著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
小、中学校でこそ身に付けさせたい学びの作法
花まる学習会代表高濱 正伸
2013/5/13 掲載
 今回は高濱正伸先生に、新刊『学校でできる! 学力がグングン伸びる学び方指導&ノート法』について伺いました。

高濱 正伸たかはま まさのぶ

花まる学習会代表。
1959年熊本県生。県立熊本高校、東京大学・同大学院卒。
学生時代から予備校等で受験生を指導する中で、学力の伸び悩み・人間関係での挫折とひきこもり傾向などの諸問題が、幼児期・児童期の環境と体験に基づいていると確信。
1993年、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習教室「花まる学習会」を設立。その後、小学4年生〜中学3年生を対象に、「本格的な学習方法」を伝授する学習塾「スクールFC」を設立。子どもたちの「生き抜く力」を育てることを重視している。算数オリンピック問題作成委員等を経て、現在算数オリンピック委員会の理事。
また、埼玉県内の医師やカウンセラーから組織されたボランティア組織の一員として、長年、いじめ・不登校・家庭内暴力などの実践的問題解決の最前線でケースに取り組んできた。現在は、NPO法人子育て応援隊むぎぐみの理事長も務める。2010年の『情熱大陸』をはじめ、多くのテレビ番組に出演、メディアにも数多く取り上げられている。

―本書には、傾聴できる子どもを育てるためには授業のリズムとテンポが大事、と書かれています。リズムとテンポのある授業をつくるために先生が意識すべきことは何でしょうか?

 私が独自に気を付けていることとして、小学校低学年時代までは、大人の感覚からすると早口に聞こえるくらいお話をテンポアップする、ということがあります。これは、4年は移行期間、5年からは落ち着いてじっと机に向かって取り組むように…といった感じで、学年に応じて切り替えていくことが大切です。
 リズムとテンポは、皮膚感覚でもあるので、日ごろから音楽を聴き込むような感性の錬磨もとても大事です。先生のリズムやテンポのセンスがよくないと、子どもものれないからです。

―高濱先生は、子どもが文字を書いたりする「スピード」を重視されていますが、それはなぜでしょうか?

 履歴書、ラブレター、仕事での詫び状など、きちんと書くことが大事な局面もありますし、まずはきちんと書けるということも大切ですが、人生全般を考えると、スピードを身に付けさせておくことも必要です。
 例えば、人生で少なくとも3回程度(中学または高校入試、大学・短大等入試、就職試験)直面する入学試験で、スピードがないために「(時間内で)間に合いませんでした」という生徒を何人も見てきました。先生だけでなく、親も含め、大人がきちんと書くことのみを重視した被害者です。

―本書の大きな柱になっているノート指導ですが、高濱先生が特にノート指導にこだわる理由を教えてください。

 特に、小学校5年生以降の学習指導を考えたときに一番大切なことは、「勉強の仕方」を身に付けさせることだと考えます。なぜなら、思春期以降の勉強は、本来自分でするものだからです。
 そして、発達段階のうえでも、この学年くらいからようやく「意味のあるふり返り」ができるようになるからです。自学の中で定着させていくためのPDCAサイクルの、最も重要なツールがノートだと考えています。本書でも詳しく紹介していますが、できなかったことをできるようにするための「復習ノート」は、その中でも特に大切なものだと考えています。

―本書の中では、「復習ノート」など4つのノート法が教科ごとに詳しく紹介されています。実際に小・中学校でこれらのノート法に取り組むためのコツを教えてください

 実際に現場で指導してみて感じる一番の壁は、「やったふり」です。特別に悪気もなく、思春期の子どもたちは、部活だ睡眠だで学習時間をとりきれない子が多いし、だらしない部分があるのも普通なので、一応の形だけとり繕ったノートをつくったりしがちです。
 だから、単に提出させるだけではなく、やったふりをさせないチェックを定期的に入れるとよいと思います。「復習ノート」で言えば、問題部分だけを残して下の部分を他のノートなどで隠して「では、この問題のポイントを説明して」というように、口頭で聞くのです。形だけつくっていた子はここですぐバレますし、少なくともそのチェックが入ることで、ちゃんと意味あるものをつくらねばという方向に子どもを導くことになります。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 義務教育の質を高めることが、この国の将来を決めると思いますし、先生という職業は本当に尊いと思います。ただ、100万を超えるオーダーで引きこもりの大人があふれているということは、今までの教育は変えなければならないということでもあると思います。
 ですから、子どもたちが「メシが食える大人」になるために必要なことを、一人ひとりの先生方が考えてほしいと思います。“これって、本当にこの子の将来のためになってる?”と。その一つが、自ら学ぶ人間に育てる、ということです。授業中いい子を演じるのではなく、頭脳がいきいきと回転して考え抜く喜びを感じているか。そのために「学び方」に注目し、先生方お一人おひとりの学び方指導を構築してほしいと願っています。

(構成:矢口)
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