただし、塩江実践ではここから始まっていないところがポイントです。その前に「身につけたい力」を確認しているのです。
注目すべきは、ただの初発の感想ではなく、「どこでごんの気持ちが変わったかのか」「テーマ」「場面ごとのごんの気持ち、全体で比べてみたい」など、「身につけたい力」を踏まえた、学習活動のくだきになっているところです。つまり、「身につけた力」を子どもたちが生かそうとしているのです。
ワザ2 どのような言語活動を行うのかを子どもと共有し、学習計画を子どもとともに作る
「身につけたい力」を明確にして終わりではありません。ではそれをどのような「学習計画」によって実現するのかについても、子どもと一緒に考えていきたいものです。
学習計画を子どもと共有することなく、多くの授業が行われていることでしょう。いわゆる「ブラックボックス化」された授業です。どんな学習活動を行うのか、教師が指示するまでわかりません。また、その学習活動がどういう学習活動に関係し、どう展開されるのかもわかりません。
こういう状態から脱皮することも、豊かな言語活動を展開するポイントです。
塩江先生は、第2時間目には次のようなステップを踏みました。
★ステップ1 学習計画をランダムに出させ、それを整理する
目あてとして「学習計画(をつくろう)」が提示されています。
そして、子どもたちから学習計画の要素を引き出していきます。
「つけたい力(を出す)」はすでに行いましたので、最初にきています。「意味調べ」は家庭学習としてすでに行っています。
子どもたちはさらに、「登場人物の気持ちの変化」「ブックトーク(きつね、作者つながり、二さつ)」「ごんと兵十のせいかく(内面)」「自分なりのテーマ」などを出していきました。
最後に、教師と子どもたちが話し合って、「学習計画」になるように順番を考えて番号をつけていきます。
今回の「学習計画」において、着目したいところは、「登場人物の気持ちの変化」の横に書かれている「ごん日記」と、「自分なりのテーマ」の下に書かれている「はじめのテーマ」「自分の成長」というところです。
この後のテキストの読み取りの際に、「ごん日記」という言語活動を行わせました。これは教科書(光村図書)の手引きに、【「ごん」になったつもりで、……場面ごとに日記を書きましょう。】という言語活動についてのヒントが示されており、その言語活動を使うことになったのです。
「はじめのテーマ」「自分の成長」は、「はじめに自分が考えたテーマと学習の最後に考えた自分のテーマを比べる」ことによって、読みの深まりと広がりを確認することにつながっていきます。
「学習計画」は教師が表に整え、いつでも確認できるように、大きく印字したものを教室右側の窓に貼りました。
★ステップ2 「はじめに自分が考えたテーマ」を発表させる
先に書いたように、学習の最後に考えた自分のテーマと比べるために、まず「はじめに自分が考えたテーマ」を発表させました。
板書においては「はじめの自分なりのテーマ」となっています。「自分なりのテーマ」は、この単元の〈核となる言語活動〉であるブックトークにつながる重要な要素です。
注目したいのは、「おんがえし」というテーマを出した子どもに対して、塩江先生が「そうなの?本文にそう書いてあるの?」という意味の疑問を投げかけ、ゆさぶったところです。やがて、子どもたちが本文に明示されてある「つぐない」というキーワードを見つけ出しました。
「兵十へのあやまり」「小さなやさしさ」など、「自分なりのテーマ」が引き出されています。
「単元を貫く核となる言語活動」を実現するためには、このように子どもに寄り添った丹念な「単元びらき」が必要です。3回連続特集の第2回目では、「単元の展開」のポイントについて考察していきます。お楽しみに!
学習計画を子どもたちとともに作っているところや、つないでつないで授業構成をしているところなど、本当にすごいです!次の稿が楽しみです。
学習計画を子どもたちと共に考えることは、子ども自身の学びの質を高めることにもつながると感じました。教師にとっての役割は、子どもの学習目標や学習計画の内容を定めることではなく、子どもたち自身が考えた内容を整理して明確にし、提示しなおすというところにあるのだと思いました。学習計画や目標として決まった事はきちんと可視化して、いつでも確認できる場所に貼っておくことも教師ができることの一つだと思います。授業のブラックボックス化を避けるためにもこのような展開の仕方は非常に実践的で有効だと感じました。