- 著者インタビュー
- 学級経営
学級崩壊が報道された2000年前後から、学級づくりに悩む教師のニーズに応えて学級づくりの方法論に関する情報が世に出されるようになりました。先生方の選択肢が増えたのは結構なことですが、ネタや技術論や名人芸であることが多く、長期的な取り組みに不向きだったり、模倣が難しいものだったりすることがありました。
集団づくりは、時間がかかります。それを成功させるためには、技術論ととともに、それを支える考え方が必要なのです。集団づくりの成功は、学級をチーム化することです。つまり、課題解決集団に育てることです。子どもたちは、学習や生活の課題の解決を通して、社会で生きる力を学びます。本シリーズは、学級づくりという営みを単に「学級をまとめる」というレベルに留めるのではなく、子どもたちが幸せに生きていくための力を育てていくための過程だと考えています。
学級は、子どもたちが学習をしたり仲間をつくったりするチャレンジの場です。そのチャレンジのエネルギーとなるのが、学校生活への意欲です。その意欲はどこからわき上がるのかというと、安心感です。学級開きで最も大切にしなくてはならないことは、子どもたちに教室が安心できる場であることを実感させることです。
安心感とルールというと、優しさと厳しさのように二律背反のものとして捉えられるかもしれませんが、そららは表裏一体のものです。スポーツを考えてみて下さい。ルールという枠がきちんと設定されているからこそ、選手は共通の基準の下に安心して、競技をすることができるのです。ルールをしっかり設定することで、安心感が創出されます。しかし、ルールの設定と定着までには、技術が必要です。詳しくは本書をお読み下さい。
教師がずっと表舞台に出ていては、子どもたちは自分で考えて行動するようにはなりません。教師は、時期を見て意図的にリーダーシップを変換していくことが求められます。しかし、いきなり子どもたちに「考えてごらん」と言っても、何をどのように考えればいいのか、そしてそもそもどうして自分たちで考えなくてはならないのかもわからない場合があります。まずは、子どもたちに、自分で考えることが大事だということの意味を知らせることが大事です。
一年間に何度かは、「学級の危機」とも呼べるような不安定な時期はどの学級にもあります。その危機をうまく乗り越える学級は飛躍し、それに失敗する学級の何割かが崩壊します。危機を乗り越える学級は、やはり、一学期に大事なことを伝えられているのです。学級集団がうまく機能するために必要なことを学んでいるのです。危機に瀕した折に、担任はそれをあの手この手で想起させているのです。やはり、集団づくりは一学期の在り方が大事であり、そして、そのスタートが学級開きなのです。
本書は、学級開きに特化した画期的な書籍です。学級集団をまとめることだけに満足せず、子どもたちが幸せに社会で生きる力を本気で身に付けさせたいと願い、試行錯誤をしてきた集団づくりのスペシャリストたちと書きました。学級開きのシナリオという極めて技術的な部分から、一年間の指針となるような考え方まで示してあります。
学級開きに成功すれば、学級がうまくいく、などということはありません。しかし、学級開きをどう展開するかという担任の考え方に、学級づくり成功のためのエッセンスが凝縮されていると言えます。みなさんの学級のスタートダッシュを強力にサポートするはずです。