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「作文教育」とは、どのように作文を書かせるのかということだけではありません。子どもが作文を書くことは心の成長と大きく関係があります。作文の持つさまざまな力を通して、心の教育をしていくと考えると、分かりやすいと思います。
書くことは心を耕すことです。人は書くことを通して自分の言動や思いを振り返り、深く考え直すことができます。そして、書かれた作文を学級通信にして読み合うことで、学級での出来事、友だちとのトラブルを仲間がどう感じているのか、その思いを知ることができます。書いたものだからこそ、思いをきちんと共有することができるのです。思いを共有する学級が居心地の良い場所になっていくのは、当然のことですね。
大切なのは、「時計が動いている」とか、「鉛筆は役に立つ」とかいうようなことではなく、人間を書くことだと思っています。人を観察し、人の思いを想像していくことを大切にしてほしいです。また、そのために、「誰が(どうした)」と“名前”を書いて綴っていくことは、どの学年においても大切なことです。
赤ペンとは、子どもの思いを受け止めることです。子どもの背景を考えて、「この子は何が言いたいのかな」と思って赤ペンを書くことが必要です。ただし、赤ペンのコツというものはあります。この本の中に、いくつかのアイデアを盛り込んでいます。
阪神大震災のとき、学級通信の力を確信しました。子どもの作文を載せて配ると、黙って静かに子どもたちは読んでいました。静かな深い時間が流れました。それこそ、仲間の思いを受け止めようとする姿であったと思うのです。
学級通信は、子ども同士、子どもたちと家庭、教師と子どもと家庭をつなぐ最大のてだてだと信じています。
ただ書けと言っても、なかなか自分の思いを書けるものではありません。ところが、ちょっとした工夫で心の中から言葉が出てくるようなことがあるのです。この本から、そういうエキスをぜひ受け取ってほしいと思います。