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PISAやTIMSSなどの調査から明らかになったのは、日本の中学生たちは文章で回答する問題に大変弱いということでした。文章で表現するということは、もう一人の自分と向き合う行為です。その意味で、自分の考えを的確に表現する、そして他者に正しく伝えるという、コミュニュケーション能力を高める必要があるのです。この能力は一朝一夕に高めることはできません。日頃の授業展開の中で、書かせる、発表させるという場面を意図的に多く取り入れて行く必要があるのです。その意味で本書で紹介したようなレポートやワークシートを工夫していく必要があります。
授業の中で、きちんと記述させる時間を確保することが重要です。「後で書いて提出」とか「明日、提出」という指示では、ほとんどの生徒がきちんと取り組むことはないと思われます。ですから、授業展開の中で、記述する時間をきちんと確保することが大切なのです。1時間の授業プランの中に組み込むことです。
ワークシートを記入させる時間、まとめの時間で、机間巡視をしながら、授業の振り返りをしていくことも1つの良い方法です。「薬品を入れたとき、どんな変化が起こったかな? それはどんなことを示しているのかな?」とか「金属球の速さは落下させた高さとどんな関係になっていたかな?」といった記述する上でのヒントを話しながら、授業を振り返らせることを意図的に組み込むことです。もちろん余裕があれば、個別指導も有効です。
レポートの課題は、生徒の興味関心を引くようなものを選ぶことが大切です。例えば、「これを我慢すれば、一体いくら儲かるのかな? 電気器具の1月の電気料金を調べよう!」などといった呼びかけでレポートに取り組ませるようにするのです。また、レポートを書く上でのポイント、「目的」「調べた方法」「調べた文献や資料」「分かったこと」「感想」などのレポートを構成する必須項目についてきちんと指導することも必要です。
言語活用能力は、これからの時代に求められている「生きる力」を構成する最も重要なファクターの1つです。この能力は、理科の学習に留まらず、主体的な学びを切り開き、自ら新しい課題を見つけていく生徒を育てる上での必須の能力なのです。先生方の意欲的な取り組みで、子どもたちの目が生き生きと輝く授業を創り上げていただきたいと思っています。