- 著者インタビュー
- 算数・数学
私達の生活の周りには、算数で考えるものがたくさんあります。予想は確率ですし、どちらが上手かという比較は、差で比べる場合と、割合で比べる場合があります。広さも高さも日常生活にはたくさんあります。
しかし、算数の問題として取り上げても良いものと、そうでないものがあると思います。事故などの悲しいものも、再発防止のためには考えなければならないとは思いますが、子ども達の算数の勉強には、事件などの悪いものは取り上げたくありません。みんなが喜び、興味を引くものだけを取り上げ、算数を喜びの中で考え、算数の力をつけていく方が良いと考えています。
そこで、みんなのよく知っているものから題材を取り上げたかったので、去年のオリンピックやパラリンピック、イチロー選手の新記録、高橋尚子選手や野口みずき選手のマラソンなど、みんなの喜びがあるだろうと思うものを意識して取り上げました。日本のプロ野球のチームなどは、人によって好き嫌いがありますので、特定のチームにはしないように配慮しました。
数学の歴史は古く、一筆書きも、円の面積の公式の求め方も、台形の面積のいろいろな求め方も、特別に新しいものというわけではありませんが、7の倍数の見つけ方は、今まで他の本では見たことがありません。本を全部調べたわけではありませんから、本邦初公開と言えるかどうかはわかりませんが、私の知る限りにおいては、この本が初めてと言っても良いのではないかと思います。
子どもの質問には、その子が納得するように答えるように心掛けています。ですから、子どもの質問にはその時々で、その子が何を求めているかを知らなければなりません。以前私は4年生の子どもに「先生、三角形は四角形だね。」と言われたことがありました。「えっ?」と思ったのですが、その時に、「三角形が四角形のわけがないでしょう。」などと言ったら、その子はもう、自分の考えを話してくれないと思いましたので、何とか答えたいとは思いました。でも、少し考えたのですが、その子が何を言おうとしているのか咄嗟にはわかりませんでした。子どもの質問には、すぐに答えないわけにはいきません。その子は多少ニヤニヤしていました。そこで、ひょっとすると、と思って、「じゃあ、三角形は五角形でもあるかい?」と尋ねてみました。するとその子は、「うん。」とニコニコしながら答えてくれました。
わかりました、その子の考えていることが。
その子は、1つの辺の途中に180°の頂点を考えたのです。1つの頂点の角が180°なら、三角形ABCは四角形ABCDと見られるではないかと言おうとしていることがわかりました。
そこで私は「君、凄いじゃない、素晴らしいことを考えたね。でもそうすると、何角形か言えなくなるから、180°の頂点は無しにしようね。」と言うと、「うん、いいよ。」と言ってくれました。その子はその後、数学が得意になりました。
子どもの質問には子どもの質問の意図と子どもの数学的知識の程度や個性を考えずには適切な解答は与えられません。
「どうして算数を勉強するの?」と尋ねられた時には、一般的には、「君が生活を便利にするのに役立つためなのですよ。」というようなことを言うのですが、その言い方は、質問した子どもの疑問の程度や、どの程度の数学的な知識を持っているか、その子の性格によっても異なり、その子に合わせた答え方をしています。
何故算数の勉強をするか、勉強とは何かについては、本書3ページからの「はじめに」に私の考えを書きました。
中学年版は今年の秋ぐらいではないかと思っています。