発達障害のある子の、見かけ上の「トラブル」として、
A君は、教室を飛び出していました。
B君は、「めんどくさい」と勉強に投げやりになっていました。
C君は、授業中に友だちといつもトラブルを起こしていました。
D君は、ゲームで「一番じゃなきゃイヤだ」と暴れていました。
この見かけ上の「トラブル」の奥には、この子たちが抱えている4つの「できにくさ」があります。
- 指示を理解しながら行動し、課題を最後までやり遂げる。
- 文脈に沿って理解、思考しながら学習を進める。
- 周りの状況に合わせて気持ちや行動を調整していく。
- みんなと学び合い、協力し合い、活動する。
発達障害のある子たちは、自分が抱えている「できにくさ」のために、「やりたいんだけど、できないんだよ」ともどかしさを感じながらも、「つまずき」(トラブルも含む)となってしまうことがあります。
子どもたちだけで「できにくさ」を乗り越えていくことは、難しいです。活動できない原因を「本人の力(できにくさ)」の問題にせず、サポートによってポジティブな活動を積み重ねていくことで、子どもたちは育っていきます。
サポートの柱として、
@指示理解 A課題遂行 B学び・考える力 C気持ちの調整 D自己モニター E行動調整の力 F自我の成長などがあります。本書では、それぞれの柱ごとに、150のサポート術をご紹介いたしました。
一つは、「あらかじめのサポート」です。
子どもの特性(できにくさ)を知り、ポジティブな活動ができるようにあらかじめの準備をしていくことです。
でも、それでもトラブルが起きてしまう時があります。その時は、「リカバリー」していきます。これが二つ目です。活動のための手がかり(残る指示、手順表、ヒントカードなど)などによって、ポジティブな行動ができるようにしていきます。
三つ目は、「自励心」です。サポートによって成功体験を積み重ねていくことで、自分自身を励ます心(自励心)が育っていきます。
「できそう→トラブルがあっても、なんとかなる→ぼくは、こうすれば大丈夫!」と、ポジティブに活動できる力と気持ちが一歩ずつ育っていきます。
「できにくさ」を「一生懸命でいい感じ」にするサポート術を身につけるための“巻物”のように使ってもらえたらいいですね。
@子どもたちの「できにくさ」を理解し、その謎を解く。
Aサポートによって、プラスの行動(活動)を引き出していく。
B自らの力で行動調整できる力を活動と学習の中で学んでいく。
C自分で調整できる自我の成長を促す。
150のサポート術を見直すことで、子どもたちと歩んでいく手がかりを見つけていくお手伝いができれば幸いです。
子どもがわかるとは、サポートの手立てがわかることから始まると思います。
発達障害のある子たちの「できにくさ」は、手ごわいです。それを「育ち」につなげていくのは、とても難しい仕事です。
でも、この子たちと一緒にいる時、最初に子どもたちの「できにくさ」を乗り越えていくのは、私たち大人ではないかと感じています。子どもたちと一緒に「できにくさ」を乗り越えていく過程こそがサポートです。一緒に乗り越えて行こうとする私たち大人の姿が、少しずつ子どもの心の中に映り込んでいく時、子どもたちも、自分の「できにくさ」を乗り越えていく力を身につけてくれるような気がしています。
私たち大人が、発達障害のある子の「できにくさ」を乗り越えるサポート術を身につけることができるかどうかは、大事な分かれ道になっています。
子どもたちが、自分の「できにくさ」を乗り越えることができた時、子どもたちの瞳と未来が輝きます。心の中にリュウが見える時です。その時を信じて、一つ一つ子どもたちの「できにくさ」と向き合っていきましょう。
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最初に子どもたちの「できにくさ」を乗り越えていくのは、私たち大人で、こどもたちと一緒に「できにくさ」を乗り越えていく過程こそがサポートと読んで、自分の中にも小さな勇気が生まれてくるのを感じました。ありがとうございました。
今も特別支援教育の一線で教鞭をとられていること、感服致します。
先生方だけでなく、子育てに悩んでいるお母さん、お父さん達にも読んでほしい一冊ですね。