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私が独自に気を付けていることとして、小学校低学年時代までは、大人の感覚からすると早口に聞こえるくらいお話をテンポアップする、ということがあります。これは、4年は移行期間、5年からは落ち着いてじっと机に向かって取り組むように…といった感じで、学年に応じて切り替えていくことが大切です。
リズムとテンポは、皮膚感覚でもあるので、日ごろから音楽を聴き込むような感性の錬磨もとても大事です。先生のリズムやテンポのセンスがよくないと、子どもものれないからです。
履歴書、ラブレター、仕事での詫び状など、きちんと書くことが大事な局面もありますし、まずはきちんと書けるということも大切ですが、人生全般を考えると、スピードを身に付けさせておくことも必要です。
例えば、人生で少なくとも3回程度(中学または高校入試、大学・短大等入試、就職試験)直面する入学試験で、スピードがないために「(時間内で)間に合いませんでした」という生徒を何人も見てきました。先生だけでなく、親も含め、大人がきちんと書くことのみを重視した被害者です。
特に、小学校5年生以降の学習指導を考えたときに一番大切なことは、「勉強の仕方」を身に付けさせることだと考えます。なぜなら、思春期以降の勉強は、本来自分でするものだからです。
そして、発達段階のうえでも、この学年くらいからようやく「意味のあるふり返り」ができるようになるからです。自学の中で定着させていくためのPDCAサイクルの、最も重要なツールがノートだと考えています。本書でも詳しく紹介していますが、できなかったことをできるようにするための「復習ノート」は、その中でも特に大切なものだと考えています。
実際に現場で指導してみて感じる一番の壁は、「やったふり」です。特別に悪気もなく、思春期の子どもたちは、部活だ睡眠だで学習時間をとりきれない子が多いし、だらしない部分があるのも普通なので、一応の形だけとり繕ったノートをつくったりしがちです。
だから、単に提出させるだけではなく、やったふりをさせないチェックを定期的に入れるとよいと思います。「復習ノート」で言えば、問題部分だけを残して下の部分を他のノートなどで隠して「では、この問題のポイントを説明して」というように、口頭で聞くのです。形だけつくっていた子はここですぐバレますし、少なくともそのチェックが入ることで、ちゃんと意味あるものをつくらねばという方向に子どもを導くことになります。
義務教育の質を高めることが、この国の将来を決めると思いますし、先生という職業は本当に尊いと思います。ただ、100万を超えるオーダーで引きこもりの大人があふれているということは、今までの教育は変えなければならないということでもあると思います。
ですから、子どもたちが「メシが食える大人」になるために必要なことを、一人ひとりの先生方が考えてほしいと思います。“これって、本当にこの子の将来のためになってる?”と。その一つが、自ら学ぶ人間に育てる、ということです。授業中いい子を演じるのではなく、頭脳がいきいきと回転して考え抜く喜びを感じているか。そのために「学び方」に注目し、先生方お一人おひとりの学び方指導を構築してほしいと願っています。