著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ワークシートは難しそうな学習評価を容易にしてくれる“優れもの”
文部科学省初等中等教育局視学官・教科調査官中尾 敏朗
2014/2/27 掲載

中尾 敏朗なかお としろう

1959年生まれ。
文部科学省初等中等教育局視学官・教科調査官(社会)。中学校・高等学校学習指導要領(社会・地理歴史)作成担当者。筑波大学附属中学校・高等学校教諭を経て、現職。共著本に『学力を伸ばす日本史授業デザイン―思考力・判断力・表現力の育て方―』『中学校社会科絶対評価の方法と実際』(明治図書)などがある。

―本書のテーマである「観点別学習状況の評価」については、新しい学習指導要領の下であらためて重視されています、これに関する基本的な考え方と、取組のポイントを教えてください。

 例えば、スポーツチームの戦力が攻撃力、守備力、選手層、協調体制などの様々な面から分析されるように、子どもの学習状況も観点ごとに分けて評価するのが有効です。新たに設定された「思考・判断・表現」など四観点の意味を十分に理解し、それぞれの力を、評価と一体でバランスよく育てていくことが求められます。

―「観点別学習状況の評価」については、例えば「思考・判断・表現に関わる力を見るのはなかなか難しい」という声も聞かれます。こうした観点を評価する際のポイントを教えてください。

 「思考・判断・表現」の力は、数量的な方法では測定しにくいものですよね。大切なのは、子どもがその学習のねらいを実現したときの状態を具体的に想定して言葉で表し(=評価規準)、それを目安に、教師が子ども一人ずつの学習状況を、自信と責任をもって見て取ることです。客観性よりも妥当性、そして信頼性こそが重要なのです。

―本書では、評価活動上の課題の一つになっていた評価材料と評価時間を確保するための有効な手立てとして、評価規準や記述例を添えたワークシートが提案されています。これまでみられた学習指導のためだけのワークシートとは違った、学習評価に生きるワークシートの活用のポイントを教えてください。

 ワークシートを個別知識の記入と暗記のためだけに使うのは、実にもったいないことです。ワークシートは、@「知識・理解」以外の捉えにくそうな観点の学習状況を、Aどの子も機会均等に、B具体的な文言記述を通して、C職員室でじっくりと評価できる“優れもの”なのです。評価の回数を欲張り過ぎず、本当に評価したい大切な箇所に焦点化することが重要でしょう。

―本書では、ワークシートを使った授業のねらい、評価規準や記述例、教師の指導のほか、「この授業を受けてのペーパーテスト作問例」も添えられています。このねらいを教えてください。

 ペーパーテストは子どもの学習状況の全てを表すものではありませんが、やはり有効な評価方法の一つです。本書の「作問例」が、四観点を幅広くみようとしていることに注目してください。多様な力が育つワークシート学習の成果が、あらためて示される場なのです。本書の作問例を“例”として、一層意義あるペーパーテストが開発されることを期待しています。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 何事につけても、次なる成長を迎えるためには、現状に対する適切な評価が不可欠です。子どもたちの学力を本当に伸ばしたいと願うならば、指導と同じだけ評価の充実に力を注ぐことです。一見難しそうな思考や技能の評価も、ワークシートの工夫やその年間計画への適切な位置付けなどによって、無理なく有効に行っていけるはずです。

(構成:及川)

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