- 著者インタビュー
- 国語
今、教室には、発達のアンバランスな生徒、生活に困窮している生徒、民族や文化の違う生徒、強いアレルギーのある生徒などなど、とにかく多種多様な人たちがいます。文化や価値観が違う人たちがたくさん集まって教室が構成されているわけです。でもこれって、大なり小なり日本じゅうに起こっている現象ですよね? そこでは、従来の均質で一様な価値観をみんなで「共有」するというやり方がうまくいかなくなっているのです。異質なもの同士が、時には対立を恐れずに「対話」していくことが新しい価値の創造のために重要です。でも、「対話」は繰り返し体験しなければ力になりません。国語の授業はもとより、学級経営の様々な場面で、日常的に「対話」のある実践が必要になるわけです。その考え方と方法とを示したのが、本書です。
一番大切にしていることですか?(笑) 昔は「楽しさ」と言っていました。今は、東北福祉大学の上條晴夫さんの言葉をお借りすると学び手の「学びやすさ」を一番大切にしたいということになります。教師が一様な価値観で染めようとしたり、「集団掌握」を優先したりする「教えやすさ」優先を、みんなで抜け出したいですね。学び手一人ひとりが自分にあった「学び方」や「学ぶ場」を「選択」というのが理想です。「合法的立ち歩き」は、生徒が「立ち歩いている」様子を観察する中から生まれました(笑)。
うーん、教科書の中身を教える事も大切で、それを合理的な方法で行っていくための学びも必要がないとは思いません。でも、結局学校は人と向き合っていく場所だから、「これで全て解決」なんていうものがあるわけがない。集団に合理的に教えることを優先するあまり、一人ひとりの生徒と関わり、そこから授業を構想していくという基本を、一番大切な時期に学んでいないとしたら厳しいなあと思います。若手の成長を待てない職場、若手に寛容でない地域・保護者、いろんな問題が重なっていると思いますけれど。
明日になったら違う絵本の名前を上げると思うのですが(笑)。
- 長谷川集平『トリゴラス 』(ぽっぽライブラリ みるみる絵本) 文研出版
- 荒井良二『そのつもり』 講談社
- シャーロット・ゾロトフ&アーノルド・ローベル(矢川澄子訳)『いつかはきっと』 ほるぷ出版
ぼくは初任者の時に国語の授業もめちゃくちゃに荒れました。全道国語大会の授業者として授業した時に、生徒が最初から最後まで机に突っ伏して寝ていました(苦笑)。そういう厳しいところから、ずうっと考え続け、悩み続けて歩いてきたことが、今回の本のベースになっています。今は確かに厳しいけれど、それは教育の世界に限ったことじゃない、ありとあらゆる領域に及んでいるわけです。これまでのやり方ではダメらしい、とみんな気付き始めているわけでしょ? 本気で新しい国語教育を作って行こうという気概を持って、一緒に取り組んでいきたいですね。本書は、きっと、そのための力になれると思っています。