- 著者インタビュー
- 教師力・仕事術
私が考える「教師力」の1つは「観察力」です。制服のボタンを全部外してまるでやる気がないように見えた男の子。指名され発表する瞬間に、その手はボタンへと伸びました。発表内容もさることながら、その一瞬の動きから子どもの内面を推察し、その思いと交信して関係を紡ぐという、地味な作業が重要だと思うのです。それを支えるのが「観察力」だと考えます。
常に自分自身を「内省」することだと考えています。「この言い方で伝わっているかな。子どもと自分との関係を変化させられないかな。」等と振り返ることです。そして、自分とは異なる見方を示してくれる人を探して、自分自身の見方を固定化させず、見方を拡げる努力を続けることが大切だと思うのです。
うまく通じ合いにくい子ども達と、気持ちの交流ができた実感を持てた瞬間があります。でも、苦戦しながら進んでいる子ども達とその家族は、直ぐに何もかもうまくいくわけはない。時間がかかることも多いのです。そのような時の流れにつきあいつつ、側にいて、ほんの少しだけ役に立てたかもと思える時もあります。そういった緩やかな時の流れの魅力を知ってしまったからでしょうか…。
敢えて1人だけと言われたら、やはり、師匠、片倉信夫先生との出会いです。「一緒に暮らしていればいい」「相手とつきあっている手応え、実感があればいい」ということばは、私の実践の方向性を規定した日本語でした。また、その観察の細かさと解釈の鋭さ、実践記述の文章は、私の見方、記述法に多大な影響を与えました。
実践の方向を規定するような、自分にとって重要で、絶対譲れない日本語を探していくとよいのではないでしょうか。そして、その日本語を信じて行った子ども達とのつきあいを丁寧に記述して、それに意味づけし続ける愚直さが重要だと思うのです。「個の物語」を紡いでいくしつこさとおもしろさを「一緒に」話せる仲間が増えれば嬉しいなと思っています。