著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
お題日記で生徒と会話を!学級通信で保護者を応援団に!
広島市立広島中等教育学校教諭水登伸子
2017/2/3 掲載

水登 伸子みずと のぶこ

昭和35年広島県呉市生まれ。
広島大学教育学部教科教育学科卒業。
広島市立広島中等教育学校教諭。
【著書】
『中学校「特別の教科 道徳」の授業づくり 集中講義』

―本書のタイトルは『学級づくりがうまくいく! 中学校「お題日記&学級通信」』です。「お題日記」とは、あまり聞きなれない単語ですが、どのようなものか、まずは教えていただけますでしょうか。

 一般に中学校で行われている「生活記録」の代わりに、毎日終学活でテーマ(お題)を提示して、それについての経験談や考えをB6サイズの紙に書かせるものです。専用ファイルに綴じて提出されたものに、ひとこと返事を書いて次の日の終学活に返します。「生活記録」と違って家に持って帰らないので全員の書いたものが見られるのが一番の特長です。テーマは「お弁当」「コンビニ」「我が家の暑さ対策」など、誰でも書けるようなものにします。

―中学生ともなると、自分の気持ちを先生には教えたくない!という子もいるように感じます。ですが、本書の中で紹介されている中学生の日記は、どれも本音を語っているように思えます。「お題日記」の手軽さや、返信の面白さなどが関係しているのかと思いますが、お題づくりのコツや返信のポイントはあるのでしょうか?

 「生徒の気持ちを知ろう!」などと考えてテーマを設定すると失敗します。何気ない生活に対する文章から、自然とその生徒のものの見方や考え方が分かったらおもしろい…というくらいに。お題づくりも連想ゲーム方式で。ときどきは先を見越したテーマで、何週間か後に道徳の導入に使ったりもします。また、力が入りすぎた返事は、書く側のプレッシャーになるので、会話のつもりで。

―本書のもう一つの大きなテーマは学級通信です。先生は、1年間、毎週必ず学級通信を発行しているそうですが、出し続けるコツはなんでしょうか?

 出し続けるコツは、ダイエットと同じで「公言すること」です。学級開きでも、最初の保護者会でも。「急に重病で倒れる以外、絶対に毎週出します! だから保護者のみなさん、子どもたちが『今週はもらってない』と言っても信じてはいけません。カバンの底に入っています!」と言います。学生時代、通信教育で挫折して「『継続は力なり』ですよ」とお説教された苦い経験をもとに、そうやって自分を縛ることにしました。でないと忙しくて1枚も出せません。

―本書を読んでいて、先生の学級づくりの土台には「お題日記と学級通信」があるように感じました。「お題日記と学級通信」は学級づくりにどうかかわっているとお考えですか?

 本当は「お題日記」も「学級通信」もなしで、すべての生徒と直接話し、生徒たちの心に残る講話をし、保護者の心がつかめれば一番いいのです。でも、実際そんな時間も技量もない自分としては、なんとか一人一人と毎日「会話」する手だてとしての「お題日記」が必要。そして、それを利用した学級通信で、保護者には、うちのクラスの応援団になってもらっていると思います。

―最後に、「お題日記と学級通信」に新年度から取り組んでみよう!という読者の先生方にメッセージをお願いします。

 これは、書くこと、読むこと、笑うことが好きな私の特性からたどり着いたひとつの「手段」なので、これを踏み台にして、自分に合ったスタイルを見つけてください。最初から「こんなの無理」「無意味」と思わずに、だまされたと思って1回やってみて改良することが大切。学級づくりに役立たなくても、生徒の書いてくる内容のかわいさ、面白さで、ガチガチに固まった自分の心が柔らかくなること間違いなしです。

(構成:茅野)
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