- 著者インタビュー
- 算数・数学
「特別なニーズをもつ」と聞くと、何か大変なことを行わなければならないというイメージをもってしまいます。もちろん、子どもの特性をつかむことは大前提ですが、特性をつかんだうえで、通常学級でも容易にできる指導・支援の方法を考える必要があります。本書で示した「不要な情報を手で隠す」「図にかき込ませる」「解き方の型をつくる」「赤鉛筆で薄く書く」…などの方法は大変効果がありますが、これらは何も特別なことではありません。
通常学級の授業におけるサポートは、特別な個別指導ではなく、あくまで一斉指導の中で行われるべきだと考えています。特別なニーズをもつ子どもがいるからといって、その子にずっとつきっきりだと、学級のその他大勢の子どもたちは何をやったらよいのかわからず、教室が騒乱状態になってしまうからです。上で示した方法は、一斉指導の中で行うことが可能です。場合によっては個別指導が必要なケースもありますが、短く、繰り返して行うことで、授業のリズム、テンポは維持できます。
まず、一人ひとりにどのような特性があり、どのようなことに困っているのか、その実態を正確に把握することを心がけています。そのうえで、どのような指導がよいのか、“授業パーツ”の組み合わせを考えていきます(算数の授業パーツについては、『向山型スキル・算数の授業パーツ100選』に詳述されています)。毎年同じように授業を進めるのではなく、このように、目の前の子どもの実態に合わせ、使う授業パーツを変化させていくことが重要だと考えています。
特別なニーズをもつ子どもがかかえる困難の状況は多様で、その対応も容易ではありませんが、一方でサポートの方法も日々進化しています。その方法を身に付けられるのは学び続ける教師のみですから、私も雑誌『算数教科書教え方教室』を読んだり、各地で開かれているセミナーに参加したり、サークルで模擬授業を行ったりして、日々学んでいます。本書を通して共に学ぶ先生が増えていくことを願っています。