ハッピー先生のとっておき授業レシピ
“この教科の授業はこうでなくちゃ…”と決めてませんか? ハッピー先生がそんなあなたの授業観を大転換!
ハッピー先生の授業レシピ(11)
しかっても忘れ物はなくならない
自分自身ならどう感じるかを想像し、子どもへの接し方を考える
大阪市立千本小学校教諭金大竜
2013/4/30 掲載
  • ハッピー先生の授業レシピ
  • 指導方法・授業研究

困っている人を見たら…

 こんなとき、自分ならどのように声をかけてもらったらうれしいでしょうか? 自分自身がどう感じるか想像するだけで、子どもにどう接すればよいかもみえてくると思います。
 子どもには、「困っている人を見たら手伝ってあげましょう」と話しますよね? そんな話をしながら、一方で、子どもが「忘れ物しました」とやって来たら、痛いところに塩を塗り込むようにしかってしまうことがあります。これでは、“困っている人を見ても助けなくていいんだよ”と、言葉ではなく行動で指導しているようなものです。
 さらに、カリカリしながらしつこく指導していると、準備ができているその他の多くの子どもたちの学習時間を奪ったり、学習のムードを悪くしたりしてしまうことになります。

貸してあげる

 では、子どもが忘れ物をしたらどうすればよいのか? 答えは簡単です。貸してあげればいいんです。思いっきり親切にしてあげればいいんです。こんなところで厳しさをみせる必要はないと僕は思います。
 これは、あくまで教師を11年しかしていない僕の経験上で考えたことなので正解かどうかはわかりません。でも僕は、今貸してあげています。それも、できるだけ優しく貸してあげます。コンパスも筆箱も三角定規も下敷きもたくさんもっています。ていねいに貸し、ていねいに返してもらう。例えば、鉛筆なら削って「ありがとうございました」と言って返すよう指導します。
 甘いのではないかという声も聞こえてきそうですが、厳しくするより、ていねいに対応してあげる方が忘れ物は減ります。これは断言できます。だって、“その人のためにも忘れ物せんとこう”と思えるのはどちらでしょうか? ぜひ、だまされたと思って3か月ぐらい試してみてください。

宿題やノート忘れは…

 宿題忘れは、休み時間や放課後を使って出させます。ノート忘れは、ノートを印刷しておき、それをあげます。そして、次の日までにノートに写させます。やっていなければ、その日、休み時間に写してもらいます。
 4月、宿題は一人ひとり提出してもらいます。ていねいさややる気をチェックし、ひと言添えながら集めます。時には、お手本になる子のノートをコピーして配ることもあります。これは結構効果があります。
 また、忘れ物は自分だけでなくまわりの友だちや先生のためにもしないんだと教えます。僕は、たまに自分の教材研究ノートを子どもたちに見せ、これぐらい準備して授業に臨んでいるんだと話します。忘れ物をするとこうした準備をすべてムダにすることがある。だから、自分だけの問題ではないということを話します。…となると、授業も同じ。教師の感情でつぶしてはいけない。そういう意味でも子どもには親切に貸してあげればよいと思います。

金大竜きむ てりょん

1980年生まれ。
「日本一ハッピーな学校をつくる」ことを夢みる、教師歴11年目の大阪市小学校教員。周囲からは“ハッピー先生”と呼ばれている。
教育サークル「教育会」代表。「明日の教室」をはじめ、各地のセミナーで講師を務める。
また、「あいさつ自動販売機」など、型にとらわれない個性的な実践が注目を集め、様々なメディアで取り上げられている。
ブログ「日本一ハッピーな学校をつくろう」において、日々の学級での出来事や実践を配信中。
2012年4月に、『日本一ハッピーなクラスのつくり方』(明治図書)を刊行。

(構成:矢口)
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