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大きな相違点は、総合学習としてのミュージカルを発表する場だということです。低学年と3年生以上の縦割り集団それぞれで創りあげたミュージカルを保護者や地域の方々に観ていただきます。共通点は、ミュージカル以外の種目では、全校縦割り集団で得点を競うことです。競技内容は、1学期からうれしのスポーツで取り組んできた綱引きや玉入れ、大玉リレーなどです。さらに、学年ごとに全員でバトンをつなぐリレーにも取り組みます。
ミュージカルは、子どもが夢中になって身体ごとで自身を表現する活動です。その表現する姿に、その子の素晴らしさや、普段見せない内面、秘めた可能性をたくさん見つけることができます。だから、子どもたちがキラキラと輝き、ミュージカルを観られた方の心を揺さぶるのだと思います。そのために、子ども一人一人で異なる表現のありようを大切にしながら、創りあげていく表現に子どもも教師も妥協せず、よりよいものを追究していきます。こうした過程にこそ本校のミュージカルの価値があると考えています。
例えば、「炎」を表現しようとします。個でつくるならば、自分にしかできない「炎」の動きを追究します。そのために、目をつぶって自分の世界に没頭させる、今までしたことのない身体の動かし方をさせる、「炎」のイメージを言葉で広げる、といったポイントが大切になります。また、集団でつくる場合でも、個が集団に埋もれないように、集団の動きをまねる中で、個の動きにもこだわらせます。みんなで「炎」を表現していても、私一人も「炎」なんだ、もしくは「炎」を表現する何かなんだ、と意識できることが大切です。
最も大切なポイントは、教員のティーム・ティーチングです。それぞれの教員が自身の役割と責任を自覚して、子どもたちと動きづくりに取り組みます。その組み合わせも固定せず変化をつけることで、新鮮さと適度な緊張感をもって動きづくりができます。
まずは、ミュージカル学習が、長い歴史の中で子どもたちに脈々と受け継がれてきた文化だということです。例えば、6年生はミュージカル学習を6年間かけて身体に染みこませてきました。本校の子どもたちは、それぞれの学年の役割に一生懸命取り組みながらも、常に上学年をみて、未来の自分たちの役割にあこがれと責任感をもつのだと思います。
次に、ミュージカル学習と教科学習が密接につながっていることです。ミュージカル学習で大切にしている、身体ごとで表現する、自分の意思で決める、友だちの動きをまねて理解しようとする、上学年や下学年など多様な関係性の中で自分の考えを伝える、といった身体性は教科学習における学力の土台です。こうした根っこの部分がつながった指導を、学校全体の教育活動で行っていることも大きな秘訣だと思います。
私は、毎年うれしのカーニバルで感動を覚えます。ミュージカルや各種競技に取り組む子どもたちの姿に心を揺さぶられます。元気な子も目立つ子も、運動が得意な子も苦手な子も関係なくキラキラとまぶしく輝いて見えます。それは、一人一人の子が、今この瞬間の「生」のような何かを必死に表現しているからだと思います。うれしのカーニバルの本番に立ち会える喜びや、子どもたちとミュージカルを創りあげる過程を共にした喜びをいつも噛みしめています。
こうした子どもたちの輝く姿と、教員としての喜びが、少しでも伝わるような本になっていれば幸いです。最後になりましたが、本校を支えていただいた先輩方や、卒業した子どもたち、保護者の方々に深い感謝をしたいと思います。