著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
発達障害のある子の感覚バランスを整える!
焼津市立大井川南小学校夏目 徹也
2017/2/3 掲載
今回は夏目徹也先生に、新刊『[小学校]通級指導教室 発達障害のある子を伸ばす!指導アイデア』について伺いました。

夏目 徹也なつめ てつや

静岡県焼津市立大井川南小学校発達障害通級指導教室担当
特別支援教育士,学校心理士,自閉症スペクトラム支援士
上級教育カウンセラー,ガイダンスカウンセラー,保育士
公立小学校通常の学級で教育生活をスタートし,特別支援学校(肢体・知的),特別支援学級(自閉症・知的)と多様な学校・学級で勤務し,現在に至る。

―本書は、小学校・通級指導教室での指導アイデアをまとめられたものとのことですが、先生が感覚のバランスに着目して指導されているのはなぜですか?

「発達障害の子どもには視覚支援をするとよい」と言われることがありますが、見る力が弱い子どもには視覚支援が適切とはいえません。また、視覚優位と言われた子どもも、集中して見ることができなければ、適切な支援になりません。
子どもには多くの感覚があります。これらの感覚を全体的に向上させうまく働くと、子どもたちが気持ちよく生活できるということがわかったからなのです。
 

―本書でもいろいろなアイデアを紹介くださっていますが、その中からどうぞ1つ教えてください。

 トランポリン(ユニジャンプ)は、上達することで身につく感覚が変わってきます。始めは自分のリズムで跳びますが、気持ちが安定し、体幹がしっかりしていないと落ちてしまいます。何度か跳んでいるうちに気持ちが安定し、体幹がしっかりとします。その後、足をグーチョキパーと動かしても、ぶれないようにバランスをとります。さらにBGMを流し、リズムよく跳べるようになった頃には気持ちが安定し、落ち着いて話を聞くことができるようになります。私はこの段階を「五重塔理論」として本書で紹介していますのでどうぞご覧ください。
 

―夏目先生は、このたび「博報賞」を受賞されたとのこと。これはどのような賞なのですか? 先生のご実践のどんな点が認められてのことなのですか?

 博報賞とは、児童・生徒に対する日常の教育現場ですぐれた教育実践を行った学校・団体・個人を顕彰することを通して、教育現場を活性化させ、支援することを目的に行われている賞です。「特別支援教育部門」は、インクルーシブ教育の理念に則った教育的支援活動が対象です。
 私の実践は、「通常学級、特別支援学校・学級、通級指導教室で発達障害のある子どもへの支援・指導」「支援員、相談員、小中教員、
幼稚園・保育園職員などを対象にした『特別支援教育学習会』を10年間企画、運営」「静岡福祉大学の教授とともに『発達支援教室』で、支援者支援、ペアレントトレーニング、教育相談」「各地の研修会や学習会の講師を170回ほど行う」ことが認められたと思います。

 

―長年のご経験から通級指導教室を担当する極意についても本書1章では触れられているとのこと。その1つをどうぞ教えてください。

 「プロフェッショナルであれ」でしょうか。誰もがすぐに指導の力があるわけではありません。私だって、試行錯誤で身に付けてきました。目の前の子どもの様子をしっかりと観察し、子どもの弱い感覚を見極め、その感覚を向上させる手立てを考え続けることです。プロフェッショナルは、常に向上心と、学び続ける気持ちをもち続けることだと思います。今では多くの情報がすぐに手に入る時代になりました。その多くの情報から子どもに適切なものを選び、子どもの支援につなげていってほしいです。よりよい支援方法は、子どもが教えてくれます。子どもが楽しく、力が伸びる方法がよい方法です。勉強すればするほど、さらによりよい方法が見つかるものです。学び続け、悩み続け、子どもとともに成長する支援者になってほしいです。

―ありがとうございました。最後に、発達障害のある子の指導にかかわられる先生に向けて何かメッセージがありましたらどうぞお願いします。

 「発達障害」のある子どもは、個性的でかわいいです。(時々困り感が大きくなって、爆発してしまうこともありますが)発達障害があるから支援をするというより、子どもの「困り感」を少なくするにはどうしたらよいか考えてあげればいいのです。困っていた子どもが笑顔になることが、先生方の幸せではないでしょうか。

(構成:佐藤)
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